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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

山陽 × ミヤ・レザークラフト

真珠のような光沢のアンチック風レザー

山陽は、創業より100年以上の歴史を誇る総合タンナー。
兵庫・姫路市にて、約1万坪の敷地に工場を構え、原皮の処理から仕上げまでを一貫して行っている。
クリエイターとのパートナーシップを重視しており、高度な技術を要求される革の開発にも積極的に取り組み、多数のメーカーから高く評価されている。
専門性の高い革を生産するには、相応の設備も必要だ。
山陽には、国内ではめずらしいピット槽があり、ナチュラルなヌメ革の製造が可能。大量の革をなめすことができる大型のドラム、よそではなかなかお目にかかれない大型低温真空乾燥機なども完備している。生産量・品質ともに、多種多様なオーダーに対応することができる。

また、航空機部品製造にも適用されるJISQ9100を認証取得するなど、常に企業努力も欠かさない。
「ジャパンファッションEXPO」では、機能性商品を軸にバラエティ豊かなラインナップを揃えた。その中でメーカーに高く評価されたのが、ステアハイドを使った「アリエルパールPM-A」である。

この革は、下地に粒子の細かいシルバーパールを使っており、なじませることで全体のメタリック感を抑制。真珠のような光沢と大理石のようなアンチック感を表現し、高級感と上品さを併せ持つ革に仕上げた。
山陽の松浦弘明さんによると、要望があれば、フッ素フリーや防水などの機能付加もできます」とのこと。臨機応変に対応してくれるのが山陽の強みといえよう。
この他、さまざまな機能性を持つ革や、ピット槽でなめしたヌメ革を用意。
松浦さんは、「ヌメ革は植物タンニンでなめしているので、手入れをすれば本当に長く使えます。近年はSDGsやサステナブルという言葉をよく聞くようになりましたが、それらに貢献できる革だと思います」と、思いの丈を語ってくれた。

真摯な想いの詰まった革が、メーカーへと受け渡された。

見た目の美しさと機能性の両立に成功

山陽の革を選択したのは、1959年創業のミヤ・レザークラフト。東京都墨田区は東駒形に工房を構えるメーカーで、現在は財布をはじめとする小物類をメインに製造している。

ミヤ・レザークラフトの強みは、山形に自社工場を持っているところだ。こちらでは、手先の器用な女性職人が一貫してレディース向け製品の製造に携わっており、丁寧な仕事ぶりが評判。一方、メンズ向けを担当するのは、長い付き合いのある熟練の腕を持つ男性職人。キャリアの長い職人たちとの付き合いも大切にしているという。
ミヤ・レザークラフトの宮一之さんは、「アリエルパールPM-A」に惹かれた理由について、「アンチック風でムラのある色合いを見て、女性に喜ばれそうという印象を受けました。まずは見た目のインパクトを優先し、私たちの手で使い勝手の良い製品にしようと思いました」と語る。

この革で作った製品は、LF(L字ファスナー)束入れ、R(ラウンド)束入れ、通しマチの名刺入れ、二つ折り札入れの4つ。サイズは大小の2種、カラーはピンク、ブルー、グレーの3色だ。展示会で評判がよければ、秋らしさを感じさせるオレンジ色を追加し、春夏秋冬のラインナップを揃えることも検討しているとか。

すべてのプロダクトにおいて、カードポケットを従来の横入れではなく縦入れにしてスマートな収納を実現。やや濃い目の裏地は表側と同色なため、汚れが目立ちにくい。また、ファスナーやホックにもこだわることで高級感をもたらした。

「見た目の華やかさだけではなく、カードがかさばらないスマートさやファスナーの開けやすさやなども、きっと気に入ってもらえると思います」

宮さんの笑顔は自信に満ち溢れていた。

第12回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

若年層に向けた魅力発信の必要性を強く実感

老舗タンナーの山陽は、昨年に続き2年連続の参加。真珠のような光沢と大理石のようなアンチック感を表現した「アリエルパールPM-A」を主軸に多彩な革を展示した。

「昨年同様、メーカーさんとのコラボレーションはとても反応が良いように思いました。製品を見た方がこちらに来られて、素材の説明を受けて『なるほど』ということでまた製品を見に行く、という流れが生まれていました」
そう語るのは、同社の松浦弘明さん。山陽の革に惹かれて立ち止まった人の中には、足袋を製造しているメーカーの方もいたそうで、「ミシン針の通る革はありますか」という質問を受けることもあったという。

また、サステナブル素材のブースに近かったため、「革は持続可能性のある素材か」「人工皮革と本革はどう違うのか」といった質問を受けた。さらに具体的な商談になると、「製造過程でどのような薬品を使っているか」「SDS(Safety Data Sheet=安全データシート)の提出をお願いできるか」といった問い合わせもあったという。

「若い世代に向けて革の魅力をどう浸透させていくのか、そこが大きな課題だと感じました」と、感想を語ってくれた松浦さん。同社では近年ブランディングチームが発足され、革の魅力の発信により力を入れているが、今後その流れをさらに推進していくようだ。

コラボレーションしたミヤ・レザークラフトの宮一之さんは、「タンナーさんとの合同展示なので、革の特性を伝えやすかったです。また、ジャパンレザーを使っていることをアピールできたのも良かったですね」と、活力に満ちた声で語ってくれた。

さまざまな方と話をする中で、YouTuberとの出会いもあった。宮さんは、「動画でレザークラフトの一点ものを制作している方から、そのアイテムを量産できないかという話がありました。今の時代ならではのお話で興味深かったです」と、エピソードを披露してくれた。

山陽とミヤ・レザークラフト、両社ともに今後の継続参加を希望している。

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