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日本の皮革製品メーカーMaker

体の土台を支える足に優しい革靴が評判
株式会社 ティックワールド(佐賀)

1ものづくりの原点はイタリアの靴工房にあり

ティックワールドの会長である田村繁幸さんは、製靴メーカーに勤務していた30代の頃、イタリアはパルマにある靴工房で革靴づくりの本質を学んだ。
「イタリアの革靴はもちろんファッション性にも優れているのですが、それ以上に履き心地を重視しているのが印象的でした。これやったらイタリアの靴づくりの本質を勉強せないかんということで、帰国後も定期的に工房を訪れ、徹底的に技術を仕込んでもらいました」
独立を果たしたのは1990年、田村さんが52歳のときだった。当初は神戸を拠点としたが、イタリアの工房と同様に風光明媚な街でものづくりがしたいという思いが募り、1993年に佐賀へ移転。「靴工房JUMBO(くつこうぼうジャンボ)」という直販のショップも併設オープンした。
現在も田村さんは原点を忘れず、メーカーのテーマである「足に優しく、人に優しい」ものづくりを実践している。2015年に田村さんから社長を引き継いだ安藤真弓さんによると、同社の靴づくりが劇的に変化したのは、ショップをオープンしてからだという。
「本店以外にも九州を中心に10店以上のショップを展開しているのですが、対面販売を通じてお客様のニーズをしっかり把握できるようになりました。足の形は個々でまったく異なるので、ご要望に応じた靴づくりをするよう心がけています」

2足の形に合わせたプチオーダーにも対応

それではここで、長年の努力の集大成ともいえる靴を紹介したい。
ティックワールドの顔ともいえるのが、20年前に誕生して累計販売数5万足を達成した「Evolution(エボリューション)」シリーズ。ソフトな一枚革を使用し、足を包み込むような履き心地を実現。靴紐がゴムのリボンなので足にフィットしやすく、着脱もスムーズ。こちらはブーツタイプも人気だ。
もう一点注目してほしいのが、2018年の春にデビューした革素材のスニーカー。靴紐にもテープを巻いた革を使用している本格派でありながら、日常的に履けるよう随所に工夫が凝らされている。大人の女性に似合うカジュアルなデザインも魅力的である。
ほかにも種類はたくさんあるが、どれも熟練の職人が手をかけているだけあり、履き心地もフォルムの美しさも抜群。仕上げに焦げ目をつけてヴィンテージ感を出すのも特徴で、田村さんは「革の味わいを最大限に引き出すのが私たちの仕事です」と、語ってくれた。
もちろん、健康に良い靴づくりという理念も忘れない。外反母趾の方から注文があれば、特注のソフト革を使用して足になじみやすくする。巻き爪や甲の高さに悩む人の靴は、“乗せ甲”と呼ばれる方法で革を補い、接触時の衝撃をやわらげる。踵が脱げやすい足の形をしている方のためには、靴にベルトを取り付けることも可能だ。

3店舗、催事、ネットで顧客を獲得

これらの靴をつくる際の革は、兵庫県姫路市のタンナー「三昌」から仕入れている。安藤さんは、三昌について「色にしても味わいにしても、うちの細かいオーダーに応じてくれるのは三昌さんだけだと思います」と、抜群の信頼を寄せている。
また、同社のショップでは三昌の革も販売。安藤さんによると、「三昌さんのギャラリーにうちの靴を置いてもらっているので、同じことをうちのショップでもやらせていただいています」とのこと。今後もこのコラボレーションには力を入れていく予定だ。
さらに安藤さんは、より多くの人にメーカーの存在を知ってもらうためには、「ショップと催事、ネット販売に力を注ぐことが必要」と考えている。
「新たな出会いを求めて、チャンスがあればどんどん遠方にも出向きたいです。催事で一度履いていただければサイズ感などもわかっていただけますので、二度目以降はネットでも買っていただける。最近では、『〇〇に住んでいるのですが近場に来ることはありませんか』というお問い合わせも増えているので、ますます頑張りたいと思います」
そんな安藤さんを見て、田村さんは「彼女だったらみんながついていく」と目を細める。安藤さんは、「体力勝負で先頭を走っていくしかないです」と、少々照れくさそうに笑顔を見せた。

2018/12/21 公開
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