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革市通信KAWAICHI COLUMN

暮らしに寄り添う日本の革2021年08月20日

欲しいものが革でできていた......ではなく、
革だから欲しい、に昇華させたい

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

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栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?

植物タンニンで鞣す製法こだわり、特徴的な質感や経年を見せる「栃木レザー」の革。2021年、代表に就任したばかりの遅澤敦史さんに日本の革の魅力を伺うため、2020年2月にオープンした「栃木レザーアンテナショップ」を訪ねた。

高品質たるゆえんは、手間暇を惜しまない製造工程

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

高品質な革として国内で広く認知されている栃木レザー。肌に吸い付くようなしっとりした質感、年月とともに表情を変える独特の色と風合い、永く愛用できるタフさなど、評判に違わぬ品質だ。その理由は1937年の創業時より変わらない製造工程にある。

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん
「栃木レザーの皮革製造における一番の特徴は、原皮を石灰乳と呼ぶ液体に浸漬して行う脱毛工程です。石灰漬けは繊細な作業で、手間も時間もかかり場所もとる。そのため現在ではほとんどのタンナーさんが、短時間で脱毛が完了するドラムを使っているんですね。弊社は皮の繊維層を活かすため、石灰槽でじっくりと毛や脂肪を分解・除去して、原皮本来の繊維の強さをキープできているので、丈夫な革に仕上がるんですよ」
栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

革製品の魅力としてまず浮かぶのは、使い込むごとに色艶が増す経年変化だ。この醍醐味を幾年もかけて楽しむには、革そのものの堅牢性は欠かせない。素材本来の繊維層を守りながら加工された革はとても長持ちすると言われている。

「"皮"から"革"へ変化させる鞣しの工程では、ミモザから抽出したタンニン樹液の槽に漬け込みます。繊維層に手を加えていないからこそ、奥までしっかり吸わせられる。だから栃木レザーの革は、裁断面が綺麗なんですよ。コバをちょっと磨くだけでも、艶が出るんです」

栃木レザーの魅力に触れられるコンセプトショップ

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん
「メーカーさんの名前を出さずに、『栃木レザーの財布』として販売するところが出てきたんです。『栃木レザーなら安心安全だ』と感じてくださるのはありがたいこと。でもそうすると、『どこで買えますか?』と直接弊社に問い合わせをいただくことが年々増えてきました。それでいろいろなアイテムを一度に見ていただける場所を作りたいと思い、2020年2月に栃木レザーアンテナショップをオープンしたんです。
『ここで販売している製品は、栃木レザーの革を使用しています』と自信をもって言えますし、お客様に直接革の品質についてお伝えできますから。また、ショップの場所は鞣しの現場からも近く、従業員も気軽に立ち寄れます。自分たちが鞣した革が製品になり、美しいショップに並べられて、これだけの値段がする価値のあるものになっているという事を肌で感じてもらい、それが仕事のモチベーションにつながれば、という思いもありますね」
栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

現在の取り扱いブランド数は約20。今後は栃木レザーのオリジナルブランドも展開予定という。遅澤さんが愛用しているキーケースや、手首にも付けられるハンガーブレスレットも扱っているので、ぜひ手に取ってみてはいかがだろう。

「店内には時間と手間を惜しまずミモザのタンニンを使って鞣した革でなくてはできない製品もあります。例えば、都道府県のパズルです。パズルのピースにある程度厚みを保たせ、裁断して磨いただけなのに、環境の変化に影響を受けにくく、反ったりしないので、時間が経っても各パーツがぴったり合うんです。そんな栃木レザーの特徴を生かした製品なので、個人的にもすごく気に入っています」
栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

栃木レザーアンテナショップがあるのは、栃木駅北口から徒歩1分の場所。外壁には「蔵の街」と呼ばれる栃木市の景観に馴染む木格子を採用し、ベンチにもなる大谷石の石垣が建物の周囲を取り巻いている。店内は紫外線などから製品の品質を守るよう配慮されたつくり。革の端材を用いたディスプレイや、ワークショップなどが行える大きな栃の木のテーブルが配され、革の魅力を伝えるとともに地域に開かれた場づくりを目指したという。

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん
「会社名に『栃木』と入っているにも関わらず、正直これまでは栃木市や栃木県にあまり貢献できていなかったんです。栃木レザーアンテナショップを通じ、もっともっと地域へ貢献していきたいですね。店から工場までは約1kmほどのまっすぐな1本道。いつか通り沿いに工房や展示場所が点在する『栃木レザー街道』をつくりたいという新たな夢もできました」

「革だから欲しい」と感じられる独自のアプローチ

数ある革の中でも栃木レザーを遅澤さんはどのように感じられているのだろうか。

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん
「鮮やかな色合いや綺麗な表面の加工、重さの軽減を追い求めているところもありますが、栃木レザーは永く使える安心感を目指します。鞣す工程で、有害な薬品類は一切使っていません。僕らはナチュラルであることにこだわっているので、革は工業製品でなく牛さんの命であったことも伝えていきたいですね。傷や血管のあとも、自然なものなんですよと」
栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

遅澤さんの革に対する思いは、現在立ち上げ準備を進めているオリジナルブランドのプロダクトに昇華される予定だ。傷や血管のあとは、革である以上あたりまえのもの。鞣してみたものの、ブランドやメーカーのニーズに合わない部分が生まれてしまうのも事実である。

栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん
「メーカーに渡らなかった革を使うことも、タンナーとしての責任だと考えています。傷は自然を感じられる革の良さのひとつだと思っていて、栃木レザーが提案したい思いとも共通しているんですよ。オリジナルブランドでは、『ナチュラルレザーだから欲しい』と感じていただけるようなプロダクトを展開したいですね。『そういえばお財布の素材は革だったな』ではなく、革と認識したうえで選んでいただきたい。そのために革の魅力をきちんと訴求していかなければなりません。革って本当に面白いんです。塩漬けされた原皮が、鞣されて美しい革となり、さまざまな製品として生まれ変わる。そして使っていくうちに自分だけの色艶に育っていく。たとえ同じ革の製品でも、使い手によって色や風合いが異なるんですね。僕は革が歩んでいくこの一連の"変化"が、何より好きなんです」
栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん

栃木レザーアンテナショップ

●場所/栃木県栃木市河合町1-68
●電話/0282-21-7501
●営業時間/11:00~18:00
●定休日/月曜日(祝日の場合は翌営業日)
●URL/https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp/

栃木レザー株式会社

栃木レザー株式会社

品質を保証する“赤タグ”とともに、革好きに広く認知されている栃木レザー。 創業は1937年。終戦から10年が経った1955年よりヌメ革の製造を開始し、第一次ベビーブーム以降に需要が急増した学生鞄用の……

取材・文/大森菜央 
写真/山北茜

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