素材から作りまでメイドインジャパン。
★ 閲覧したアイテム

日本の皮革製品メーカーMaker

目指すはどこにもないオンリーワンのバッグ
有限会社 中澤(東京)

1軽くて機能的なレディースバッグが好評

中澤鞄の創業は1928年。当初は合成皮革や帆布などの素材を使って袋物を生産していたが、数年後には本革を使ったメンズバッグの製造にシフト。戦争が終わって高度経済成長期に突入すると、皮革製品の需要がさらに増加したため、大量生産のできる態勢を整えて作業の合理化を図った。
2代目の中澤恒夫さんが同社に入社したのは、1970年代初頭。日本が好景気に沸いている時代だった。そこからしばらくは社業も順風満帆だったが、1990年代後半になると徐々に翳りが見え始める。大量生産・大量消費の時代が終焉を迎え、個性の光る製品が求められるようになった。
「当社は長らくメンズバッグをメインとしていましたが、時代のニーズに応じ、2000年頃を境にレディースを主力とするようになりました。メンズバッグの職人がつくるレディースバッグということで、ファッション性がありながらもしっかりしたつくりを自負しています」
外側に縫い目が見える革を貼り合わせてつくったレディースバッグは、堅牢ながらも軽さがあって使いやすいと評判。このような評価を得られるのは、どんな作業も丁寧に行う職人の技術があってこそ。丹念な仕事が中澤鞄を支えている。

2痒い所に手が届くカラー&サイズ展開

レディースバッグのブランドを立ち上げるにあたり、核となるアイデアを考案したのが専務の中澤妙子さん。機能性やデザインといったベースの部分に加え、一つひとつのバッグにユニークな名前を付け、特典CDに収録するオリジナルソングも制作。ちなみに、妙子さんは全曲の作詞を担当している。
さまざまなバッグがある中でも、ロングセラーの一つとして挙げられるのが、「渚のパイナ・プリンセス」だ。ソフトレザーを使ったやわらかなバッグは、曲線のフォルムが美しく、ファッション性に優れている。ある程度の容量を収納しても型崩れしないのも特徴である。
また、キャラクターバッグと称し、犬、車、電話、スイカ、ペンギンなどを模したユニークなバッグも製造。催事などで並べると、お客さんの興味を引き付けるのにも役立つという。これらのアイテムは、対面販売で接したお客さんの声を反映して開発している。
「催事などで売り場に立っていると、お客様に望まれているものがよくわかります。『もう一つポケットが欲しい』、『もっと軽ければ買いたい』といったリクエストは、社内に持ち帰って製造に生かしています」
そう語るのは、製造部の佐々木智裕さん。多様なニーズに応じてサイズやカラーの種類を増やしているため、同じバッグを色違いでコレクションするファンもいる。

3唯一無二の革を使い、ユーザーの求める製品を

これらのバッグをつくる際には、兵庫県たつの市に拠点を構えるタンナー「キタヤ」の革を使用。味のあるレザーが、製品の魅力をより向上させている。
「キタヤさんの革は、風合いが抜群です。あとは、発色もいいですね。うちでは2種類の革を使わせてもらっていますが、ソフト革なら10色、型押し革なら8色と、カラーの種類が豊富なのもありがたいです。今後も、新しい色にどんどん挑戦してほしいですね」
恒夫さんは、「オンリーワンの品質であるキタヤさんの革を使い、オンリーワンの製品をつくりたい」と、目指すべき方向性を語ってくれた。この意見には佐々木さんも同調している。
「個性的で面白い製品を提案すれば、お客様は反応してくれます。どんどん新しいものをつくって、インターネットにアップして、広く周知していきたいです。ファスナーの色のみを変えるなどのこまかい要求にも応じたいし、最終的にはフルオーダー、セミオーダーでバッグを製造できるようになれば理想的ですね」
佐々木さんの話を受け、恒夫さんは「今後も多品種小ロットの方向性は変えず、山のような数をつくるしかないね。その経験が自信になるから」と笑う。妙子さんも「遊び心のある製品をつくって、若い世代にも皮革製品に親しんでもらえれば」と意欲的だ。
中澤鞄は歴史に胡坐をかかず、常に未来を見据えているようである。

2019/8/27 公開
このページをSNSでシェア!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE