素材から作りまでメイドインジャパン。
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日本のタンナーTanner

メイド・イン・ジャパンの良質なレザーで世界へ
株式会社 キタヤ(兵庫県たつの市)

1一年を通して均一なクオリティを維持

2020年で創業から半世紀を迎えるキタヤ。当初は工業用手袋に使う床革を主力としていたが、先代が原皮の仕入れ先を確保した後に、本革の製造もスタート。1980年代に入ると、袋物用の本革を問屋へ卸すようになった。
2代目の吉田健男さんは、20年前に同社へ入社。幼少時代から遊び場にしていた勝手知ったる工場で革づくりに取り組み、2014年には先代から社業を引き継ぎ代表取締役に就任。現在も、バッグ用のレザーをメインに製造を行っている。
「工程においては、品質を安定させることを重視しています。原皮の良し悪しは時期によって多少差が出てくるのですが、一年を通して均一なクオリティにするために、なめしをしっかりコントロールしています」
同社で生産された革は基本的に問屋へ卸すのみで、これまでメーカーと直接取引はしてこなかった。しかし最近では、一部のメーカーに革を委託し、また、ホームページでは小ロットの販売にも対応している。
「やっぱり、メーカーさんやクラフトマンの方たちにも、自分たちの存在を知ってもらいたいですから。手応えはまだ実感できていませんが、焦らず地道に努力を続けているところです」

2メーカーのリクエストに応じた革づくり

さまざまなメーカーとの交流があるなかで、とりわけ深い関係を築いているのが東京に工房を構える中澤鞄だ。現在は、ソフトレザー1種、スムースレザー1種、型押し2種の計4種類を、問屋を介して卸している。
「中澤さんは、徹底的なお客様視点で製品をつくられているメーカー。より軽くて、型崩れも色落ちもせず、キズのつきにくい革を求められます。すべての要求を満たすために、できる限りの対応をしています」
たとえば、軽さを出すなら革の繊維をほぐすバタ振りは欠かせないし、漉きを薄くしてふくらみを持たせることも重要だ。染色の際は、ターゲットの年齢層を考慮して落ち着いた発色に仕上げている。また、新しい薬品を使ったなめしにも挑戦しており、常に品質の向上に努めているという。
「中澤さんからは、問屋さんを通じて『こういう革にトライしてほしい』というオーダーを受けるのですが、その内容を聞くと、新しい領域に踏み込んでいきたいのだろうな、という思いが伝わってきますね」
長年のパートナーである中澤鞄とは、お互いに高めあう関係性。強い絆で結ばれているようだ。

3皮革業界全体を盛り上げるために尽力

日本の皮革業界の活性化を目指している吉田さんは、近年、国内の原皮をメインに仕入れを行っている。
「やっぱり、国内の原皮屋さんもタンナー同様に苦戦を強いられているところが多いので、気持ちの面で支え合い、助け合っていきたいですね。日本の原皮は、銀面の繊細さにおいてはトップクラスですから、タンナーの僕たちがよりよい革に仕上げていければと思っています」
もちろん、ものづくりだけではなく周知にも力を注がねばならない。吉田さんは、まずは国内において、皮革産業が盛んな地域としてたつのや姫路の知名度向上を目指し、さらには世界にジャパン・レザーをアピールする必要があると考えている。
その一環として、今後、ジャパン・レザー・プライド・タグの申請も行うつもりだと話してくれた。
「業界全体がトーンダウンしているけど、ここで諦めず、良質なジャパン・レザーをつくって、世界に打って出たいです。親父からも、売上が落ちているときこそ高い望みを持てと言われてきましたからね。夢物語を語るなら、生産量を今の10倍にしたいです」
逆境に立たされても弱気にならず、力強く目標を語ってくれた吉田さん。その視線の先には、日本の皮革業界の明るい未来を見据えているようだった。

2019/8/27 公開
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