日々の暮らしに寄り添うレザープロダクト
株式会社 和宏(東京)
1製造の全工程を社内の職人が担当
1965年に創業し、官需品を主力として製造してきた和宏。2005年には、先代から家業を引き継いだ山﨑高裕さんが2代目に就任。同年7月、栃木レザーの販売代理店になり、また9月には、自社ブランド「minca(ミンカ)」のアイテムなどを扱うレザーショップをオープンした。
「『minca』という名前は、『みんな革』という言葉が由来。日々の生活に関わるアイテムを、すべて革でつくってみようという考えからスタートしました。すべてのプロダクトにおいて、栃木レザーの革を使用しています」
そう語るのは、mincaの立ち上げメンバーである尾花和哉さん。官需品の制作で習得した技術を生かし、外部のデザイナーやクリエイターに頼らず、すべての工程を社内のスタッフで賄ってきた。
mincaの強みは、ブランドに携わるメンバー全員がレザーにとことん魅せられているところだ。個々が使いたいものをつくり、日々の生活で愛用し、必要な改良を行う。この積み重ねで、プロダクトを進化させている。
2革を育てる喜びが感じられる仕上がり
「毎日に寄り添う革」をテーマとしているminca。ここで、人気のプロダクトについて解説したい。
オイルドシュリンクレザーを用いているショルダーバッグは、個々にシボ感が異なる一点もの。ショルダーストラップには独自に企画したハーネスレザーを用いて丈夫さとフィット感を高めたり、開閉のしやすさを考慮してダブルファスナーを使用したりと、じつに機能性が高い。
シンプルなデザインのトートバッグは、革の味わいを楽しんでもらうために裏地不使用。ハンドル部分に革芯を入れているので、手になじみが良いのはもちろん、劣化して割れる心配もないという。
ステーショナリーのHL seriesは、すべてハーネスレザーを使用。中でもとくに注目したいのは、ペンケース。贅沢な一枚革仕立てで、折り目に溝を彫って組み立てをしている。こちらはハンドステッチのため、オーダー生産だ。
メーカーとしての将来的な展望について尾花さんに伺うと、「キャッシュレス化が進む時代なので、カードケースやウォレット類の制作により力を注いでいく予定です」と、力強く語ってくれた。
3タンナーの思いを汲んだ妥協しないものづくり
mincaというブランド、そして和宏というメーカーにとって、昔ながらの製造方法でつくられる栃木レザーの革は、欠かせない存在である。
「革そのものの表情が楽しめるプロダクトを制作するためには、栃木レザーの革が最適です。言ってしまえば好みなのですが、私たちが栃木レザーの協力により選び抜いた革の経年変化は、ほかでは感じられない魅力があります」
そんな栃木レザーの革には、品質を保証する赤タグと並び、ジャパン・レザー・プライド・タグが付いている。尾花さんは、このタグに込められたタンナーの思いをしっかりと受け止めている。
「JLPタグは、妥協しないものづくりの証だと思います。革を知り抜いた方たちがつくっているメイド・イン・ジャパンの素材だから、安心して使えます。その分、私たちもこの革を無駄にせず、いいものをつくろうという気持ちになりますね」