日本の皮革製品メーカーMaker

今までにないユニークな製品で驚きと喜びを与えたい
有限会社 ミヤ・レザークラフト（東京都墨田区）

アンチックレザーが映える各種プロダクト。

薄型財布の人気のヒミツは縦型収納のカードポケット

型抜きをする嶋﨑直也さん。若手職人も着々と育っている。

東京都墨田区に工房を構える有限会社 ミヤ・レザークラフト。創業は1959年で、50年以上の歴史があるメーカーだ。現在は、財布をはじめとする革小物類を主力商品としている。

同社は山形に自社工場を持っており、レディースもののプロダクトを中心に生産している。一方、メンズ向けの製品に関しては、熟練の技を持つ職人に仕事を発注している。近年は、墨田区の工房においても若手職人が順調に育っており、ものづくりに取り組む体制が非常に充実している。

同社のものづくりの根幹には、先例のないユニークなプロダクトをつくりたいという思いがある。

「ものづくりをするうえでは、今の世の中にないものをつくり、驚きと喜びを感じてほしいという思いがモチベーションになっています。もちろん、機能性も重視しており、便利で使いやすい製品をつくりたいという思いもあります」

そう語るのは、宮一之さん。過去になかった製品をつくり、世の中にその価値を問うことに喜びを感じている。

侘び寂びを感じさせる墨（右）と柿渋をモチーフにした革を使用。

代表例となるのが、他社と共同開発し、実用新案を取得したブランドの二つ折り薄型財布だ。この財布の最大の魅力は、カードポケットが縦型収納タイプであること。並列収納の財布と比べ、カードを多く収納しても財布が分厚くならず、ヒップポケットに入れてもスマートなシルエットを崩すことがない。

この画期的な収納方法を応用して別種の財布を製造するにあたり、さまざまな革を使ってきた同社。中でもめずらしいのが、「墨」「柿渋」といった和のテイストを感じさせる革だ。この革を選んだ理由について、「ベースとなるカーフの質感と、侘び寂びを感じる日本的な仕上げの組み合わせに惹かれました」と宮さん。

このように、他所ではなかなかお目にかかれない革を使い、丁寧な仕事で完成させる。職人の技術はもちろん、「糊をはじめとする材料選びからこだわっています」と語る同社の仕事に、妥協の文字はない。

アンチックレザーの高級感を活かしたアイテムがヒット

独創的なプロダクトとして、近年ヒットしたのが「アリエルパールPM-A」というパステルカラーのアンチックレザーを使った革小物だ。アンチックレザーとは、不規則な色ムラのある革を意味する。「アリエルパールPM-A」は、真珠のような光沢と大理石のような質感が魅力で、宮さんはこの革に高級感と上品さを感じ取ったという。

アリエルパールPM-Aを使った人気の二つ折り財布。4色展開。

アンチックレザーを使ったアイテムとして、これまでに、薄型二つ折り財布、L字ファスナー長財布、ラウンドファスナー長財布、ラウンド小銭入れ、名刺入れなどを開発。カラーバリエーションは、桜のようなピンク、青空のようなブルー、大理石のようなグレー、森林のようなグリーンの4色を展開している。宮さんによると、「パステル調の優しい色合いなので、どの色も均等に人気があります。複数のカラーを購入していただくケースも少なくありません」。

開発・製造するにあたっては、細部に至るまで工夫を凝らしている。

製造工程においては、しっかりと検品をすることも大切だ。

「この革はパール加工と撥水加工を施しているので、雨をはじめとするウォーターダメージはもちろん、汚れが付きにくい仕上がりになっています。裏地に関しても濃色のものを採用し、長く使い込むことで付着する汚れが目立たないようにしました。また、アンチックレザーの高級感をより引き立たせるために、ファスナーを使う製品に関しては、入念な磨きのかかったYKKのエクセラというファスナーを採用しています。カードポケットは縦型収納仕様です」

このようなこだわりもあり、ユーザーからの評価は上々だ。

「世の中にない、人を驚かせるような製品をつくりたい」と、宮一之さん。

「革の色合いが美しく汚れが付きにくいという感想のほかに、カードポケットの工夫で製品が膨らまないのが良いと言ってくださる方もいます。長く使っていただいていると、本当にうれしいですね」

同社では、創意工夫に富んだ製品をさらに広くアピールするための方法を思案中だ。

「ECサイトもオープンしたいし、日本革市のような催事にもさらに多く参加したいです。ものづくりに力を入れつつ、よりたくさんの人に製品を手に取っていただけるよう、努力していきたいと思います。先例ない製品づくりを志し、世の中に驚きを与えていきたいですね」