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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

エルヴェ化成 × パーリィー

透明感と発色に自信ありのヌメ調仕上げ革

兵庫・たつの市にあるエルヴェ化成の創業は1950年。現在は婦人向けの袋物、小物類をメインとする皮革素材を生産している。3代目の石本さんは、これまでの伝統を活かしつつ、時代のニーズにマッチした革の製造を追求してきた。

「当社の強みは、通年で品質をキープできることです。大きなポイントとなるのは、なめしや染色の際の薬品の調合と温度管理。職人たちの経験値とセンス、判断の鋭さが品質を大きく左右します。また、状態の良い国産の原皮を安定的に調達できるので、原料不足に陥ることはありません。急な発注にも対応できる体制が整っています」
石本さんは、自分の代になってから多種多様な革の生産に力を注いできた。カラーバリエーションはもちろん、オーダーに応じて革の厚みや固さをコントロール。
お客様の要望に沿ってレシピを変えるフレキシブルさがある。加えて、小ロットの数枚単位から注文を受け付けているのも特徴だ。「柔軟性がなければ生き残れなかったかもしれません」と語る石本さんの言葉には、実感がこもっている。
そんなエルヴェ化成が自信を持って送り出すのが、独自の技法で完成させた透明感のあるヌメ調仕上げの「Mシュリンク」だ。

「この革の下地は、クロムなめしをした後に独自のレシピで脱クロム加工を行い、さらにタンニンによる染色・加脂によってヌメ調にします。この下地を加工して自然なシボ感を出し、オイルの塗布とアニリン仕上げによって革らしい透明感を引き出しました」
このほか、質感はソフトながらも堅牢性の高いロングセラー「ソフ」や、スコッチガード規格の防水・撥水加工を施した「シュリンクスコッチガード」など、多彩な革を用意。
きっと「ジャパンファッションEXPO」に訪れる人の琴線に触れるはずだ。

惚れ込んだ革に新たな命を吹き込む

革素材の魅力を最大限に引き出すものづくりがコンセプトのパーリィー。プロダクトをつくるにあたっては、4つの信条を掲げている。

一つめは、ユーザーに安心し満足してもらうこと。二つめは、環境負荷の少ない製品をつくること。三つめは、すべての生産を国内で行うこと。そして四つめは、社員とその家族の幸福を実現することである。

近年、特に意識しているのが持続可能性だ。

会長の白潟篤さんは「創業時から食用の副産物である革のみを使用して製品をつくっています。
信頼できるタンナーさんから革を仕入れることで、お客様に対する安心感を担保したいと考えています」と、語ってくれた。

そんなパーリィーが今回の展示会用に選んだ革の一つが、エルヴェ化成の「Mシュリンク」だ。

「エルヴェ化成さんの研究熱心さが革そのものに表れていますね。発色が非常に美しく、当社で生産しているアイテムに落とし込みやすいことが選んだ理由です」

制作したアイテムは、スマートキーが2本入る大容量のスマートキーケースと、丸みを帯びたフォルムがかわいらしいぷっくりペンケースの2種類。カラーバリエーションが豊富で、どれも色つやが抜群。もちろん色の良さだけではなく、一つひとつの製品からは技術が冴えわたる丁寧な仕事ぶりを感じ取ることができる。

アイテムそのものは2種類ともパーリィーのロングセラーであるが、これまで使ったことのない革を用いることで新たな命が吹き込まれたように見える。手に取る人の反応が楽しみである。

第12回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

素材を見てから製品に誘導できるのがメリット

初参加となるエルヴェ化成は、ソフトな質感ながら堅牢性の高いロングセラーの「ソフ」や、スコッチガード規格の防水・撥水加工を施した「シュリンクスコッチガード」といった革を主軸に据えた。

手がけた革は、コラボレーションしたパーリィーの職人たちの手によってその魅力がさらに増していた。同社の石本晋也さんは「素材を見て、触って、それから製品に誘導できるので、来られた方にとっては見やすくわかりやすい展示方法だったと思います」と、メリットに触れた。
革の透明感と発色の良さに自信がある同社だが、実際に訪れた人が評価するポイントも大抵はそこに落ち着いた。展示会ならではの出会いもあったらしく、「あるブランドさんから、バッグを修繕するための材料として、さまざまな色の革を製造できますかという問い合わせがありました」と、話してくれた。

サステナブル関連の質問はそれほど多くなかったそうだが、「会場全体の雰囲気に合わせ、わかりやすいキャッチコピーで大きく見やすく伝え、循環型の産業であることをもっとアピールしても良いと感じました」と、考えを語ってくれた。

パーリィーの白潟夏樹さんも似たような感想を抱いたようで、「皮革ゾーン全体で、国産、循環型、副産物などの言葉を盛り込んだキャッチコピーでアピールしたいです」と、コメント。

また、「家具メーカーやアパレルメーカーで端革が出るので、それで何かつくれないかという問い合わせを受けました。各社ともサステナブルな活動をより強化したいということだと思います」と、トレンドを肌で実感したことを明かしてくれた。

継続するにあたり、石本さんも白潟さんも展示方法のさらなる進化を願っているようだ。
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