素材から作りまでメイドインジャパン。
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日本の皮革製品メーカーMaker

一途な思いを革に託す老舗鞄メーカー
株式会社 猪瀬(東京)

1職人の意欲を高めるオリジナルブランド

木の床。傾斜の急な階段。天井から吊り下げられた蛍光灯。使い込まれたクラシックな機器。古き良き時代の工房の空気感をそのまま引き継ぐ猪瀬では、和気あいあいとした雰囲気のなかでものづくりが行われている。
創業は1952年。長年OEMをメインとしていたが、2004年になると3代目の猪瀬繁晴さんが中心となり、オリジナルブランドFlathority(フラソリティ)を立ち上げた。
「OEMの仕事を担当する若手の職人は最初のうち、簡単な作業しかさせてもらえません。そこで、若い職人のモチベーションの向上を目的に、自社製品の開発を始めました。当初はここまで続くと思っていませんでしたね」
猪瀬さんいわく、「うちの職人たちの仕事は、バカがつくほど丁寧」。その技術は、半世紀以上在籍するベテランから若手へと継承され、日に日にプロダクトの価値を高めている。
営業の河本さんによると、Flathorityのアイテムに共通する魅力は「アピールポイントの多さ」。シンプルで飽きのこないデザイン、革素材の魅力の引き出し方、使い手のことを考え抜いた機能性など、多くの魅力が詰まっているという。

2定番は立体裁断のコーカサスリュック

Flathorityの定番といえば、立体裁断で独自の風合いを醸すコーカサスリュックだ。ユーザーの声を反映してマイナーチェンジを繰り返し、年を追うごとに使い勝手が良くなっている。
「革はコンツェリア多田さんで製造されたキップを使っています。柔らかな手触りで非常に軽く、大きめのLサイズでも総重量は1キロを切ります。大きくカーブしているベルトはフィッティングが良く、肩への負荷は確実に軽減されます」
このようなリュックやショルダートートといった現在主流のバッグのほかに、ブリーフケースやボストンバッグといったオールドスクールなアイテムもラインナップに加わる。
「百貨店さんでもあまり目にしなくなりましたが、今も一定の需要があります。金具、ファスナー、裏地にも上質の素材を使っている、どこに出しても恥ずかしくないバッグです」
また、主力であるバッグ以外に、財布やステーショナリーなどの小物にも注力。水染めのコードバンを使った一連のアイテムが人気だ。
「長野の宮内産業さんでなめした水染めの革は独特の透明感が美しく、使い込むうちに光沢感が増していきます」 プロダクトを説明する河本さんの口調はじつに流暢。自社製品にとことん惚れ込んでいるようだ。

3丁寧で几帳面な日本のものづくり

業界内外より高く評価される老舗鞄メーカーの3代目は、自社のみでなく日本のものづくりには共通する特色があると話す。
「海外と比べると、日本の職人さんたちの仕事は本当に几帳面で丁寧。革製品に限らず、工業製品や手工芸品も、きちっとつくる文化があるから世界的に評価されているのだと思います」
猪瀬さんは、日本でなめした天然皮革にも同様の思いを抱いている。
「ものづくりと同じで、職人さんがすごくまじめという印象があります。僕らの要望に対して真摯に取り組んでいただけるし、とてもきれいな革に仕上げてくれる。個体差もブレも少なく、安定感がありますね。海外の革には独特の色気がありますけど、日本の革には端正な魅力があると思います」
最高の素材で最高の鞄をつくり続ける猪瀬。猪瀬さんは「オリジナルブランドをさらに広め、職人さんに仕事を安定供給したいです」と、目標を語ってくれた。
2020年、会長の猪瀬昇一さんが鞄業界への貢献を評価されて旭日小綬章を受章するといううれしいニュースが飛び込んできた。伝統を絶やさぬまま、猪瀬はさらなる躍進を目指す。

2020/9/23 公開
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