欲しいものが革でできていた......ではなく、
革だから欲しい、に昇華させたい
栃木レザーアンテナショップ / 栃木レザー株式会社 代表取締役 遅澤敦史さん
身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?
植物タンニンで鞣す製法こだわり、特徴的な質感や経年を見せる「栃木レザー」の革。2021年、代表に就任したばかりの遅澤敦史さんに日本の革の魅力を伺うため、2020年2月にオープンした「栃木レザーアンテナショップ」を訪ねた。
高品質たるゆえんは、手間暇を惜しまない製造工程
高品質な革として国内で広く認知されている栃木レザー。肌に吸い付くようなしっとりした質感、年月とともに表情を変える独特の色と風合い、永く愛用できるタフさなど、評判に違わぬ品質だ。その理由は1937年の創業時より変わらない製造工程にある。
革製品の魅力としてまず浮かぶのは、使い込むごとに色艶が増す経年変化だ。この醍醐味を幾年もかけて楽しむには、革そのものの堅牢性は欠かせない。素材本来の繊維層を守りながら加工された革はとても長持ちすると言われている。
栃木レザーの魅力に触れられるコンセプトショップ
『ここで販売している製品は、栃木レザーの革を使用しています』と自信をもって言えますし、お客様に直接革の品質についてお伝えできますから。また、ショップの場所は鞣しの現場からも近く、従業員も気軽に立ち寄れます。自分たちが鞣した革が製品になり、美しいショップに並べられて、これだけの値段がする価値のあるものになっているという事を肌で感じてもらい、それが仕事のモチベーションにつながれば、という思いもありますね」
現在の取り扱いブランド数は約20。今後は栃木レザーのオリジナルブランドも展開予定という。遅澤さんが愛用しているキーケースや、手首にも付けられるハンガーブレスレットも扱っているので、ぜひ手に取ってみてはいかがだろう。
栃木レザーアンテナショップがあるのは、栃木駅北口から徒歩1分の場所。外壁には「蔵の街」と呼ばれる栃木市の景観に馴染む木格子を採用し、ベンチにもなる大谷石の石垣が建物の周囲を取り巻いている。店内は紫外線などから製品の品質を守るよう配慮されたつくり。革の端材を用いたディスプレイや、ワークショップなどが行える大きな栃の木のテーブルが配され、革の魅力を伝えるとともに地域に開かれた場づくりを目指したという。
「革だから欲しい」と感じられる独自のアプローチ
数ある革の中でも栃木レザーを遅澤さんはどのように感じられているのだろうか。
遅澤さんの革に対する思いは、現在立ち上げ準備を進めているオリジナルブランドのプロダクトに昇華される予定だ。傷や血管のあとは、革である以上あたりまえのもの。鞣してみたものの、ブランドやメーカーのニーズに合わない部分が生まれてしまうのも事実である。
栃木レザーアンテナショップ
●場所/栃木県栃木市河合町1-68
●電話/0282-21-7501
●営業時間/11:00~18:00
●定休日/月曜日(祝日の場合は翌営業日)
●URL/https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp/
栃木レザー株式会社
品質を保証する“赤タグ”とともに、革好きに広く認知されている栃木レザー。 創業は1937年。終戦から10年が経った1955年よりヌメ革の製造を開始し、第一次ベビーブーム以降に需要が急増した学生鞄用の……
取材・文/大森菜央
写真/山北茜