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革市通信KAWAICHI COLUMN

暮らしに寄り添う日本の革2022年01月21日

後継者ができたけど、ボクは革好きだから
死ぬまで辞められません!

有限会社 T.M.Y's/渡邊守夫さん

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後継者ができたけど、ボクは革好きだから 死ぬまで辞められません!

身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?

東京の下町エリア墨田区で、シープスエードを中心とした皮革の染色・加工を手がけるT.M.Y's(ティーエムワイズ)。2021年11月に新工場を新設し、さらに革の個別販売やオリジナルレザーアイテムを販売する「LEATHER LAB TOKYO」を立ち上げるなど、次々に新しい取り組みを行っている。その背景にはどのような思いがあるのか、T.M.Y'sの代表・渡邊守夫さんを訪ねた。

皮革関連工場のイメージを覆す新工場を新設

まず社屋の前に立つと、カラフルで洗練された外観に目を奪われる。この新工場は旧工場の約1.5倍の広さをもち、1階はステンレスドラム3台と試験ドラム2台を設置した染色場、2階は自動スプレー装置やアイロンマシンなどを置いた仕上げ場と事務所、3階は革を乾燥させる革干し場とショールーム・ショップ、4階はワークショップなどを開催できるラウンジやストックルームという4階建になっている。

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん
「新工場にしたことで、これまでお取引がなかった企業からも見学の問い合わせがひっきりなしです。実際に訪問してくれた方々からは、『こんなにすっきりしたところで染色・加工を行っているのですね。すごいです』と好評です。工場内は案内がしやすいように、従来の革製造の工場見学とは異なるレイアウトにしました。革の染色・加工の工程を見ていただくことで、革への興味はより増すでしょうし、それがT.M.Y'sの認知度向上や新規取引にもつながっていくだろうと考えました」
有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん

T.M.Y'sがプロデュースする「LEATHER LAB TOKYO」では、スエード、シープ、ラム、ゴートなど計8種、計200色以上の革をWEBサイトで1枚から紹介。パターンオーダー可能なレザーシューズのほか、ファッションデザイナーとのコラボによるジャケットなど、さまざまなオリジナルアイテムも展開している。

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん
「『LEATHER LAB TOKYO』は読んで字のごとく、『東京の革の研究所』。これは僕たちの仕事も表していて、弊社は革の大きさを問わず、染め、素仕上げ、オイルド仕上げ、水染め、ラミネート加工、箔押し、型押しなど、どんな染色・加工もできるんです。なぜかというと、それは時代時代に応じた革新を取り入れてきたからでしょう。コロナ禍以前は年に2回、イタリアやスペインの革の展示会へ足を運び、そこで目にしたトレンドや最先端技術を日本の市場にマッチするようにアレンジして、常に新しい提案を続けてきました。ヒットもあれば、ヒットしないものもある。だけどその蓄積が、T.M.Y'sの『なんでもできる』という高い技術力につながっているんです」

音楽業界から皮革業界へ、そこで知った革のおもしろさ

T.M.Y'sの設立は2006年。ルーツは渡邊さんの祖父が墨田区本所にて営んでいた革の販売会社にある。その後、渡邊さんの父が本革の染色業をはじめ、渡邊さんを含む兄弟3人でT.M.Y'sを立ち上げた。社名の由来は「TERUAKI」、「MORIO」、「YOSHIJI」という、それぞれの名前の頭文字。現在、光明さんと善司さんは引退しており、渡邊さんが代表を務めている。

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん
「皮革染色業は家業であったものの、最初から革の仕事に就こうとは考えていなかったんです。僕はもともとジャズやR&Bなどの音楽ジャンルが好きで、海外レーベルの音楽を日本で紹介する仕事がしたかった。だからレコード会社に就職し、著作権関係の部署で働いていたのですが、当時は海外レーベルを買い取るのが非常に難しくてね。それで『好きな音楽は今まで通り個人で楽しもう』と割り切り、親の会社に入りました。4階のラウンジに音響設備も整えたので、ここでコーヒーを飲みながら好きな音楽を聴いて、眼前のスカイツリーを望むのが朝の日課になっています(笑)」
有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん

音楽業界から皮革業界への転身。幼い頃から身近な存在であったとはいえ、新たに見つめた革の世界は、渡邊さんを瞬く間に魅了していった。

「同じ種類の皮を、同じ工程で染色をしても、まったく同じようには仕上がらないんです。100枚染めたら100枚とも微妙に違う。皮革業界に入って約50年経ちますが、未だに試行錯誤の繰り返しですよ。革への探究心は途切れることがありません」
有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん

"革らしい革"の魅力を伝えたい

T.M.Y'sをスタートした時、目指したのはイタリアやスペインの革であった。日本の市場が求める審美眼はとても厳しく、品質の均整や劣化を許さないのが常識。この特性を目指すと、どうしても理想の革に100%近づけるのは難しくなるという。

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん
「イタリアの革と日本の革の違いは、絶妙な柔らかさ。日本の革の風合いも素晴らしいんですよ。ただ日本の市場では『色落ちはNG』、『傷はNG』、『色ムラはNG』というご要望に沿うめ方が求められるんですね。それらをカバーできる技術力は、世界に誇る日本の革の魅力です。ただそういった機能をのせると、『革は自然のもの。だから色落ちも傷も当たり前』という感覚が一般的なイタリアやスペインの革とは、仕上がりの風合いが異なってきます。」

渡邊さんはいま、ありのままの風合いを楽しめる革づくり」に意識を向けている。いわゆるミモザなどの樹皮から抽出したタンニンでなめした「植物タンニンなめしの革」だ。

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん
「色落ちもするし、傷もある、シミにもなるけれど、経年変化によって味わいが増していく。植物タンニンなめしの革が、本来の革らしい革なんですよ。もちろん、この考え方を押し付けるつもりはありませんが、、LEATHER LAB TOKYOの活動を通じて、革の認識を変えていきたい。最新のステンレスドラムを投入したのも、実験的な革づくりを試みるのにベストだから。ワークショップを積極的に開催しているのも、革づくりの魅力に触れてもらいたいからなんです」

柔軟な姿勢が、新たな展開につながっていく

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん

工場内を歩いていると、革を使ったサインボードやアートピース、T.M.Y'sのスタッフを描いた壁紙など、いたるところに遊び心が感じられる。渡邊さんは異業種とのコラボレーションにも意欲的だと話し、環境保護と維持を目的とした国際的皮革産業団体「レザーワーキンググループ(LWG)」の認証取得に向けても動き出しているという。話を聞けば聞くほど、渡邊さんの柔軟な姿勢に驚かされる。

有限会社 T.M.Y's / 代表 渡邊守夫さん
「新工場をつくったら、止まらなくなってしまって(笑)。幸いにもうちには後継者ができたので、工場を新しくする決断ができました。後継者に会社を受け渡すまでに、確固たる基盤をつくっておきたいんです。そこからどんな風に発展させていくのかは、若い世代に任せるのが自然な流れ。それまでは毎日奔走し、常にチャンスを探しますよ。やはり相手の年齢や性別を問わず、人の話をよく聞くことが一番大切ですよね。たとえどんな意見であっても、決して否定をしない。そして自分でしっかりと考え、結論を出す。僕は革が大好きなんです。だから死ぬまで辞められません」
後継者ができたけど、ボクは革好きだから 死ぬまで辞められません!

LEATHER LAB TOKYO(レザーラボトーキョー)

●場所/〒131-0042 東京都墨田区東墨田3-14-21
●電話/03-5630-8189
●URL/https://www.leatherlabtokyo.com/

●工場見学に関するお問い合わせ
https://www.leatherlabtokyo.com/tour

取材・文/大森奈央 
写真/林和也

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