素材から作りまでメイドインジャパン。
★ 閲覧したアイテム

日本の皮革製品メーカーMaker

目に見えぬ細部まで妥協しないものづくりが魅力
株式会社 きくひろ(東京都葛飾区)

代表の菊池さん。手に持っているのは人気のトートバッグ。

国内のタンナーと相談しながら理想の革素材を追求

1970年の創業以来、レディース向けのフォーマルバッグを中心に製造してきた株式会社 きくひろ。2009年にオリジナルブランド「ペトラルカ(Petrarca)」を始動し、女性の生活を彩る洗練されたバッグを次々に生み出してきた。代表取締役の菊池弘太さんは、ブランドを立ち上げた理由について次のように語る。

「先代の父親の時代はOEM中心でしたが、せっかく丁寧にものづくりをしているのだから、自社ブランドをつくってアピールしていきたいという思いがありました。当時から現在に至るまでコンセプトは変わらず、働く女性をメインターゲットに、機能的で長く使っていただけるバッグづくりを心がけています」

コバ磨き。細心の注意を払いつつ、一つひとつの作業を丁寧に行っている。

長年にわたりOEM生産を続けてきた中で、ノウハウを蓄積してきた同社。「見栄え良くきれいにつくるのは当たり前」という世界で磨かれた技術を活かし、細部まで妥協のないバッグづくりを行っている。

「たとえば、耐久性を付与するためにはどのように芯材を使うのか、あるいは、どのような縫い方をするのか。そういった、お客様の目に見えない部分にこだわっているのは確かです。リピーターになっていただくお客様からは、軽さや丈夫さを評価していただいています」

ミシン縫い。強度と耐久性を付与するため縫い方を追求している。

これらのプロダクトを製造するにあたり、近年は日本製の本革を使うことが増えているという。

「国内のタンナーさんであれば、相談しながら新しい革をつくれます。コミュニケーションをとってオリジナルの革を使うことで、イメージしていた製品に近づけることができるので、そこが大きなメリットですね」

セミオーダー対応でつくる世界にひとつだけのバッグ

選りすぐりのジャパンレザーを使っているプロダクトの中でも、とくに人気のあるものを紹介したい。

看板アイテムである「MONAハンド」。

キューブ型の「MONAハンド」は、ふんわりしたシルエットがじつにキュート。コーディネイトのアクセントになるハンドバッグだ。丸みのある形状で体なじみが良いのも特徴だが、菊池さんはその理由について、「デザインを手掛けるパタンナーがアパレル出身で、洋服のタックを取る手法で縫製しているからです」と、説明してくれた。

MONAハンドに使用している革はさまざま。兵庫県たつの市に工場を構える中嶋皮革工業所のシュリンクレザーは、「ふっくら、もっちりした質感が『MONAハンド』に合っています」。

ちなみに、中嶋皮革工業所のシュリンクレザーは、同社のビジネスバッグにも使っている。「もともとユニセックス用につくり始めたのですが、フォルムのやさしい印象もあり、女性に人気があります」と、菊池さん。エレガントな質感に加え、ビジネス小物を整理できるように工夫した内装もポイントだ。

目に見えない部分に力を入れたトートバッグ。

トートバッグには、兵庫県たつの市を拠点とする橋本仁製革所のオイルレザーや、兵庫県姫路市のタンナーである協伸株式会社のソフトスムースを使用。こちらも見えない部分に力を入れており、菊池さんが自ら試用し、ファスナーポケットの位置や大きさ、全体的なサイズ感を微調整して、現在の形状にたどりついたという。

菊池さんはお客様の声を大切にしており、ポップアップイベントなどで話した来訪者の声を随時製品にフィードバックしている。その一環として導入しているのがセミオーダーだ。

「ショルダーストラップの取り付けやハンドルの長さの調節など、お客様の声にはできる限りお応えしたいと思っています。そうすることで、世界でふたつとない商品をつくっていきたいです」

細かいパーツを下準備する際にも、妥協しないものづくりの精神を反映。

また、より長くバッグを使いたいというユーザーの思いに応えるべく、リペアにも対応している。

「バッグの素材となる革は食肉の副産物ですから、リペアして製品の寿命を延ばすことは、命を大切にすることにもつながるのではないかと思います」

きくひろのものづくりのベースには、信頼に足る理念がある。
2023/7/31 公開
このページをSNSでシェア!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE