世界が注目する、佐賀発の椅子づくり
有限会社 平田椅子製作所(佐賀県佐賀市)
職人の手仕事と独創的なデザインで、世界へ発信
佐賀市諸富町に工場を構える椅子専門メーカー、平田椅子製作所。1963年、隣接する家具生産日本一の町・福岡県大川市で創業して以来、60年以上にわたり天然木にこだわり、すべての製品を自社工場で生産してきた。職人の手仕事を大切にした高品質な椅子づくりを軸に、家庭用からホテル向けの特注品まで幅広く展開。2017年には、自社ブランド「ARIAKE(有明)」を立ち上げた。
本社工場に直結したショールーム(左)。
東京・青山にもショールーム「HIRATA CHAIR TOKYO」を構える(右)。
「ちょうどその頃、国内の家具市場が冷え込み始めていて。新たな発信先として、日本の家具の魅力を海外に届けたいと考えたのがきっかけです」
そう語るのは、2026年夏に三代目として事業を継承予定のゼネラルマネージャー、平田祥貴さん。
「2015-2016年に自社ブランドを海外の見本市に出展していましたが、当初はほとんど注目されませんでした。そのとき、隣で出展していた世界的デザイナーのガブリエル・タンと知り合い、新しいブランドを立ち上げるためのワークショップをともに始めることになったのです。それがARIAKEブランドのスタートです」
ARIAKEのワークショップは約1週間行われた。
画像提供:平田椅子製作所
ガブリエル・タン氏のネットワークを通じ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、日本など国内外のデザイナー、アートディレクター、建築家、フォトグラファーが諸富町に集結。朝のラジオ体操から始まり、佐賀の自然や建築、伝統文化、そして平田椅子製作所のものづくりを体感しながら、職人との対話を重ねていくワークショップが行われた。その結果、30点に及ぶ新たなプロダクトが誕生した。
以降、ARIAKEはスウェーデンやデンマーク、イタリアなどで、インスタレーションアートのように世界観を表現した展示を毎年継続。国際的な評価を高め、現在では約15カ国へ輸出されている。そのプロダクトは世界的なラグジュアリーメゾンをはじめ、ザ・リッツ・カールトンなどのホテルプロジェクト、ブルーボトルコーヒーといったカフェプロジェクトにも採用されている。
強度を担保する組み立ては重要な工程。
そのクリエイティブを支えているのが、職人たちの高度な技術だ。曲線の多い椅子づくりには、手仕事が欠かせない。木取りから始まり、なめらかな触感を生む緻密な研磨、シームレスに仕上げる面合わせ、縫製に至るまで、すべての工程で丁寧な仕上げを徹底。一方で、イタリア製の木工用5軸NC加工機など最新設備も導入し、複雑な三次元加工や効率化を適所で取り入れている。
「私たちの企業信念は、椅子を通じて人々の心を豊かにすること。海外での確かな実績を生かし、椅子に座る暮らしが広まってからまだ約60年しか経っていない日本においても、椅子専門メーカーとして新しい文化を創っていきたいと考えています」
椅子の可能性を広げる、高品質なジャパンレザー
レザーは、型紙データに沿って自動で正確に切り出せる機械で裁断。
たとえば、ARIAKEの「Summit Lounge Chair」には、山形のタンナー、ミドリオートレザーによるクロムなめしのソフトスムースレザーを採用。伝統的なスカンジナビア家具職人の椅子に着想を得たデザインに、革ならではのモダンさと力強さを与えている。
「Summit Lounge Chair」
たとえば、ARIAKEの「Summit Lounge Chair」には、山形のタンナー、ミドリオートレザーによるクロムなめしのソフトスムースレザーを採用。伝統的なスカンジナビア家具職人の椅子に着想を得たデザインに、革ならではのモダンさと力強さを与えている。
「ミドリオートレザーさんの革は、自動車のシートにも使われる防水加工革。メンテナンス性に優れ、肌触りもなめらかで高機能な点が、お客様からも好評です。さらに、日本のタンナーさんは密なコミュニケーションが取れるのも大きな魅力。このSummit Lounge ChairのCAMELカラーも、ブランドに寄り添ったオリジナル色として仕上げていただきました」
「Sedai Chair」
同じくARIAKEの「Sedai Chair」では、姫路のタンナー・山陽の革を使用。青みを帯びた特注ブラックが、椅子に重厚な存在感をもたらしている。
「伝統的なスリングチェアの構造をベースに、世代を超えて愛される椅子を目指しました。張り込み部分と座面は同じヌメ革ですが、座り心地を追求するため、座面の厚みや柔らかさについては何度も調整を重ねています。使い込むほどに身体に馴染み、エイジングによる風合いの変化も楽しめるのが革の魅力ですね」
平田椅子製作所では、ARIAKEのほかにも、デンマークと日本のデザインを融合し「家具の原点回帰」を掲げる「Hirata Gen Collection」、日本の暮らしに寄り添う定番ライン「HIRATA CHAIR COLLECTION」の、計3ブランドを展開している。
「新しいレザー表現も取り入れていきたいです」と平田さん。
近年ではデンマークの杖ブランドVilhelm Hertzとコラボレーションもスタート。椅子づくりの際に出る端材を使ったプロダクトを製作している。
「我々は椅子という道具を通じて人を支えるものづくりをしてきました。Vilhelm Hertz とのコラボレーションも“Design for Care”をテーマに、心・身体・環境の3つの視点から生まれた心地の良いプロダクトをテーマにしたプロジェクトです。このように、今後は家具業界にとどまらず、異業種メーカーとのコラボレーションやコ・クリエイションにも積極的に取り組み、これまでにない椅子文化を発信していきたい。その中で、レザーにはまだまだ大きな可能性があると感じています」。









































