素材から作りまでメイドインジャパン。
★ 閲覧したアイテム

日本のタンナーTanner

傑出した風合いの厚物革に定評あり
湯浅皮革工業所(兵庫県たつの市)

1独自技術で一定のクオリティを維持

「昔は工場と家がひっついていて、自分もよう仕事を手伝わされたね」
湯浅皮革工業所の2代目として工場で采配を振る湯浅雅善さんは、昔日を振り返り、少し懐かしそうな表情を浮かべた。
会社の設立は1975年。1980年代も半ばに差し掛かる頃、主力として製造する革を厚物へと移行。当時、先代の父親は和歌山まで定期的に足を運び、現地の技術者にタンニンなめしを学んだという。
湯浅さんは大学卒業後、すぐに家業に合流。ベルト用の革の注文が徐々に減少しているため、少しずつクロムでなめす袋物用の割合を増やしているが、一番得意なのはやはり厚物のヌメ革である。
「厚みのある革は、乾燥させるスピードや薬品の浸透具合が大きなポイント。3mm以上になると、そのへんが本当に難しい。あと、厚ければ厚いほど皺が形状記憶されやすいので、伸ばし方なんかも重要やね」
そうは言うものの、これまで蓄積してきたノウハウがあれば、どんな条件でも一定のクオリティに仕上げることはできる。湯浅皮革工業所の厚物革は、取引先から高い評価を受けている。

2ベルト用の革は空打ちでエイジング

そんな中でも、特に深い付き合いをしているのが、東京は元浅草に拠点を構える三竹産業である。
「三竹産業の麻生さんとの付き合いは、もう10年くらいになるのかな。ベルト用の厚くて銀層の動かない革が欲しいということで、当初は20枚単位で何回もサンプルをつくって。希望通りのオイル感と色合いが出たときは嬉しかったね」
三竹産業での作業を経てバックルを付ける手前の段階で、この革はもう一度湯浅さんの元に戻ってくる。重要な後加工を行うためだ。
「いわゆるユーズド加工のようなもので、ベルトの形になった革をタイコで空打ちしてエイジングする。空打ちするんやったらコバは塗らなくてもええようなものやけど、事前に塗ったコバを空打ちで落としていって、最後に少しだけ残すことで独特の風合いに仕上げるのが特徴やね」
また、三竹産業との関係性については「革に対する理解があるから、こうして長く付き合っていける」と、語ってくれた。

3現場に新風を吹き込む若手が欲しい

湯浅さんは、これまで蓄積してきた技術を継承していきたいと思っているが、若手がなかなか入ってこないという現状が目の前に立ちふさがっているという。
「自分のなかでは、選択肢はふたつある。ひとつは、若い子を積極的に採用して今の状態を維持していく方向。もうひとつは、今いるメンバーの年配の人たちが抜けていったら、事業規模を縮小する方向。厚物は重いから、若い子らは仕事を覚えるのが大変かもわからんけどね」
いずれの道へ歩み出すにせよ、自分たちの製造する革には自信がある。ここでジャパン・レザー・プライド・タグについて話を振ると、好意的に受け止めていることがわかった。
「JLPタグはいいものやと思う。だって、できてからすぐに申請したからね。さらに広めるためには、たとえば揖保乃糸の三神みたいに、上位ランクをつくったりしたら面白いかもしれないね。そこに向かってみんなが技術を磨いていけば、業界の底上げにつながると思う」
安定性のある日本の革をより広めていきたいという湯浅さんの意思は、揺るぎないものがある。

2018/12/14 公開
このページをSNSでシェア!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE