時代に呼応して進化を続ける馬革専門タンナー
株式会社 ニッタ(兵庫県姫路市)
1馬革の魅力はそのファッション性
「1960年代には、姫路の馬革のタンナーは15~16軒ありました。今はその数もだいぶ減って、うちを含めて4、5軒しかありません。そんな現状やから、頑張っていきたいという思いは強いですね」
そう語ってくれたのは、ニッタの2代目である新田常博さん。先代が会社を興したのは、終戦年の1945年。当初は義肢・装具用の革を主力として扱っていたが、少しずつ馬革の割合を増やしていった。新田さんによると、その理由は「馬革の方が面白いから」だという。
「馬革は軽くてやわらかく、ファッション性に優れています。繊維が太くて粗いから、通気性と保湿性が抜群です。だってね、いくら塗装しても、たとえば水を含ませてギュッと絞ったら、ポタポタ水が落ちてきますから。義足に使っても、足に炎症が起こる可能性はまずありません。ファッション用の革として、本当に優れていると思います」
新田さんの考えでは、革づくりは「料理と一緒」。職人が腕によりをかけることで、良質な革へと仕上げていく。
2再現性を重視した革づくりに注力
ニッタでとくにニーズのあるのが、自社開発したハイブリッドという革だ。
「ハイブリッドは、クロムの革にフルタンニンなめしの特性を加えられないかという発想から生まれました。工程としては、なめしたあとに表面のクロムを抜いて、芯の部分にだけ残す。そこにタンニンを加えています。なぜ芯の部分だけクロムを残すのかというと、引き裂きに強くなり、耐熱性も上がるからです」
その努力が実り、過去にはレザーコンテストで姫路市長賞を受賞したことも。この革には多くのメーカーが注目したが、大阪の和泉市に拠点を構えるふく江もその一つである。新田さんは、ふく江が求める新たな革の開発にも力を注いでいる。
「現在は、ふく江さんからのオーダーを受けて、ソフィアという革をつくっています。厚みがあるけれど軽くて、強度も十分です。他社さんも欲しいといってくれています。私は芸術品をつくっているわけではないから、再現性がないと意味がないと思っています。ニーズに合わせて、いい革をつくっていきたいですね」
3研究熱心なタンナーが生き残る
長年にわたって取引先に良質な革を提供し続けてきたニッタ。日本の皮革産業の一端を担うタンナーとして、国内産の革には並々ならぬ思い入れがある。
「イタリアやドイツの革から学ぶべき面は多いですが、総合的な品質は日本が世界一やと思っています。イタリアは、革は色落ちするもんや、というお国柄です。たとえば夏場にイタリアの皮革製品を身につけていると、汗で色落ちすることもある。日本だったらクレームものですよね。私たちはそこをクリアするために、長年努力してきましたから」
そんな日本の革をPRするためにつくられたジャパン・レザー・プライド・タグについては、「この業界を盛り上げるためには必要なものだと思います」と、話してくれた。
「これからは、研究しているところが残っていくと思います。誰が見ても欲しいと思える革をつくれば、やっていけるはずです」と、新田さん。今後も、さらなる品質の向上を目指していくつもりだ。