真面目な気質と繊細な仕事で勝負
大昌工房(兵庫)
1趣味のものづくりが工房に
大昌工房は、タンナーの大昌が運営する自社工房。革をなめす工場と同じ敷地内にあり、革づくりをしている職人たちの傍らで、若手を中心としたメンバーがものづくりを行っている。
この工房の母体を立ち上げたのは、大昌の2代目である大垣昌義さん。昌義さんはタンナーの仕事をしながらレザークラフトの教室に通い、ものづくりの技術を習得。ミシンなどの道具を一通りそろえ、工場の片隅でコツコツと革製品をつくるようになった。
以後、バッグや革小物などを徐々に製品化。現在はOEMも請け負っており、工房は常にフル稼働。3代目のこどもである早苗さんや昌輝さんらがクラフトマンとして活躍している。趣味が高じてスタートした工房だったが、大きな飛躍を遂げたといえる。
2自社タンナーの在庫を無駄なく使う
「タンナーをやっていると、どうしても在庫になってしまう革があります。その革を使って製品をつくるので、革を無駄にせずに有効活用できます」
同社の柳田径哉さんは、タンナーが自社で工房を持っていることの利点をこう語る。無駄なく革を使いきるには、ぴったりのスタイルだ。
また、タンナーには革を知りつくしたプロフェッショナルが常にいる。革をどのように扱えばいいのかは、彼らに聞けばすぐにわかる。工房の職人のなかにはタンナーの仕事を兼ねているメンバーもおり、革の扱いについての理解度は深い。
「今後の課題としては、工房からタンナーヘのフィードバックです。『こういうバッグをつくりたいから質感をもっとこうしてほしい』とか、『引き裂きに対する強度が弱いから改善できないか』といった意見が今以上に積極的に出るようになれば、さらにいい製品並びに、もう一段質の高い革素材がつくれるようになると思います」
3JLPタグで国外にもアピールしたい
今現在人気のプロダクトは、蝋を塗って仕上げた馬革を使うトートバッグ。表面に濃淡のある独特の風合いが魅力で、受注生産ながら高い人気を誇っている。OEMで生産しているiPhoneケースも、非常に好評だという。
ここで、柳田さんに日本のものづくりの魅力を聞いてみた。
「燕三条の金属加工品が世界的に評価されているのは、長年の伝統から心技ともに磨き上げられた、職人の繊細さがあるからだと思っています。革製品づくりも同じで、そのようなこまやかさと真面目な気質は手掛けるものに表れると思いますね」
同社の製品には、日本タンナーズ協会が定めるジャパン・レザー・プライド・タグが付く。柳田さんは、自社でつくる革素材とプロダクトの両方にこのタグを付け、国外にも広くアピールしていきたいと考えている。