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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

株式会社 前實 × 株式会社 きくひろ

優しく包み込むようなやわらかさを実現

1976年の創業以来、オンリーワンの革づくりを続けてきた株式会社 前實。代表取締役の前田大伸さんは豊かな発想力の持ち主で、数々のオリジナルレザーを世に送り出してきた。

代表作となるのが、伝統工芸の京友禅とコラボレーションした「姫革友禅」だ。先代の頃に開発が始まり、長い時間をかけてようやく完成にこぎつけた。当初は彩色を安定させるのに苦労したが、試行錯誤の末にレシピも定まり、ナチュラルで鮮やかな色味の革が誕生した。

このように、異業種の人々と交流を深め、意見を交わし、良いと思ったアイデアを取り入れる柔軟さを備えているのが強みである。

エコ意識の高さも特徴のひとつ。日本エコレザー基準(JES=Japan Eco Leather Standard)に則った、環境に優しく安心・安全な革づくりに注力している。また、環境負荷の少ない薬品の開発・導入や設備投資などにも積極的に取り組んでいる。

「兵庫県立工業技術センターさんおよび皮革工業技術支援センターさんと連携し、大量の塩を用いるピックル工程を省くことができる新たななめし剤を試作しました。また、皮革工業技術支援センターさんとは、硫化物を使わずに原皮を脱毛する薬剤の開発も行っています」

そんな同社が『ジャパンファッションEXPO』に満を持して出展するのが、牛革をベースにした「シュリンク」だ。
「しなやかなタッチ感とやわらかさを重視し、万人受けする革らしさを追求しました。試作段階において、革でものづくりをしている息子から『もっとやわらかく、包み込まれるような手触りにしてほしい』という助言を受け、その意見を取り入れて完成させました。プラスして、カケンセンターで実証された抗菌、抗カビ、防臭効果を併せ持っています」

このほか、先述した姫革友禅や藍革など、唯一無二の革をラインナップした。

シュリンクレザーを活かしたキューブ型バッグに

「シュリンクレザーを探している中で、理想としている質感にもっともフィットしました。定番のバッグをつくるにあたり、丸みのあるフォルムとドレープを表現するためには、前實さんのシュリンクがベストと判断しました。抗菌機能が付加されているのも魅力でした」

そう語るのは、株式会社 きくひろ代表取締役の菊池弘太さん。オリジナルブランド「Petrarca(ペトラルカ)」の中でもとくに人気のある「MONAハンド」に用いるべく、革らしい張りがありつつもやわらかい前實のシュリンクを選んだ。
「MONAハンドは、コロンとしたキューブ型のフォルムが特徴です。丸く包むような形状に、前實さんの革がぴたりとはまりましたね」

こうして完成したMONAハンドは、ふわりとしたシルエットを維持しつつ、抜群の使い勝手に仕上がった。ちょっとした外出をする際、長財布やポーチを入れて持ち運ぶのに適したサイズ感も絶妙だ。
さらに、丸みのある形状で体なじみが良い点にも注目したい。菊池さんは、「デザインを手掛けるパタンナーがアパレル出身で、洋服のタックを取る手法で縫製していることがその理由です」と、話してくれた。

手を抜かないものづくりを信条とし、目に見えぬ細部にまでこだわる同社。『ジャパンファッションEXPO』で、その心意気を感じてほしい。

第13回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

革と製品のセット展示で強くアピール

オンリーワンの革づくりをモットーに、京友禅とコラボレーションした「姫革友禅」などのオリジナルレザーを世に送り出してきた株式会社 前實。1年ぶり2度目の参加となる今回は、株式会社 きくひろとのコンビでブースに立った。

革と製品の同時展示について、前實の前田大伸さんはあらためてメリットを感じたそう。「バッグを見て『この革は買えますか?』という話がありましたし、革を見て『あのバッグのようなデザインができますか?』と聞かれたらメーカーさんにつないで。そのような相乗効果がありました」と、感想を語った。
革のニーズに関しては「ユニークな革はアイキャッチとしては良いのですが、いざ使うとなれば飽きの来ない革、オーソドックスな革が求められているように思います。そういう意味で、きくひろさんに採用していただいた革は好評でした」と、コメント。自社の技術に自信を深めたようだった。

今後につながりそうな出会いもあり、「アフターフォローに力を入れていきたい」と、前田さんは語った。

前實とコラボしたきくひろの菊池弘太さんは、参加した3日間について「展示会自体に出ることが久しぶりなのですが、コロナが徐々に収束しつつあるのを実感するような人出でした。新しくビジネスを始めたい方、商談のチャンスを見つけに来られている方が多かったです」と、印象をコメント。

今回は、企業の新規事業部でOEM先を探している人からペット用品をつくりたいという人まで、バラエティ豊かな人と出会った。

菊池さんは「ご縁が続くよう努力したいです。まだ結果はわかりませんが、すごくいい感触を得ているのは確かなので、機会があれば今後も展示会に参加したいと思います」と、前向きに語ってくれた。
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