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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

カドヤ商店 × ラモーダヨシダ

独自のタンニンなめしで馬革を製造

兵庫・姫路市の高木地区にて、戦後すぐの1949年より革づくりを続けているカドヤ商店。専門とするのは馬革で、創業直後から長らく婦人靴用の革をメインに製造してきたが、近年は衣料用や鞄用の革にも手を広げている。

「馬革の魅力は、ほかの革にはない銀面のこまやかな風合いです」
角谷賢作さんがそう話すと、弟の角谷領一さんも「タッチ感がしなやかで、使い込むうちに独特の味が出ますね」と、言葉を継ぐ。

軸足を置いているのは、2000年代初頭より取り組み始めたタンニンなめしだ。天然皮革ならではの味わいを表現するのと同時に、環境への負荷を考慮した革づくりを心掛けている。

工程においては、たとえばドラムでなめす際は、ダメージを最小限に抑えるべく、投入する量と回転数を適切に調整。効率よりも革本来の味わいを引き出すことを重視する。また、用途に応じて乾燥方法も変えている。領一さんによると、「たとえばジャケット用の革の場合は、吊るして乾燥するとアタリが出てしまうため、地面にビニールシートを敷いて、その上に寝かせて干しています」。

工夫を重ねて製造する馬革のうち、「ヌメナチュラル」をはじめとする数種類は日本エコレザー基準(JES)でもっともランクの高いエキストラ(36ヶ月未満の乳幼児の皮膚接触が可能)に認定されている。賢作さんは、「製品として長く使っていただき、最終的に土に還せる革を目指しています」と理想を語ってくれた。
革の魅力をより広く訴求するため、工場併設のギャラリーにサンプルを多数揃え、訪れる人にその魅力を説明している賢作さんと領一さん。今回の『第6回 国際生地・素材EXPO』においても選りすぐりのラインナップを展示する。

銀面の美しさを活かした財布が誕生

東京の御徒町・蔵前近隣を指すカチクラエリアに本社を構えるラモーダヨシダ。財布をメインに扱う、ものづくりのプロが集うメーカーだ。

「代表の吉田は、普段から社員に『財布のプロになりなさい』と話しています。職人はもちろん、当社で働いている人間が皆で同じ意識を共有しているので、いろいろな部署のメンバーから『こういうアイデアはどうですか?』と案が出ます」

ラモーダヨシダの高窪元弘さんは、自社の強みをこう語る。オリジナルブランドmic(ミック)からは、ヒップポケットシリーズをはじめたくさんのアイテムをリリースしているが、多くのプロダクトに社員の意見が反映されている。

カドヤ商店の「ヌメナチュラル」を使った財布も、皆でアイデアを出し合ってつくった。

「馬革は薄くてキズの多いイメージがありましたが、カドヤさんのヌメは充分な厚みがあり、銀面も非常にきれいで驚きました。プラス、持ったときにもっちりとした手触りがよくて、袋縫いで女性向けの財布をつくろうという話になりました」

実際に完成した製品を見ると、もちもち感のあるポップなデザインが強調されており、しっとりした感触もじつに心地よい。ナチュラルなヌメ革なので、使い込むごとに味わいが増し、やがて熟れた飴色に変化していくはずだ。

「日本のものづくりは、細かな部分も丁寧に仕上げる特長があるように思います。革製品の製造工程でいえば刻み(菊寄せ)にコバ塗りなどもそうですし、裏地にまで気を配るのもいかにも日本人らしいですよね」

近年は「革財布のお店mic」というアカウント名でYouTubeチャンネルを開設し、自社製品の魅力や使用方法を発信。今後はライブコマースも検討しているという。ラモーダヨシダはこれからも、日本のものづくりの魅力をさらに広めていくはずだ。

第6回 国際 生地・素材EXPO 秋 レポート

メーカーとウィンウィンの関係を構築

構成展『第6回 国際 生地・素材EXPO 秋』において、ラモーダヨシダとコラボレーションしたカドヤ商店。専門とする馬革は、こまやかな風合いの銀面とソフトな手触りが特長。環境負荷の低減を考慮し、タンニンなめしを採用している。今回の展示会では、タンニンなめしの馬革「ヌメナチュラル」を前面に押し出した。

「メーカーさんの製品と一緒の展示ということで、お互いにメリットがあり、ウィンウィンの関係になれたのではないかと思います」
そう語るのは、カドヤ商店の角谷領一さん。さまざまな素材が並ぶ展示会において、「革という素材は充分に知れ渡っていない」と痛感したそうだが、「逆を言えば広まっていない分だけ可能性を秘めている。丁寧に根気よく説明して、革そのものの魅力を理解していただくよう努めました」。

来場者と対話する際には、そもそも革が食肉の副産物であることや、最終的に土に返せる革を究極の目標としていることについて詳しく話したそう。特に説明を求められたのは、日本エコレザー基準(JES)の内容についてで、「環境素材を求めるエコ志向の方が多かったです」と、感想を語った。
馬革への反応については「実際に触っていただくと、やわらかさやフィット感に驚かれている方が目立ちました。素材の質感を伝えるという意味では、会場を後にしてからも残るスワッチもとても役立ったと思います」と、好感触だった様子。

ラモーダヨシダの高窪元弘さんによると、カドヤ商店の馬革でつくった製品に対する反響は非常に大きかったという。

「馬革というとコードバンをイメージする方が大半で、ヌメ革のやわらかさに驚かれている方が多かったです。製品を見てから革に触って『使ってみたい』と話している人も見かけました」

カドヤ商店にとっても、ラモーダヨシダにとっても、今までにない新規のお客様が開拓できる絶好の機会であった今回の展示会。2社とも次回以降の開催を熱望しているようだった。

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