流行に左右されない正統派ジャパンメイド
筒井株式会社(東京)
1デンマークに認められた最上品質
1939年の創業以来、世界のトップブランドのOEMを展開してきた筒井。1999年にはデンマークの誇る童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの直筆サインを冠した初の自社ブランドをスタートし、大きな話題を集めた。
アンデルセン生誕200周年を間近に控えた当時、デンマークでは世界各国のさまざまな分野からプロダクトを募集、最上と認めたもののみに直筆サインの使用を許可した。筒井はバッグブランドとして唯一、ライセンシーの許諾を受けたのだ。
「デンマークでは、品質の良いものを長く使う文化があります。私たちの長年つくり続けてきたバッグがその風習に耐えうると認められたわけですから、うれしかったですね」
そう語るのは、代表取締役の筒井歳雄さん。プロジェクトに携わった工芸品店『北欧の匠』の成川恒太さんも、「丁寧な仕事で仕上げたバッグが、デンマークで求められるものと合致したのでしょう」と、選ばれた理由を話してくれた。
アンデルセンバッグはデンマークで認可を受け、生誕200年が過ぎた今も筒井で生産を継続中。同時にブランド名としても使われている。
2革本来の味わいを伝えるバッグ
アンデルセンバッグには複数のシリーズがある。まずはBREV(ブレウ)から紹介していきたい。
素材には、国内のタンナーと協力して開発した豊かなツヤ感のオイルレザーを使用。革のみでフォルムをつくり、皺などの見せ方も考慮して縫製している定番アイテムだ。
「ブレウは革製品本来の魅力を伝えようという思いから始まったシリーズです。オイルを多く含んでいるので、ちょっとした爪キズがついても手の脂で元に戻ります。使い込むほどにツヤが増していき、革らしい表情に変化していきます」
そう語ってくれた営業の石山祐一郎さんも、BREVのバッグの愛用者。5年間使っているバッグを見せてもらうと、みごとな飴色へと変化している。このバッグをお客さんに見せると、一目で魅力が伝わるという。
続いて取り上げるのは、STRIKKE(ストリッケ)。涼しげで高級感のあるメッシュバッグだ。石山さんいわく、「革紐を一本一本編んだ、手間暇のかかっているバッグです。とてもシンプルなので、シーンを選ばずにご使用いただけます。また、和服とも相性がよくとても好評です」。
筒井では、これらのプロダクトを使用していて補修が必要になった場合、修理対応もしている。石山さんは「バッグを一日でも長く使ってほしいというつくり手の思いです」と、気持ちを込めて話してくれた。
3目に見えぬ細部にもこだわる職人技
トレンドに左右されず、普遍性を追求する筒井。自社も含めた日本のものづくりに関して、どのような印象を抱いているのだろうか。
「目に見えないところにも気を遣うのが特長だと思います。アンデルセンバッグにしても、端折ってしまえばわからない工程を飛ばさず、少しでも長く使えるものに仕上げることを念頭に置いています」
石山さんがそういうと、筒井さんはバッグを指さし、「革の断面部分はコバ塗りと言われる加工をしていますが、厚い2枚の革を張り合わせた断面を見てもすぐにわからないでしょう? このように処理するためには、相応の技術が必要です。目の肥えたお客様は高く評価してくれますね」と、笑顔を見せた。
また、日本の革については、成川さんが「日本の職人さんはまじめできちっとされた方が多いですから、品質が安定していますね。こまやかな表情も魅力です」と、太鼓判を押した。
今後について話を振ると、筒井さんは「いいものをしっかりつくるという基本を忘れずにいたいです」と、表情を引き締める。催事で個人のお客さんを4時間接客した経験のあるほど自社製品に思い入れの深い石山さんは、「アンデルセンバッグをさらに広めていきたいです」と、前向きに語ってくれた。