素材から作りまでメイドインジャパン。
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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

新喜皮革 × パーリィー

「キング・オブ・レザー」の新作が完成

1951年創業の新喜皮革は、兵庫・姫路市にある馬革専門のタンナー。
質の高いコードバンの製造で名高い。ご存じのとおりコードバンとは、馬の臀部(でんぶ)にある緻密な繊維層を削り出したもので、その希少性と美しい風合いから「キング・オブ・レザー」の異名を持つ。
コードバンの製造には、長い時間を要する。原皮の下処理を行った後、タンニン液の入ったピット槽に漬け込むのだが、その期間は約1ヶ月。濃度の低い槽から高い槽へと移していき、繊維にダメージを与えずタンニンを浸透させていく。

漬け込みを終えて乾燥させた革は、平積みして3~4ヶ月ほど寝かせて熟成させる。その後も削り出しやグレージングなどを行い、ようやく完成。社長の新田芳希さんによると、「クロムなめしのホースハイドが1カ月弱で完成するのに対して、タンニンなめしのコードバンは完成までに10カ月を要します」。とにかく手間暇がかかるのだ。
そのコードバンに独自の加工を施したのが、今回紹介する「アポロ」だ。手作業で不均一な模様をつけ、グレージング加工で透明感のあるツヤを与えたこの革は、つくり手のクリエイティビティを刺激すること請け合い。
このほかにも、展示会用に上質な製品を多く揃えた。
また、近年はSDGsにまつわるさまざまな施策を実行。
「長年続けてきた環境負荷の少ない植物タンニンなめしだけではなく、琵琶湖のブラックバスと近代マグロの廃棄されてしまう皮を使い、持続可能な資源として活用する皮革素材づくりにも力を入れています」と、新田さんは語る。

時代を先読みして革づくりを続けるタンナー、それが新喜皮革なのだ。

繊細なコードバンをプロの技で製品に

パーリィーの工房があるのは東京・練馬区。現在は会長を務める白潟篤さんが1985年に創業し、ミシン一つからスタートした。

パーリィーといえば、バイカー向けのワイルドなレザーアイテムが根強い人気を誇るが、現在はディアやエルクの革を使ったプロダクトを中心に、幅広いラインナップを揃える。吟味した革素材と職人の丁寧な仕事により、どの製品もクオリティが非常に高い。
「たしかにうちの職人たちは、みんなよくやってくれています。ただ、プロであれば品質の良い製品をつくるのは当たり前、というところもある。常に妥協しないものづくりを目指しています」

今回の展示会用の製品をつくる際にも、その志は変わらない。使用する新喜皮革の「アポロ」について、「表情が美しく、大変気に入っています。繊維の締まりがいいし、コバの磨きがいがありますね」と、満面の笑みを浮かべる。
この革で製作したのは、1ドル銀貨ロング財布、馬蹄コインケース、靴ベラキーホルダー。白潟さんは、「コードバンはヌメより繊細だし、キズがつきやすい革です。
そのため、裁断やステッチなどの、一つひとつの作業にとにかく気を遣います」と、話してくれた。その結果、コードバンの風合いを活かした満足のいくアイテムが完成したという。

白潟さんは、新喜皮革だけでなく、ジャパンレザーに全幅の信頼を寄せている。

「メイド・イン・ジャパンの革は、納品が早い、単価が安い、打ち合わせがしやすいという利点がある。そういう意味では非常に助かっているし、今後もずっと使っていくのは間違いないでしょう」

第12回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

多種多様なお客様との交流が最大の収穫

コードバンの製造で知られる新喜皮革は、今年初参加。コードバンに不均一な模様をつけ、透明感のあるツヤ与えた「アポロ」をはじめ、さまざまな馬革を用意した。

「異素材メインの展示会でしたが、革素材に詳しくない方に向けて、メーカーさんとのコラボレーションで当社の革を周知できました」

そう語るのは、同社の福盛康彦さん。コードバンを知らない方もいたが、「実際に見て触っていただいた方からは、『きれいな革ですね』と良い反応をいただきました。コードバンをはじめ、馬革の魅力が少しでも伝えられたのなら意義があったと思います」と、語ってくれた。

福盛さんは、業種問わずさまざまな人々が訪れてくれたと話す。

「付き合いのある商社の方から個人で革製品をつくっているクリエイターさんまで、いろいろな人と交流できました。オーダーメイドでスーツをつくっている方から『馬革でスーツをつくってみたい』というお話をいただくなど、予想しなかった出会いもありましたね」

今後の参加については、「継続したいですね。素材の良さを活かした製品とともに、革をどんどんアピールしていきたいです」と、意欲的だった。
新喜皮革とコラボレーションしたパーリィーの白潟夏樹さんは、「緊急事態宣言明けで、予想より来場者が多かったですね」と、コメント。

革素材との同時展示については、「素材とアイテムがすぐに紹介できるので、説明がしやすいです。メーカーが展示会で革を持っていくことはまずないので、私たちにとってはメリットが大きかったです」。相談を受けた中では、「革でゴルフクラブ用のカバーをつくれないか」という話もあったそうだ。

プロダクトそのものについては、「海外の製品とは違ってつくりが丁寧だと評価してくださる方がいました。革そのものの色合いやシンプルなデザインに加え、糸調子が違うといったこまかい部分まで注目していただけたのはうれしかったですね」と、好反応に笑顔を見せた。

両社ともに、大きな収穫のあった展示会となったようだ。

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