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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

金田染革所 × 野村製作所

世界でただ一つの製品づくりができる革

仕上げ工程に特化した独自の技術を誇る金田染革所。皮革産業の集積地である兵庫・姫路市にて1980年に創業して以来、さまざまな用途の革を製造してきた。
近年は、若手の金田拓也さんが中心となり、現場の声を吸い上げて働きやすい環境づくりに注力している。
金田染革所の仕事の信条は、「お客様のニーズに沿った革づくり」。
薬剤の調合、塗装、アイロンプレスなどの各工程において、絶妙なさじ加減で革を加工。
また、多様なオーダーに応じるため、工場内の設備を充実させていることも特徴だ。
そんな金田染革所の技術の粋を集めた代表例が、「ストーンウォッシュ」と「コスモ」だ。両方とも馬革をベースとしている。

「ストーンウォッシュ」は、バタ振りや空打ちによるストーンウォッシュ仕上げで下地の色を出し、ヴィンテージ感を引き出した革。ツートーンの色合いが一枚一枚違うため、製品になったときの表情もすべて異なり、二つと同じものがつくれない。「コスモ」は、その名のとおり宇宙をイメージした革。

ランダムに塗料を吹き付けているため、思いがけない模様に仕上がる。2種類ともカラーバリエーションに関しては、要望に応じて幅広く対応しているという。

「ストーンウォッシュもコスモも、同じ一枚の革でも部分ごとに表情がまったく違うので、何をつくるにしろ世界でただ一つの製品になります。ものづくりをするメーカーの方はもちろん、エンドユーザーの方たちにも楽しんでいただけると思いますね。長く愛用していただけるとうれしいし、やる気にもつながります」

金田さんの声は、仕上げ専門のタンナーとしての誇りに満ちている。

配色の妙と有機的テクスチャーの共演

老舗OEMメーカーとして誇りを持ち、丁寧なものづくりを行っている野村製作所。常にチャレンジ精神を持ち、さまざまな用途の革小物を制作している。

近年は職人の世代交代が進み、ベテランから技術を学んだ若手が中心となり、より柔軟な発想で商品開発を行っている。職人の細野悠介さんは、「ベテランの技を受け継ぎつつ、積極的に新しいことに取り組んでいます」と、穏やかな口調で話す。
そんな野村製作所が今回選んだのは、金田染革所の革だ。細野さんはどのようなポイントに惹かれたのだろうか。

「馬革というと素上げのイメージが強かったのですが、『ストーンウォッシュ』は独特なお化粧でキズも目立たず、ユニークな仕上がりになっていると感じました。一方の『コスモ』は、『ストーンウォッシュ』よりもパリッとした質感です。両方とも色の組み合わせが無限にできるということで、ぜひ一度試してみたいと思いました。実際に発注した革を見て、色出しの技術とセンスに驚かされましたね」
そんな革で製造するアイテムは、スリムウォレットをはじめとする小物類。「馬革の特性なのか、想像以上に素材が伸びて変形するので、独特の形状になりました」と、細野さん。また、金田さんが言ったように、同じ革でも使う部分によって見え方が全然違うことに面白さを感じたという。

細野さんは、日本のものづくりについて「どうしても細部にまで手を加えたくなる職人さんたちの性分に支えられている」と話す。
金田染革所の革からタンナーとしての誇りを感じ取った野村製作所の職人たちは、持ち前の「性分」を製品に反映させ、ほかに類を見ないコラボレーションを成立させたといえるだろう。

第12回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

革と製品の同時展示でアピール力向上

金田染革所は、ヴィンテージ感のある「ストーンウォッシュ」と、宇宙をイメージした「コスモ」の2種類の革をメインに展示会に臨んだ。参加した金田守人さんは、「2種類は他社にはないインパクトのある革だったので、たくさんの方に興味を持っていただきました」と、感想を語った。

コロナ禍で海外からの来場者は少なかったが、その中でも複数の外国人がブースに訪れたという。

「中国の方やモンゴルの方が革を見に来てくれました。モンゴルの方は繊維をメインにものづくりをしているようですけど、革素材に興味を持ってくれたようでうれしかったです」

メーカーとのコラボレーションについては、「今まで参加した展示会は革のみでしたが、野村製作所さんの製品を同時に展示することで、『この革で製品をつくりました』という説明がしやすかったです」と、手応えを感じたようだ。

また、サステナブル/SDGs関連の話題が出たこともあった。金田さんは、「革が食肉の副産物であることを知らない方たちに、SNSなどで皮革産業の仕組みを伝えていければ」と、語ってくれた。
サステナブルについては、コラボレーションした野村製作所の大泉和也さんも似たような感想を受けたそう。「わかりやすいキャッチコピーを大きく打ち出すことで、革が副産物であることを知らない方に伝えられるのでは」と、話してくれた。

金田染革所の今回の革に関しては、「ハイブランドが使っているようなイメージの革で、製品も若いデザイナーさんやバイヤーさんに人気でした」。反応は上々だったようだ。

野村製作所は昨年に続いての参加だった。大泉さんは、「各社が最新作を持ってくる場で情報を受発信することは非常に大切だと思います。来年も参加したいです」と、笑顔を見せてくれた。

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