職人が命を吹き込んだ、鼓動が聞こえてくる革靴
株式会社 ハートビート(兵庫)
1時代に左右されない飽きのこないデザインが魅力
ハートビート。直訳すると、鼓動。動物の命にふたたび息を吹き込むことを使命とする皮革製品メーカーに、ふさわしい名前である。
創業は2013年。代表取締役の中井匡志さんはもともと、フタハトという婦人革靴メーカーの営業で、製造現場にも携わっていた。そこで販売にやりがいを感じるようになり、フタハトのファクトリーブランドであるTODAY’Sのプロダクトを扱うハートビートを設立した。
「私自身は、消費者の方に品質の良い靴を届けたいという思いが強いですね。催事で全国各地に行きますけど、翌年、同じ売り場に立ったときに『ここの靴が良かったからまた買いに来ました』と言われるのが一番うれしいです」
中井さんは、販売のほかに靴のデザインも手掛ける。その際には、カジュアルというベースは崩さず、随所にトレンドを取り入れているという。「ただ、結局売れるのは飽きのこないもの。時代に左右されず、お客様に自信を持って勧められるものをつくることが大切です」
製造工程では、裁断から縫製まで手抜きをせず、きめ細やかさを欠かさず。こうして、ごまかしのない靴が誕生する。
2独特のツヤ感がある革「トロピカーナ」を使用
ハートビートでは、スタンダードなモデルから神戸タータンを用いたトラッドマニッシュシューズまで、現行で30~40種類の革靴を販売している。そのうちの大半のプロダクトには、老舗のタンナーであるシンヤ工業所の「トロピカーナ」という名の革が欠かせない。
「TODAY’Sはトラッドカジュアルを得手とするブランドですが、トロピカーナは私たちのつくる靴にうまくマッチしました。皮革業界ではつやつやした革をガラスと呼ぶのですが、トロピカーナはガラスではないのに独特のツヤ感があり、ここに墨を薄く塗ることでさらに深みが出ます。履き皺もやわらかくて、いい味が出ますよ」
現在は婦人靴のみを扱っているが、今後はこのトロピカーナを使った紳士靴の製造も視野に入れている。
「たとえば、日本革市などに出展させていただくと、土日はご夫婦で来られる方が多いんです。でも、うちのラインナップだと、旦那さんから『俺の履ける靴はないんか』と言われてしまう。なので、トロピカーナを使って、男性にも満足していただける靴をつくりたいですね」
3革の持つあたたかみを伝えていきたい
10代の頃には皮革製品になじみがなく、「まさか自分がこんな仕事をするなんて思いもしませんでした」と笑顔を見せる中井さん。現在は、天然皮革を使ったプロダクトの魅力を、より広く伝えていきたいという思いを抱いている。
「自分が扱っているからという贔屓目もあると思うんですけど(笑)、靴にしろ財布にしろ、ほかの素材よりも革の方があたたかみがある気がします。革靴はしっかりケアをすれば、その分だけ自分の足になじみ、味が出てきます。催事では、ケアの仕方も伝えていきたいですね」
また、中井さんはジャパン・レザー・プライド・タグに関しても、前向きに捉えている。
「革製品は国ごとに特色がありますが、材料が日本製であるなら、こまごまとした部分までメンテナンスができるというメリットがあります。催事では日本の製品を欲しがる方が多いので、タグの存在をさらに周知していけば、意味のあるものになると思いますね」
日本人特有の足型を熟知した職人がつくるTODAY’Sの革靴には、黒く存在感のあるJLPタグがよく似合う。