【日本革市】NIHON KAWAICHI

きめ細やかな感性と、確かな「なめし」の技術。

一般社団法人 日本タンナーズ協会 Tanner's Council of Japan
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前實 × 野村製作所

京友禅とコラボレーションした斬新な素材

皮革産業発祥の地とされる姫路市高木地区。この地域に工場を構える前實は、1976年の創業以来、常にオンリーワンの革を追求してきた。

設備の整った工場では、原皮の処理から仕上げまでの一貫生産が可能。革のクオリティをコントロールしやすい環境下にある。取引先の要望を深く理解するため充分にコミュニケーションを重ね、実直な姿勢で革づくりに取り組んでいる。

「どんなオーダーにも応える、痒いところに手が届く革づくりが信条です」

そう語るのは、代表の前田大伸さん。その言葉どおり、これまでに独創的なアイデアを活かしたオリジナルの革を多く生産してきた。

代表例は、『第6回 国際生地・素材EXPO』にも出展する「姫革友禅」。伝統工芸である京友禅とコラボレーションした、前實の看板アイテムだ。当初こそ彩色を安定させるのに苦労したが、試行錯誤の末にレシピも定まり、ナチュラルであざやかな色合いの姫革友禅が誕生した。

「先代の頃に開発が始まり、ようやく完成したのは1990年代後半でした。京友禅に関わる職人のみなさんには、これまでにない素材として大変喜んでいただいています。また、パリのファッション素材見本市『プルミエール・ヴィジョン』において高く評価していただきました」

今回は通常の姫革友禅に加え、箔押しタイプと墨流しタイプも製造。箔押しタイプは金箔と銀箔を使った2種類を用意。どちらも煌びやかで見る者に深い印象を残す。墨流しタイプは、水面に染料を溶かして模様をつくる墨流しの技法を転用。単色と多色があり、すべて一点ものだ。

姫革友禅以外には、環境負荷の少ないジルコニウムのなめし剤を使用した「Newエコレザー」も出品。また、今回は出展していないが、抗菌・抗カビ・消臭などの高付加価値な機能を持った製品も多く取り揃えている。

サスティナビリティーを強く意識し、会社全体でSDGsに配慮して革づくりに力を注いでいるタンナーなのである。

ものづくりで凛とした繊細な雰囲気を表現

「姫革友禅の豊かな表情に強く興味を惹かれました。うちの技術と合わせたら面白いものができるだろうな、という直観がありました」

落ち着いた口調で話すのは、野村製作所の細野悠介さん。野村製作所は、財布をメインに婦人向けの小物を手掛ける老舗OEMメーカー。近年は世代交代が進み、ベテランから技術を学んだ若手が中心となり、より柔軟な発想でものづくりを行っている。

「ベテランの築き上げてきた技はそのまま受け継ぎつつ、新しいことをどんどん取り入れていこうという雰囲気が社内にあります。いま、とてもいい感じだと思います」

そんな中で姫革友禅を使って製品開発に着手することになったが、革の製造工程に手間暇のかかっていることを事前に聞いていたため、「作業の際に気を遣うというか、緊張感はありました」と、細野さん。

「実際に製作を始めると、アイロンでシワを伸ばしても色落ちせず、友禅染が革にしっかり定着していることがわかりました。なので、色への信頼感は絶大です。この革と向き合っていると、背筋が伸びますね」

財布をつくるにあたり目指したのは、凛とした雰囲気の表現。「お財布はミリ単位で雰囲気がガラッと変わるものです。姫革友禅を使うにあたっては、一本のステッチが表情を左右するという意識を持ち、キリッと引き締まった表情が伝わるよう努力しました」。

完成したプロダクトは、姫革友禅の魅力を伝えるにふさわしい繊細な出来栄え。細部にまで神経が行き届いている。

「日本のものづくりは、どうしても手を加えたくなる職人さんたちの性分に支えられていると思います。もっと良いものにしたいという気持ちがあり、細かいところまで手をかけないと気が済まない。そのような個々人の気持ちのあり方に魅力を感じます」

むろん、野村製作所でものづくりをするのも「ついつい手をかけてしまいたくなる」メンバーばかり。製品にも、粋な心意気がたしかに反映されている。

第6回 国際 生地・素材EXPO 秋 レポート

革はもちろん自社工房のPRにも成功

構成展『第6回 国際 生地・素材EXPO 秋』において、野村製作所との共作を行った前實。1976年の創業以来、一貫生産のできる工場において唯一無二の革を追求してきたタンナーである。今回の展示会では、看板商材である京友禅とのコラボ革「姫革友禅」をはじめ、抗菌レザーなども出展した。

「今までは素材だけの展示会がメインだったので、見てくれた方は製品に至るまでの過程をイメージしやすかったみたいですね。素材と製品を一緒に展示したことは、意味があったと思います」

前實の代表である前田大伸さんは、そういって顔をほころばせる。もっとも反響があったのは、野村製作所とコラボレーションした姫革友禅だったが、ほかに抗菌レザーへの反応も上々だった。今回はコロナ禍での開催になってしまったが、「多少のリスクがあっても貪欲に新商材を探したいという意欲を感じる方がほとんどでした」と感触を語った。

また、前實は工房を持ち自社ブランドを運営しているため、革からプロダクトまでのパッケージで仕事を依頼したいという話もあったそう。

「ベルトやドリンクホルダーをつくりたいという話をいただき、ありがたい限りでした。ほかにも、同じ展示会に参加したカドヤ商店さんの紹介で、カドヤさんの革を使ってうちで鞄をつくりたいといお話もありました。こういう広がり方は今回の展示会ならではだし、目からウロコでしたね」

広がりという意味においては、野村製作所の大泉和也さんも似たような感想を抱いたそう。

「やはり、同時の展示は良かったですね。プロダクトを気に入ってくださった方に『この製品には前實さんの革を使っています』と話すと、たくさんの方が食い入るように革を見てくださっていました。逆も然りで、革から製品という流れで見る方も多く、名刺交換や商談にもつながりました。いい連携ができていたと思います」と、笑顔を見せた。

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