日本のタンナーTanner

高品質で地球にやさしいベジタブルタンニンレザーを生産
VL. ナカシマ株式会社（兵庫県たつの市）

タイコ場の職人の合言葉は「革の気持ちになる」

戦後に設立され、2015年にVL.ナカシマ株式会社として新たなスタートを切った同社。VLはVegetable Leatherの略で、その名のとおり、袋物などに使う植物タンニンなめしの本革を主力として扱っている。

タンニンなめしとは、ミモザやチェスナットなどの樹木から抽出したタンニンを使用して皮をなめす製法のこと。紀元前から存在していた手法で、自然素材のみを使用しているので、環境への負荷は比較的少ない。この手法で仕上げた革は堅牢性が高く、プロダクトとして使い込むごとに味わいが増していく。

タンニンなめしをする場合は、ピット製法とドラム製法の2種類があるが、同社が採用しているのはドラム製法。原皮の脱毛や背割りなどの準備工程を済ませた後、4日間タイコと呼ばれるドラムを一日に数回まわし、独自調合のなめし剤を浸透させていく。

タイコの内部にはツメと呼ばれる突起物があり、このツメが革を引っ掛けてタイコの底面へ叩きつけるようにして攪拌する。その後、いくつかの工程を経て、革は仕上げ場へと回される。

地域のサポートを受けて環境に配慮した革づくりを実現

仕上げ場では、スプレー塗装やアイロンがけを行い、オーダーに沿って革を完成させていく。

革素材の魅力を最大限に引き出すため、加工は最小限に。環境に配慮し、たとえば塗装なら、なるべく水性仕上げを採用しているのも特徴だ。

職人たちは、せっかくタンニンなめしの革をつくっているのだから、あまり加工を施さずそのままの風合いを楽しんでほしいと願っている。

長く使えば使うほど味が出て、手にしっくりとなじむタンニンなめし革をたくさんの人に知ってほしいという思いが、現在の塗装方法につながっているようだ。

同時に、環境への配慮も忘れない。2021年9月には、同社で生産する3種の革が「日本エコレザー基準（JES）」の認証を取得。また、かつては繊維の世界的な最新規制に対応する安全基準「エコテックス®」のレザースタンダード部門の認証を受けたこともある。

また、同社が工場を構える兵庫県たつの市には、皮革産業の排水対策として、汚水を処理するための前処理場が設けられている。

このような地域のバックアップがあるからこそ、革づくりに打ち込めるのだろう。

ベジタブルタンニンレザーならでは持ち味を追求しつつ、環境にやさしい革づくりを両立させている同社。

持続可能な企業活動が望まれる現代において、適正なかたちでものづくりをしている。その姿勢が、同社でつくられる本革の価値をさらに高めている。