素材から作りまでメイドインジャパン。
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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

キモト・レザーワークス × 清川商店

ユーザーに喜びを与える革が信条

婦人靴用の革に特化したタンナーとして名を馳せる兵庫・たつの市のキモト・レザーワークス。
取材に応じてくれた専務の木本文明さんは、こと革の話となるとじつに饒舌。淀みなく言葉を紡ぐ。
「私たちのゴールは、目を閉じて触れたときに革らしい質感の素材をつくること。それゆえ、風合いや質感にこだわります。
三次元に構成されたときに、革が有機物であり、動物由来であることを伝えたいですね。どうすればエンドユーザーに喜んでいただけるのか、どのような革であれば女性がはなやぐような気持ちになれるのかを常に考えています」
キモト・レザーワークスでは、革を製造するうえで実践しているポイントがある。
一つは従業員のモラル維持。「モラルの高さは品質の良さに比例します。常に整理整頓と清掃を徹底し、みんなが気持ちよく働ける職場環境をキープしています」。
もう一つは、工場レイアウトの最適化。「全従業員が常に手近で革をコントロールできるよう、効率的な作業動線を意識したレイアウトを採用しています」。
もちろん、革づくりの技術面においても自信がある。
革の選別からはじまり、なめし、仕上げに至るまで、微に入り細に入った仕事ぶりが際立つ。塗装中の革のモニタリングや面出しのアイロンがけはその好例だ。

「ジャパンファッションEXPO」では、キモト・レザーワークスの美学を落とし込んだ2種類の革で勝負をかける。「プリマ」はしなやかでソフトな質感と優雅で上品な雰囲気が同居している“ネオクラシック・エレガンス”な革。「リラクタンド」は、あえて革らしさを外した張りのあるドライな風合いが特徴で、立体感のある製品に適している。

革で喜んでもらいたい――。職人たちの一途な思いが革からひしひしと伝わってくる。

革素材の魅力がキラリと光るアイテム

商品の企画からサンプルづくり、生産、販売までを一貫して自社で行っている清川商店。東京スカイツリーのお膝元である吾妻橋に工房とショップを構え、革製品の魅力を発信している。

清川商店の社長である松村由美さんは、日本の革の魅力について「われわれの要望に応じて安定した供給がなされるところです。
納期もきちんと守ってくれるし、サンプルの革なども細かいオーダーに対応してくれるので非常に助かっています」と、話す。
日本の革と言ってもタンナーは全国津々浦々にある。その中で今回の展示会用に選んだ革は、キモト・レザーワークスが製造した「プリマ」と「リラクタンド」の2種である。

「プリマ」について「牛革でここまでやわらかさとやさしさを表現したものを見たことがなく、ぜひ使ってみたいと思いました」と、松村さん。
素材感を活かし、レディース向けの巾着バッグとミニポーチを制作した。どちらも丸みを帯びたフォルムが非常に魅力的だ。
一方のリラクタンドは、「インダストリアルな雰囲気に惹かれました。こちらは、絞り加工でノートパソコンケースとミニポーチをつくりました」。立体成型向きの革をみごとに製品に落とし込んでいる。

デザイン重視ではなく、革の特性を見極めたうえで完成したプロダクトはさすがの完成度。たくさんの人の生活に寄り添ってくれるはずだ。

第12回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

革に対する世間の声を聞けたのが大きな収穫

ソフトな質感と上品な雰囲気が魅力の「プリマ」と、張りのあるドライな風合いの「リラクタンド」という2種類の革を展示したキモト・レザーワークス。参加の手応えについて、ブースに立った木本文明さんは次のように語る。

「今回の革について、もともとの革好きにはその魅力を理解していただきましたが、革素材になじみのない方たちに向けたアピールが足りなかったかもしれません。次回も参加できるならば、もっとパンチのある革も一緒に展示したいですね」

すでに次回のことを考えている前向きな木本さん。清川商店とのコラボレーションという点についてはどのような感想を抱いたのだろうか。

「革を知ってもらうにあたり、製品と同時に展示する方がお客様にイメージしてもらいやすいことを痛感しました。今回は清川商店さんにそれぞれの革の特徴を説明し、その魅力をうまく製品に落とし込んでいただきましたので、とても感謝しています」

有益な商談もあったそうで、「紳士靴メーカーの方から、婦人靴のエッセンスが入った革を紳士靴にぜひ使ってみたいというお話がありました。商談としてすごくスピーディーで、すぐにサンプルを納品する予定です」と、顔をほころばせた。
また、各社同様にサステナブル関連の問いを投げかけられることもあった。「私たちは、食肉の副産物を加工して再利用していますが、残った革の有効活用についていくつかご意見をいただきました。そういった世間の声を耳にできたことが、今回の一番大きな収穫だったかもしれません」

今後については、「世界の環境意識に根差した認証・認定を受ける必要もあるし、スタッフに対する教育もより力を入れていきたい。小売店さんの方で可能であれば、社名と素材の表示もいいと思います」と、コメントしてくれた。

清川商店の松村由美さんは、「コラボレーション自体は非常に有意義なので、よりお客様に伝わりやすいブースの構成にすると、もっと良くなると思います」と、意見を聞かせてくれた。

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