子どもにも触り心地の良さが伝わる素上げのソフト革が魅力
有限会社 コンツェリア多田(兵庫県たつの市)

代表取締役社長の小島忠久さん。「素上げのソフト革ならお任せください」
一枚皮のままなめして繊維をまんべんなくほぐす

タイコ場で職人がきびきびと作業をする。
同社の本革で特に評価が高いのが、素上げのソフト革だ。素上げ革とは、革本来の風合いを残すために、製造工程において塗料や特別な加工を施さない革のこと。同社では、素上げに適している皮として、北米産のステアやキップなどを扱っており、なめしから仕上げまでを一貫して行っている。

やわらかさが伝わってくる素上げのソフト革。
そう話すは、代表取締役社長の小島忠久さん。19歳の頃から同社で働き始め、35年以上革づくりに携わってきた大ベテランだ。小島さんは、同社のソフト革の完成度を高めるために、長年にわたって研究を行ってきた。
特に力を入れてきたのが、なめしの方法の確立だ。同社では、なめしの際に半裁(原皮を背割りして二分したもの)ではなく一枚皮(裁断していない状態。丸皮とも呼ぶ)のままドラムでなめしを行っている。その理由について、小島さんは次のように語る。

一枚皮のままなめすことで皮の繊維を余すところなく伸ばす。
しなやかなやわらかさと適度なコシを両立させる。小島さんの言う「ギリギリの狭間のなめし」が、同社の特長のひとつであることは間違いない。
バタ振りやツヤ出しで革をよりやわらかく加工

バタ振りで革をやわらかくほぐす。
その後も、ソフト革をつくるための大切な工程がある。その一つがバタ振りだ。バタ振りとは、専用の機械で革の端をつまみ、上下に振ることで革をさらにやわらかくほぐす工程のこと。バタバタと豪快な音を立てて革に変化を加えていく様子は圧巻だ。

繊細な力加減でフェルトロールをコントロールする。
こうした一つひとつの作業を経て、同社ならではの素上げのソフト革が完成する。さらに細かいオーダーがあれば、ディア調(鹿革のような風合い)やオイルタッチなど、さまざまな仕上げにも対応可能だ。
多田さんは自社の革について、「見るだけではなく、触って感じてほしいですね。そうすれば、素上げのソフト革の良さがきっと伝わるはずです」と、確固たる自信を持っている。

中央がディア調レザー、右側と左側がオイルタッチレザー。
先入観のない子どもにも手触りの良さが伝わる素上げのソフト革は、ものづくりのプロフェッショナルであるメーカー、そして、その先に待ち受けるユーザーをも魅了し続けるだろう。