高度な製法で足の負担が少ない婦人靴を製造
藤原化工株式会社(兵庫)
1卓越したソール加工の技術を靴に反映
藤原化工の創業は、高度経済成長の真只中にあった1957年。主業はソールの加工。時代の趨勢は大量生産・大量消費へと傾きつつあったが、同社は型に樹脂を流し込んでつくる成形底ではなく、手作業で一足ずつつくり上げる加工底を生産。その技術力が高く評価され、現在もトップアスリートが履くさまざまなスポーツシューズ底の製造を請け負っている。
そんな同社が靴づくりを始めたのは、今から10年前のこと。ブランド名は「…AshiOtO(アシオト)」。ソールを加工する技術力を生かし、並外れて軽く、屈曲性が良く、足が包み込まれるような履き心地の婦人靴をメインに製造している。
「弊社で採用しているボロネーゼ製法は、前足部に中底を使用せず、ライニングをフィットするように縫うため、足への負担を極力少なくすることができます。この製法は工程が非常に多く、アッパーとライニングの立体差を縫製しなければならないため、高度な技術が必要です」
そう語るのは、統括部長の藤原崇晃さん。むろん、同社のスタッフがすぐに技術を身につけられたわけではない。「…AshiOtO」を立ち上げてから熱心に研究を行い、試行錯誤の末に満足のいく製造技法を確立した。ブランド設立後は靴づくり部門の社員を5名ほど増やし、万全の生産体制を整えている。
2柔軟性のある革が足に負担のない靴になる
同社の高品質な靴に欠かせないのが、姫路のタンナーが製造しているレザーだ。
「姫路のタンナーさんとは以前よりご縁があって、直接取引をさせてもらっています。こちらの新しい要望を十分に理解していただき、風合いを重視したオリジナルの革をつくっていただいております。靴づくりにも力が入りますね」
新しい革を開発する際には、入念に打ち合わせをする。藤原さんが姫路のタンナーに行くこともあれば、姫路のタンナーの代表が藤原化工まで来ることもある。完成した“革”は製造の過程で“化”け、“靴”へと変化する。
その好例が、驚くほど軽い定番のボロネーゼパンプス。フォーマルなデザインでさまざまなシーンで履くことができる。ほかデザインでは、なめしの段階から撥水加工も施している高品質のアイテムも生まれている。
「細身に見えると思いますが、履いているうちに革が伸縮して、徐々に足に馴染んできます。おそらく10分も履いてもらったら、その感覚を実感していただけると思います。ソールには、トップアスリートのシューズにも使用される特殊EVA樹脂を使っているため、軽くてほど良い硬さがあり、たくさん歩いても疲れにくくなっています」
同社ではアフターケアにも力を入れており、年間300足ほどのメンテナンス依頼を受注している。藤原さんは、「靴と長く付き合っていただければうれしいですね」と、語ってくれた。
3国内の材料でつくった靴を、国内の消費者に買ってほしい
そんな藤原さんだが、ジャパンレザーの魅力をどのように捉えているのだろうか。
「私どもが神戸にいるということもありますが、タンナーさんとの距離感が近く、早々に希望する革を仕上げてくれるのが最大のメリットだと思います。実際に姫路のタンナーさんとは密なやり取りをさせていただいています」
姫路のタンナーとの取引によって、ジャパンレザーの魅力を理解できたという藤原さん。今後も、国産の素材を使った靴づくりを主軸としていくつもりだ。
「靴づくりの材料は国内産のものを使うべきだと思うし、日本の方たちに買ってほしいという思いがあります。細身に見えますが、当社独自の立体成形インソールや柔らかい革を使用することで、足が幅広の方や外反拇趾の方でも履ける工夫をしています。ぜひ一度試し履きをしてほしいですね」
自信のあるアイテムを不特定多数の人に知ってもらうためには、情報発信が不可欠。また、将来にわたって品質を保持するために、若手に技術も継承せねばならない。やるべきことは山積みだが、藤原化工の誇る確かな技術は、将来をきっと明るいものにするだろう。