唯一無二の革を生み出す皮革加工のスペシャリスト
有限会社 大星産業(和歌山県和歌山市)
150種類のオリジナル型と50種のプリントロールを所持
有限会社大星産業は、和歌山の地で30年以上の歴史を持つ加工専門のタンナー。型押し、フィルム加工、エナメル仕上げの技術に独自性があり、イタリアで開催される皮革見本市「リネアペレ」でも高く評価されている。取締役の朝倉譲治さんは、自社の強みについて次のように語る。
「うちは本革の加工に特化したタンナーです。現在、オリジナルの型を150種類、プリントロールを50種類ほど持っていて、それらとフィルム加工や箔貼りを組み合わせ、唯一無二の革をつくることができます」
朝倉さんは技術的なポイントについて、「一度のプレスで革の全面に型を押すことはできないので、つなぎ目をきれいにすることが重要です。経験のある職人は、つなぎ目に加え、型の深さや左右のバランスも考慮して型を押します」と、説明してくれた。
型押しで抜きんでて人気があるのは爬虫類柄だ。この革の場合は、型押しをしたのち、朝倉さんが自ら手作業で頭張りを行う。ここで言う頭張りは、型押しで凸となっているスジの部分に、脱脂綿にしみ込ませた溶液を塗り、光沢を出して立体感を際立たせること。ひと手間を加えることで、革はより味わいを増す。
最終的に必要となる職人の経験値が、同社の革のオリジナリティーにつながっている。
こうすることで、流行柄のグラビアロールをラインナップに加え、トレンドに敏感な取引先のオーダーにも応えることができる。
繊細な手作業でクオリティが決まるエナメル仕上げ
また、小ロットの場合は、手吹きの前段の下塗りを手作業で行う。電車のシートと同じ素材の刷毛を使い、シワやスジができないよう、職人が細心の注意を払いつつ手塗りをしていく。
朝倉さんは、「フィルム加工の場合、どのような接着剤を使うか、どのように革と圧着させるのかが重要です。ここに関しては、うちが試行錯誤の末に生み出した技術といえるでしょう」と、胸を張る。
「近年は、25cm角の革に型押しすることが増えています。このサイズだと、たとえば財布をつくっているメーカーさんであれば、取り都合が良くなりロスが出ないそうです。このように、今後はニーズに応じたサイズの革を提供していくことに力を入れていくつもりです」
どんなサイズの革でも加工できるのは、高度な技術があるから。常に情報収集を怠らず、革づくりの技法をさらなる高みへと押し上げていくスペシャリストたちの表情は、職人としての誇りに満ちている。