素材から作りまでメイドインジャパン。
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日本のタンナーTanner

昔ながらの方法で、長く使える良質な革を生産
栃木レザー株式会社(栃木県栃木市)

1石灰槽による脱毛とピット槽のタンニンなめしに自信

品質を保証する“赤タグ”とともに、革好きに広く認知されている栃木レザー。
創業は1937年。終戦から10年が経った1955年よりヌメ革の製造を開始し、第一次ベビーブーム以降に需要が急増した学生鞄用の革づくりに注力。その後、官需品やファッション用など、さまざまな用途に用いる革も製造し、その革新性が評判を集めるようになった。
「私たち栃木レザーの革づくりにおける大きな特徴は、石灰槽による脱毛と、ピット槽によるタンニンなめしです。時間はかかりますが、この工程を経ることによって、皮の繊維へのダメージを最小限に抑えることができます」
そう語るのは、製造工程の管理を担当する三柴康孝さん。タンナーにおける石灰漬けとタンニンなめしは、大抵がドラムを使って短時間で行われる。しかし、栃木レザーでは、よそではなかなかお目にかかれない石灰槽とピット槽を完備しており、じっくりと時間をかけて脱毛し、皮を植物タンニンでなめしていく。
そのほかの工程もひと手間かけて丁寧に作業を行うため、堅牢で風合いの美しい革に仕上げることができる。

2メーカーと協力して品質を高める

栃木レザーは、各メーカーから厚い信頼を寄せられている、引く手あまたのタンナーだ。そんな中でも、今回は同社の販売代理店でもある和宏との関係にスポットを当ててみたい。
現在、和宏に卸しているのは、通常よりもなめしに時間をかけた多脂革や、銀面をあまり加工せず風合いを重視したヌメ革がメイン。長年にわたって意見を交換し、その質を向上させてきた。
「他のメーカーさんにも材料として革を供給されているので、どのように差別化をはかるのかを考え、一緒に研究しています。品質の均一性が求められる中で個性を際立たせるために、工程ごとにレシピを要求することもありますよ」
この日、取材に立ちあってくれた和宏の代表取締役を務める山﨑高裕さんは、足繁く栃木レザーに通い、担当者と綿密な打ち合わせを重ねるそう。三柴さんも、山﨑さんの求める革をつくれるよう、常に全力で仕事に向き合っている。
ともに仕事の質を高めあうことのできる両社は、タンナーとメーカーの理想的な関係といえるのではないだろうか。

3設備の刷新と技術の継承を見据える

その仕事ぶりが高く評価されている栃木レザーだが、歴史が長い分、建物や設備の維持にも労力がかかる。
「うちの一番の課題は工場の老朽化です。工場をただ新しくするだけでは、仕上がってくる革の質も変わってしまう。現状の製造方法を維持できる新たな設備を整え、さらに社内のコミュニケーションを円滑に行い、革づくりの技術を継承していくことが大切だと考えています」
三柴さんの言葉にも熱がこもる。幸い、世代交代はうまく進んでいる。現状の主力となる職人の年齢は30~40代。脂の乗りきった職人が、新設の工場で、石灰漬けやタンニンなめし、ハンドセッターや染料・顔料の手吹きといった工程を行える日も、そう遠くないのかもしれない。
また、ジャパン・レザー・プライド・タグに関しては、「さらに認知度が広がれば、有用であると思います」と、期待をかける。和宏の山﨑さんも栃木レザーの海外展開に注目しており、「グローバルな視点でサプライヤーとしてどうなっていくのかが楽しみだし、ともにその地位を築いていく仲間でありたいです」と、未来を見据えて語ってくれた。

2018/11/22 公開
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