ものづくりの価値を高めるファクトリーブランドを展開
合同会社 エイチ(兵庫)
1シンプルで普遍性のあるバッグに定評あり
2013年にスタートしたレザーバッグメーカー、エイチ。オリジナルブランド「ORZO(オルツォ)」を展開するほか、ファッション感度の高い人々が集う神戸のトアウエストに同名のショップ兼工房を構えている。
代表の平岡学さんは、アパレルメーカー勤務時代に職場のミシンを触ったことがきっかけで、バッグづくりの楽しさに目覚めた。
「形やサイズなど含め、『こんなんあったらいいな』という感じで新しいものをつくるのが楽しくて。そのうち自分が手掛けた製品を店舗に来るお客様に販売するようになり、自分のやりたいことをやるために独立して今に至ります」
平岡さんがつくりたいと思ったのは、流行に左右されない普遍性を持ったバッグ。「年齢や性別に関係なく、誰もが長く使い続けられるバッグをつくりたい」という思いを託すのに、革は絶好の素材だった。
「僕にとっての革製品の魅力は、使えば使うほど経年変化で表情が変わってくるところです。僕がオリジナルのバッグをつくるような感覚で、お客様も使い方によってオリジナルのエイジングを楽しめる。そういう意味で、うちでは中嶋皮革工業所のヌメ革をメインに使っています」
2ユーザーの「こんなんあったらいいな」を叶える
普遍性という言葉に表されるとおり、平岡さんのつくるバッグはどれもシンプル。幅広い購買層に受け入れられている。
「パーツを極力少なくするほか、体になじむ曲線的なフォルムを意識しています。革製品はどうしてもカッコいいというイメージになりがちなので、やわらかい雰囲気を意識していますね」
もう一つの特徴が、カスタムオーダーの受注だ。注文側は最初にバッグの型を決め、本体、ハンドル、ステッチのカラーをそれぞれ選ぶ。さらに細かなオーダーをして、短時間でオンリーワンのバッグをつくってもらうことができる。
「僕自身が『こんなんあったらいいな』という発想でバッグづくりを始めたので、お客さんの『こんなんあったらいいな』を叶えたいという思いがあります。お客様の意見を伺い、こちらができることを提案し、可能な限り要望に近づけていきます」
ハンドルの長さや太さを変える、間口にジップを取り付ける、トートバッグにショルダーストラップを付けて2Wayにする――。細部にこだわってつくられたバッグは、使い手の愛着が増すこと請け合いだ。
3催事やポップアップショップで製品をアピール
近年の新たな動きとして注目したいのは、ORZOブランドによるレザーシューズの開発だ。婦人靴メーカーとのコラボレーションにより、各パーツのカスタムカラーオーダーが可能となっている。
さらに、2018年からは新ブランド「nil(ニル)」も展開。ORZOとは一線を画し、軽くソフトな革を使ったバッグをラインナップしている。
プロダクトを広くアピールするためにネットショップも運営しているが、「求めになる前に手に取っていただき品質や雰囲気を確かめてほしいというのが本音です」と平岡さん。
その思いを形にするべく、ポップアップショップの出展や催事への参加にも積極的だ。そこで最後に、『日本革市』に対する印象を伺ってみた。
「シンプルに革を好きなお客様が多く、会話していて楽しいです。バッグのサイズ感などでご意見をいただく機会もあるので、製品づくりに反映させています。今後も機会があれば多く出展したいですし、Webサイトにもっと掲載してほしいですね」