身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?
東京の下町エリア墨田区で、シープスエードを中心とした皮革の染色・加工を手がけるT.M.Y's(ティーエムワイズ)。2021年11月に新工場を新設し、さらに革の個別販売やオリジナルレザーアイテムを販売する「LEATHER LAB TOKYO」を立ち上げるなど、次々に新しい取り組みを行っている。その背景にはどのような思いがあるのか、T.M.Y'sの代表・渡邊守夫さんを訪ねた。
皮革関連工場のイメージを覆す新工場を新設
まず社屋の前に立つと、カラフルで洗練された外観に目を奪われる。この新工場は旧工場の約1.5倍の広さをもち、1階はステンレスドラム3台と試験ドラム2台を設置した染色場、2階は自動スプレー装置やアイロンマシンなどを置いた仕上げ場と事務所、3階は革を乾燥させる革干し場とショールーム・ショップ、4階はワークショップなどを開催できるラウンジやストックルームという4階建になっている。
T.M.Y'sがプロデュースする「LEATHER LAB TOKYO」では、スエード、シープ、ラム、ゴートなど計8種、計200色以上の革をWEBサイトで1枚から紹介。パターンオーダー可能なレザーシューズのほか、ファッションデザイナーとのコラボによるジャケットなど、さまざまなオリジナルアイテムも展開している。
音楽業界から皮革業界へ、そこで知った革のおもしろさ
T.M.Y'sの設立は2006年。ルーツは渡邊さんの祖父が墨田区本所にて営んでいた革の販売会社にある。その後、渡邊さんの父が本革の染色業をはじめ、渡邊さんを含む兄弟3人でT.M.Y'sを立ち上げた。社名の由来は「TERUAKI」、「MORIO」、「YOSHIJI」という、それぞれの名前の頭文字。現在、光明さんと善司さんは引退しており、渡邊さんが代表を務めている。
音楽業界から皮革業界への転身。幼い頃から身近な存在であったとはいえ、新たに見つめた革の世界は、渡邊さんを瞬く間に魅了していった。
"革らしい革"の魅力を伝えたい
T.M.Y'sをスタートした時、目指したのはイタリアやスペインの革であった。日本の市場が求める審美眼はとても厳しく、品質の均整や劣化を許さないのが常識。この特性を目指すと、どうしても理想の革に100%近づけるのは難しくなるという。
渡邊さんはいま、ありのままの風合いを楽しめる革づくり」に意識を向けている。いわゆるミモザなどの樹皮から抽出したタンニンでなめした「植物タンニンなめしの革」だ。
柔軟な姿勢が、新たな展開につながっていく
工場内を歩いていると、革を使ったサインボードやアートピース、T.M.Y'sのスタッフを描いた壁紙など、いたるところに遊び心が感じられる。渡邊さんは異業種とのコラボレーションにも意欲的だと話し、環境保護と維持を目的とした国際的皮革産業団体「レザーワーキンググループ(LWG)」の認証取得に向けても動き出しているという。話を聞けば聞くほど、渡邊さんの柔軟な姿勢に驚かされる。
LEATHER LAB TOKYO(レザーラボトーキョー)
●場所/〒131-0042 東京都墨田区東墨田3-14-21
●電話/03-5630-8189
●URL/https://www.leatherlabtokyo.com/
●工場見学に関するお問い合わせ
https://www.leatherlabtokyo.com/tour
取材・文/大森奈央
写真/林和也