素材から作りまでメイドインジャパン。

革市通信KAWAICHI COLUMN

暮らしに寄り添う日本の革2021年08月20日

すべては、女性のために。
手に持った時、気分が上がるものを作り続けたい

n.number/デザイナー 三上直美さん

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n.number/デザイナー 三上直美さん

身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?

「本質はシンプルで美しい」をブランドポリシーに掲げ、独特のきらめきを放つ財布や名刺入れなどの革小物を展開している「n. number(エヌナンバー)」。デザイナーの三上直美さんに、日本の革の魅力やアイテムに込めた想いを伺うため、東京都内のアトリエを訪ねた。

女性たちを魅了してやまない、革のきらめき

三上さんがエヌナンバーを立ち上げたのは、2016年のこと。それ以前は、レザーのアイテムを展開する企業で、バッグや小物の企画・デザインを手掛けていた。長年、革を扱ってきた三上さんにとって、革の魅力とはどんなものなのだろうか。

「手に持った時に、温かみや柔らかさがありながらもきらめきを出せる素材って、そんなにたくさんないですよね。革はそのすべてを兼ね備えている素材だと思うんです。しかも、長持ちもする。タンニンなめしを施した革なども好きですが、エヌナンバーでは、あえて"革らしくない革"の表現を追求しています。現在、使っている革は加工したものが中心ですね。女性が手に持った瞬間に気分が上がるような、女性に楽しんでいただけるものを作りたいと思っています」
n.number/デザイナー 三上直美さん

エヌナンバーの素材には、想いを込めた名前が付けられている。中でも近年、高い人気を博しているのが、「そのままの自分を大事にして欲しい」というメッセージが込められた「In Her(彼女の中に)」シリーズ。スパンコールのようなきらめきがありながらも、革の温かみが感じられる不思議なこの素材は、シャンパンゴールド、シルバー、ブラックの3色展開。スマホポシェットや財布などのアイテムがそろう。

「牛革全体に箔を貼り込み、その上から型押しを施しています。一枚革の全体にきれいに箔を貼り込む技術に長けているタンナーさんに作っていただいているのですが、箔貼りをしたあとに繊細な型押しすることで、光の当たる角度によって多様で奥深いきらめきを放つ、とても美しい表情が生まれました。革の丈夫さがありながら、布のような軽い印象を備えていることが特徴的です。摩擦にも強いので、スマホポシェットを肩に掛けた時、体に触れる裏側のパーツの色や質感も、ほとんど変化しません。革の経年変化が好きな方からすると、少し物足りないかもしれませんが、私が2年ほど使っているこのシリーズの財布をお見せすると、『え? 2年も使ってるのに、こんなにきれいなの!?』と驚いて、喜ばれるお客様は多いです。その意味では、変化しづらいことは利点ですね」
n.number/デザイナー 三上直美さん

このポシェットには、オープンポケット付きのカードケースが付いていて、ICカードだけでなく、領収書やお札をたたんで入れることもできる。ポシェット本体の左側はファスナー開閉式で、スマホとカードケースをセットで入れても、出し入れがスムーズだ。「これさえあれば、手ぶらでも出かけられるので便利ですよ」と三上さん。

革を美しく魅せる、シンプル&エレガントなデザイン

革製品と聞くと、男性的なハードなアイテムをイメージする方も多いだろう。エヌナンバーの革小物たちは、そうした革に対する価値観を静かにくつがえすように、手に持つ人に優しく寄り添いながら、キラリと光る個性的な強さを放つ。三上さんはデザインする時、「どうすれば革がきれいに見えるか」を何よりも大切にしている。

n.number/デザイナー 三上直美さん
「シンプルで、なおかつエレガントなデザインになるように心がけています。直線的なカットでフラットな面を構築することによって、革自体がきれいに見えるので、立体的なポケットをつけたり、膨らみをもたせることはしません。なるべく薄く、軽くをテーマに今までデザインを起こしてきました。アイテムによって、手を携えるタンナーさんはさまざまですが、企業に勤めていた頃から、長年お付き合いしているタンナーさんとは、分かり合える部分が多いですね。こちらの意図をきちんと汲み取って、イメージを形にしようといつも全力で頑張ってくださっています。ただ、タンナーさんによって、それぞれのオリジナル性や得意分野があるので、あまりにもそこから外れた注文をお願いすると、逆にお互いにとって負担になってしまいます。そういったことも見極めながら、お付き合いを続けることが大事だと思っています」
n.number/デザイナー 三上直美さん

百貨店などで開催するポップアップストアでは、三上さん自らが店頭に立ち、接客することも多い。その際、お客様に一番に伝えるのは、作り手としてのこだわりではなく、あくまでも製品を持つ人に向けたメッセージだという。

「もちろん、素材作りについても語りたいのですが、その人がエヌナンバーの製品を手にした時に、どんな気持ちになるかということがやっぱり一番大事なこと。革に関する知識やノウハウは、気に入っていただいた時にお伝えしてこそ、はじめて腑に落ちることだと思います。言い換えれば、お客様からすると、いいなと思ったものが、結果、革だったということですね。鏡の前で、ご自身のバッグの中に、財布などの製品を何度も入れては取り出して、素材のきらめき具合や実際に使っているイメージを確かめる方がいらっしゃいます。こういうのは、作り手として、やっぱりすごく嬉しいことですね」

追求するのは、女性の感性に響くデザイン

2020年、コロナ禍の中、三上さんは、クリエイター仲間と毎週のようにZoomミーティングを重ねていた。ある時そこで、リアル店舗に代わる新たな宣伝の場として、SNSを活用してみようという案が上がったという。

n.number/デザイナー 三上直美さん
「当初は、自分にはできそうにないなと思っていたのですが、仲間たちが頑張って発信しているのを見て、少しずつ発信するようになりました。ポップアップストアのお知らせなどを載せてみたら、じわじわと効果が出てきたんですね。『こんな製品を探していました』『この製品はどこで見られるんですか?』とフォロワーの方からダイレクトメッセージが届いたり、百貨店の方から『インスタグラムを見ました』とアプローチが来るようになって。本当にありがたかったですし、心強かったです」

2021年10月には、牛革に箔押しを施したIn Herシリーズの素材から、手帳型のスマホケースが誕生する予定だ。このアイテムには、とりわけ三上さんの特別な想いが込められている。

n.number/デザイナー 三上直美さん
「今なお続くコロナの影響で、会いたい人にも簡単に会えない中、唯一、スマホが人とつながれるツールになっていますよね。誰かの声を聞きたい人もいれば、メールでやりとりしたい人もいてさまざまですが、スマホは、一番手放せない大事なものになってしまった。気分が落ち込みがちなこの時期に、それをカバーするものを気分の上がる素材で作れたらいいなと思いました。その人がより美しく見えるということをテーマにしていきたいので、スマホを耳に当てて電話する時に見える手帳の内側のパーツも、なるべくきらめかせたいと思っています。素材のきらめきがレフ板効果を発揮して、顔映りが良くなるようにと願いを込めて。あとこれは、少し先の話になりますが、貼り合わせではなく、一枚革で両面使いができる素材を作って、ミニバッグも展開していきたいですね。これからも、女性の感性に響くデザインを追い求めていきたいと思います」
n.number/デザイナー 三上直美さん

n.number

●URL/https://www.nnumber01.com/

取材・文/岸由利子 
写真/林和也

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