素材から作りまでメイドインジャパン。
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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

オールマイティ × ミヤ・レザークラフト

日本ならではの侘び寂びを感じる革が完成

兵庫・姫路市に工場のあるオールマイティの設立は2008年。前身である太閤化革は1912年創業というから、その歴史は一世紀を超える。メインで製造しているのはファッション関係の革で、小ロット多品種に対応しているのが特長だ。

今回取材に応じてくれたのは、代表を務める水瀬隆行さんのご子息、大輝さん。大学卒業後、すぐに革の世界に飛び込み、「日本タンナーズ協会の次世代PR委員会のメンバーとして基礎知識を学びました」。現在は、隆行さんと大輝さんを中心に、少数精鋭でタンナー業を営んでいる。
オールマイティのコンセプトは、「世界のお客様に喜んでもらえる革づくり」。その真意を大輝さんに問うと、「オールマイティという社名どおり、どんな注文に対してもイエスと応じて喜んでもらおう、と。
デザイナーさんやクリエイターさんと現場で色味や風合いについて話し合いながら、一枚から革づくりをするというスタイルです。納期までのスピード感にも自信があります」と、言葉に力を込めて語ってくれた。ユーズド感を表現する製品染めなどもその一環である。
そんなオールマイティが「ジャパンファッションEXPO」で押しなのが、カーフを使って日本ならではの侘び寂びを表現した「墨」と「柿渋」の2点だ。
墨は粒子が粗いため、すり潰して薬品と混ぜ、繊維に固着しやすくなるよう工夫している。柿渋は手塗りして日本らしさを表現。効能として消臭・抗菌作用も付加されている。
このような仕上げができるのも、なめしの技術が卓越しているからだ。
「カーフはきめが細かくデリケート。使用する水や薬品の分量なども含め、徹底的に研究したレシピでなめしています。革の品質は8割がなめしで決まると言われているので、特別に力が入る工程ですね」

大輝さんの言葉には、職人としての自負と矜持が感じられる。

メイド・イン・ジャパンの本質を感じる財布

「一見して日本的な風合いが伝わってくる革ですよね。繊細なカーフと侘び寂びを感じられる仕上げという組み合わせに惹かれました」

そう語るのは、ミヤ・レザークラフトの宮一之さん。ミヤ・レザークラフトは、ものづくりの街である東京都墨田区で、財布づくりを主軸としているメーカーだ。
ブランドとしては実用新案を取得した「THINly(スィンリー)」が知られている。このブランドの財布の魅力は、カードポケットが縦入れタイプであること。カードを重ねて収納できるため分厚くならず、ヒップポケットに入れてもスマートなシルエットを崩すことがない。

「ジャパンファッションEXPO」に出す製品は、このTHINlyとまったく同じ型を採用。種類は二つ折り札入れ、二つ折り小銭入れ付き札入れの2種類で、ともに大小の2サイズ展開。カーフならではの繊細さと機能的なデザインが融合したプロダクトである。
「墨」と「柿渋」を使うにあたり、宮さんはオールマイティの水瀬さん親子と何度も打ち合わせを重ね、細部のテクスチャーにまでこだわった。
宮さんは、「日本のタンナーに革をつくっていただく際の最大の魅力は、ただ出来上がった素材を選ぶのではなく、こまかいオーダーに応じていただけるところです」と、目を細める。

最高の素材を使うのだから、製品にする際にも力が入る。
職人の技術力はもちろん、「糊をはじめ、材料選びから上質なものを使おうという指向性があると思います」。革の風合いも含め、メイド・イン・ジャパンの特性が感じられるこの財布を、ぜひとも手に取っていただきたい。

第12回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

大規模な展示会で世の中のトレンドを知る

「大規模な素材展ということで、革がメインの目的でない方もたくさんいらしていた印象です。情報に敏感な方からは、『革はエコですか』『どういうところがサステナブルですか』といった質問も受けました。パネルや看板をさらに工夫し、循環型産業であることを伝えることで、革素材のファンを増やしていけると感じました」

そう振り返るのは、オールマイティの水瀬大輝さん。革製品になじみのある40代、50代よりも、20代、30代から初歩的な質問を受けることが多かったそう。

「当社においても、SNSやなどで正しい情報を伝えていくPRを検討していきたいです」と、ポジティブに先を見据えているようだった。

もちろん、ECサイトの関係者をはじめ、革をメインに探しに来た方もけっして少なくなかった。墨と柿渋で和風の侘び寂びを表現した革は非常に好評。コラボレーションしたミヤ・レザークラフトのプロダクトのおかげで魅力を伝えやすかったという。

「タンナーの仕事はメーカーさんありきです。革素材をただ見せるだけではなく、当社の革でこういう製品がつくれますよ、という紹介ができて良かったです。メーカーさんに対して感謝の気持ちでいっぱいですし、コラボの価値はとても大きかったと思います」

次回以降の参加についても非常に前向きで、「こういうイベントに出ることで、世間が革にどういう関心を持っているのか、異業種はどういう動き方をしているのか、そういう勉強ができます。お客さんが求めているものは毎年変わるので、市場調査を含めて継続参加したいですね」と、鋭い考えを聞かせてくれた。
コラボレーションしたミヤ・レザークラフトの宮一之さんは、「難しいかもしれませんが、オリジナルの限定革を使わせていただけると、プロダクトの希少性も高まるように思います」と、アイデアを話してくれた。

今回のコラボレーションは双方にメリットがあったようである。
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