素材から作りまでメイドインジャパン。

タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

協伸株式会社 × 株式会社 きくひろ

発色の美しさとソフト感の両立に成功

1910年創業、兵庫・姫路市に工場を構える協伸株式会社。現在の社内体制が整ったのは、3代目の金田陽司さんに代替わりしてから。

留学先だったドイツの国家資格「Leder Tehinikā」(レダーテクニカ―/皮革技術指導者=オーバーマイスター)を取得した金田さんは、勘や目分量で進めていた作業を見直し、なめし工程をレシピ化するなどして合理化を成功させた。

「父は研究職の強い技術者で、化学的な根拠に基づいた革づくりを会社に導入しました。現在は、すべての社員がその技術を共有し、独自のレシピや技法で多様なニーズに応じています。開発にも積極的で、同業者や異業種とのコラボレーションによって、革素材の新たな可能性を追求しています」

今回取材に応じてくれた金田さんのご息女、吉原ステファニーさんはそう語る。異業種コラボの例としては、加工過程で生じる革くずの有効利用を考え、大学や農家とともに研究を進めているという。「The Leather for Innovation」というフレーズを企業理念に掲げる同社ならではの取り組みと言えるだろう。
また、環境問題にも配慮しており、規則を遵守した薬品の使用や水の処理を徹底。機械の導入による効率化など労働環境の整備に努め、全社員が働きやすい職場を目指している。

そんな同社は、今回の『ジャパンファッションEXPO』出展にあたって、世界的なトレンドを反映した革をそろえた。中でもプッシュしているのが「ソフトスムース」だ。
「初めに下地をしっかりとコーティングし、自社で配合した水溶性の仕上げ材で仕上げています。シリコンオイルを併用することで、しっとりとした手触りとやわらかな質感を両立させています。発色がきれいで色ブレが少なく、安定供給が可能です」

はたして、自信作である「ソフトスムース」はどのようなプロダクトに仕上がったのだろうか。

タンナーの思いを汲んだトートバッグが誕生

協伸の「ソフトスムース」に魅せられたのは、株式会社 きくひろの代表取締役を務める菊池弘太さん。

きくひろは東京・葛飾区に工房を持ち、レディース向けのフォーマル調のバッグを中心に製造しているメーカーだ。2009年には自社ブランド「Petrarca(ペトラルカ)」を立ち上げ、働く女性向けのプロダクトをつくっている。
これまでも、さまざまな革を扱ってきた菊池さんだが、「協伸さんの『ソフトスムース』は、手触りのソフトさと発色の美しさが際立っていました」。協伸側が訴求するポイントを汲み取りつつ、革づくりにかける思いまでをしっかりと受け止めた。

今回の『ジャパンファッションEXPO』でお披露目するのは、「トートバッグ(大)」。革の色合いの美しさを前面に押し出しつつ、肩掛けもできるハンドルの長さやスマートフォンの入るポケットのサイズ感といった機能性を追求した。
「軽くてソフトな革の良さを最大限に活かせたと思います。色味もとても良いですね。ユニセックスのプロダクトなので、性別に関係なくどなたでもお使いいただけます」

協伸の革を使うことで、日本の革の品質の高さにあらためて気づいた菊池さん。今回はすでに完成している革を選ぶかたちだったが、「今後はタンナーさんとコミュニケーションをとってオリジナルの革をつくっていきたいです」と、前向きに語ってくれた。

第13回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

環境意識の高い異業種との出会いあり

同業者や異業種とのコラボレーションにより、革素材の新たな可能性を追求している協伸株式会社。初めての参加となる今回の展示会では、株式会社 きくひろと協力してブースに立った。

同社の吉原ステファニーさんは、革と製品のセット展示について「製品を手に取る方に対して、きくひろの菊池さんが『協伸さんの革でつくりました』と説明してくれ、ありがたかったです。タンナーとメーカーが力を合わせ、具体的な説明をできたのがとても良かったです」と、手応えを語った。
新たな発見もあった。「ある方から『革のキズを活かしていくのがSDGsを絡めた売り方』というお話を聞くことができ、うれしくなりました」と、笑顔を見せた。

来場者に関しては、「園芸業を営む方とボタニカルレザーについて話すなど、環境意識の高い異業種の方との出会いが多かったです。当社は研究色の強いタンナーなので、研究から一緒にやりませんかというご提案ができたケースもあり、有意義な3日間でした。私たちが次にチャレンジしたいと思っている分野と方向性が近い、そんな方たちとの新たな出会いがありました」。

また、吉原さんはちょっとした空き時間を利用して、異なるジャンルのブースにも足を運んだ。「いろいろな業種の方のアプローチの仕方、言葉の選び方がとても勉強になりました。タンナーサイドが苦手意識を持っているアピールについて、みなさんのお力をお借りしつつ、よりよいアクションの方法があるかもしれないと考えさせられました」と、すでに未来を見据えているようだった。

協伸とタッグを組んだきくひろの菊池弘太さんは、「来場者からすると、製品単体よりイメージが膨らみやすい展示だったと思います」と、感想を口に。

製品そのものに対しては、「手に取っていただいた方に『持ちたい』『使いたい』と言われ、うれしかったです。フォルムや素材感、軽さを気に入っていただいたようです」と、ポジティブな反応に好感触を得たようだった。
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