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暮らしに寄り添う日本の革2021年12月17日

良質な素材で、丁寧に良いものをつくる
そして、いつか海外のお客さまとも鹿革のすばらしさを共有したい

株式会社 KAZINO leather works/梶野恭男さん

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良質な素材で、丁寧に良いものをつくる そして、いつか海外のお客さまとも鹿革のすばらしさを共有したい

身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、すばり何ですか?

手触りの良い上質な鹿革を、手縫いで日常の道具に仕上げる。シンプルながらも、そこには自然の恵みを長く愛用してほしいという作り手の思いが込められている。「KAZINO」のデザイナー・梶野恭男さんに、その原点を伺うため、東京・八王子のショップを訪ねた。

自宅まで9時間歩いたその時、独立を決意した

今年、ブランドがスタートして10年目という節目を迎えたKAZINO。JR八王子駅から雰囲気の良い個人商店が立ち並ぶみずき通りを歩いていると、ガラス扉越しのカラフルな空間が目に留まる。一見するとカフェのようだが、そこに並ぶのはさまざまな色合いのバッグや革小物。財布やカード入れを手で触れてみると、まず鹿革特有のやわらかさと軽さに驚く。

KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん
「僕自身、鹿革にはじめて触れた時、直感的にこの素材好きだなって思いました。その時はジュエリーの学校に通っていた学生だったのですが、この素材で何かつくってみたいとクラフトマンシップが駆り立てられました。小さい頃からものづくりが好きで、これを生業にできたらいいなと漠然と思っていたのですが、学校を卒業後はジュエリーの製作会社を経て高級ブランドバッグのリペア工房に入社。少しずつ仕事を任されるようになって4年経った頃ですね、東日本大震災が起きたんです。その日は電車がすべて止まり、青山にあった会社から八王子の自宅まで、約9時間かけて歩いて帰宅しました。その道中、『どう生きていきたいのか?自分は何がしたいのか?』を自問自答し、改めて思ったんです。自分がつくりたいと思うものをつくるために、これからは好きなことをして生きていこう、と。」
KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん

趣味でつくっていた鹿革製品を掲げて独立

会社員として仕事をしながらも、趣味で鹿革製品をつくっていた梶野さん。独立を決意したときにはすでにクラフトフェアや百貨店でのイベントも好評で、少しずつブランドとしての未来予想図が描けていたタイミングでもあった。

KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん
「最初に製品化したのは、僕自身が愛用していたショルダーバッグです。一枚一枚の革がもつ個性を大切にしたいなと、あえて切りっぱなしの部分をそのままバッグのかぶせに使いました。さらに鹿革のなめらかな肌触りを第一に、金属のパーツはなるべく使わないようにしています。革は丈夫でも、パーツが壊れることで修理になるケースが多いのは、前職時代に学んだこと。製品づくりにおいての縫製もミシン糸よりも、手で縫ったほうが丈夫ということも痛感したので、KAZINOではすべての革製品を職人による手縫いで仕上げています」
KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん

このショルダーバッグは梶野さんも愛用しているが、実はこれまでに新品ではなく、梶野さんが長年使い込んだバッグがどうしても欲しいという人も多かったという。

「今でこそ鹿革を使った製品を扱うブランドも増えましたが、僕が始めた当時はまだまだ珍しい素材でした。さらに、鹿革は適度に伸縮性があるので使い込むほどに身体になじんでいきます。牛革などとはまた違った魅力がありますよね。よく鹿革のお手入れはどうしたらいいですか? という問い合わせもいただきますが、鹿革は細かい繊維が集まっていて人肌に近いと言われていることから、僕はだれもが日常的に使用する市販の保湿剤をおすすめしています。ドラッグストアで手に入るもので簡単にお手入れできると聞くと、さらに興味をもってくれる方も多いですね」
KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん

目下の夢はニュージーランドへの逆輸出

KAZINOの革製品は、ニュージーランド原産の鹿皮を日本のタンナーで鞣したものを採用。ブランド設立時はナチュラルカラーの展開だったが、お客様からの声も多く、今ではレッドやグリーンなどが加わり全9色をラインナップしている。

KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん
「ありがたいことにお客様からアドバイスをいただくことも多く、それを製品開発にも取り入れています。鹿革のレッドもそのひとつ。とても発色が良いので、いまでは人気カラーです。また、ニュージーランドに詳しいお客様からは『日本の鞣しの技術はとても素晴らしいし、手縫いで丁寧につくられている鹿革製品は現地にはないから、ぜひニュージーランドで展開してみれば?』とお声をいただきました。ニュージーランド原産の鹿革と日本の技術がかけ合わさってできている僕らの革製品を、いつか製品として逆輸出して反響を知りたいなと思っています」

ワークショップの開催で、クラフトマンシップのある革職人を発掘

製品の評判もさることながら、ショップで開催しているワークショップを楽しみにしているファンも多いという。

KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん
KAZINO / デザイナー 梶野恭男さん
「このご時世でしばらく開催できていないのですが、鹿革でブックカバーや小物をつくるワークショップを不定期で行ってきました。一針一針縫いながら、鹿革にじっくりと触れ合うことでより素材の魅力にさらに夢中になる方も......。いまKAZINOで職人として働いているスタッフも、実はワークショップがきっかけで僕がスカウトした生徒さんたちです。こうした出会いで、KAZINOは少しずつ成長してきました。僕が魅了された鹿革を、ブランドを通してもっと多くの人に知っていただけると嬉しいです」
良質な素材で、丁寧に良いものをつくる そして、いつか海外のお客さまとも鹿革のすばらしさを共有したい

株式会社 KAZINO leather works(カジノレザーワークス)

●場所/〒192-0066 東京都八王子市本町11-12 ボンシャンス1F
●電話/042-686-2721
●URL/https://www.kazino.jp/

株式会社 KAZINO leather works

株式会社 KAZINO leather works

八王子のみずき通りにショップ兼工房を構えるKAZINO leather works(カジノレザーワークス)。代表の梶野恭男さんは、ブライダルジュエリーの制作会社やバッグのリペア工房に勤務した後、201……

取材・文/村田奈緒子 
写真/山北茜

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