素材から作りまでメイドインジャパン。
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日本の皮革製品メーカーMaker

ベテランと若手の協業で新たな価値を生み出す
有限会社 清川商店(東京)

1下町の工房で生まれるレザープロダクト

観光客でにぎわう浅草から東に進み、隅田川に架かる吾妻橋を渡ればそこは墨田区吾妻橋。ビルの隙間から東京スカイツリーを仰ぎ見ることができる、情緒あふれる下町である。
『清川商店』は、そんな街に工房を構える皮革製品メーカー。1960年の創業以来、バッグをメインに製造を行ってきた。先代を父に持つ松村浩美さん、その夫である由美さんが中心となり、スタッフ一丸となって仕事に打ち込んでいる。
「もともと、この地域のメーカーはどこも百貨店問屋さんと取引する商売をしていました。その中でもうちは、レディースのフォーマルでカチッとしたハンドバッグを主力製品として生産しています」(由美さん)
現在は、OEMの受注を請け負いつつ、自社ブランドも展開。ビジネスユースを対象に使い心地の良さを追求した「azzuni(アッズーニ)」と、普段使いを対象としたさりげない可愛らしさが魅力の「chrim(クリム)」を展開している。

2バッグそのものの強度を保ちつつ軽量化

『清川商店』におけるものづくりは、ベテランの職人による熟練の技術と、若手職人による瑞々しい感性の融合によってなされている。
「専属のデザイナーがいるわけではないので、基本的にはすべての工程を我々で担っています。何かをつくるときは、まずは革素材をじっくり見て、それぞれの革に合ったデザインや機能性を落とし込んだうえで制作に入ります」
仕事をする上で常に心掛けているのは、革の良さを活かしたものづくり。「芯材を使わずに強度が保てる革を使い、できるだけ軽くする」のもポイント。加えて、長年にわたってユーザーの生活に寄り添えるようなアイテムを意識している。そう言われて一つひとつの製品を眺めれば、なるほど普遍性を感じさせるものが多い。ちなみに、使用している革は牛が7割で、ほかにゴートやピッグスキンも用いる。
また、2010年12月には工房の近くにショップもオープン。同社のプロダクトの手触りや重さなどを確かめたうえで買い物ができるようになり、好評を得ている。

3ナチュラルな風合いの「RUSSETY」に魅せられて

同じ墨田区にある『山口産業』の山口明宏さんとは、「革のまちすみだ」の活動を通して出会った。由美さんは、山口さんがなめしたピッグスキンをとても気に入っている。
「全体的に良質な革ですが、一番好きなポイントはナチュラルな色合いです。手触りも軽やかだし、使いこなしていくとさらに味が出ます」
このピッグスキンを使った製品は、トートバッグのほかにポーチなどもそろえる。ちなみに、小物類は「余ったハギレを有効活用したものです」。革を無駄なく使いきるという姿勢も、山口さんに通じるものがある。
これらの製品にはジャパン・レザー・プライド・タグが付いているが、由美さん自身も「安くて質の良い日本の革に生き残ってほしい」という思いが強くあり、期待を込めている。
「このタグで日本の革の良さを伝えていただくのと同時に、私たちもメーカーとして次世代にものづくりを継承していかなければいけません。現在は外部に発注している仕事もありますが、将来的には社内生産がメインになると思うので、今から環境を整備して若手を育てていきたいと思います」

2018/3/13 公開
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