身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?
1925年、東京・元浅草で創業した三竹産業。ベルト専業メーカーとしてスタートし、現在はさまざまな革小物の製造を行なっている。2001年にはこれまで培ってきた技術と革への審美眼が光るオリジナルブランド「鉋(かんな)」を設立。2004年に「ANNAK」へ名称を変更し、「Fun to Leather」というコンセプトを体現した製品を展開している。ANNAKのものづくりへの思いを伺うべく、三竹産業のプロダクトマネージャーを担当する黒澤 進さんに話を聞いた。
多彩な革を使い、職人の技が光るものづくりを行う
ANNAKの直営店があるのは銀座線「田原町」駅から徒歩10分ほどの場所。都営大江戸線・つくばエクスプレスが通る「新御徒町駅」からも徒歩圏内で、古くからものづくりの町として栄えてきたエリアだ。2022年1月に「atelier ANNAK」としてリニューアルオープンし、店内には革の真髄を堪能できる製品や、ファッション性の高いカラーレザーシリーズ、革の風合いをいかして染めたシルバーカラーのシリーズなど、さまざまなテイストの革製品が並べられている。
ANNAKの前身となるブランド「鉋」は、安価な海外生産が主流となる時代の潮流に抗い、「効率重視ではなく品質重視。日本の技術力を駆使した製品をつくろう」という思いのもとにスタートした。それは「国内生産・ハンドメイド」を掲げたコンセプトと合わせてANNAKに継承され、高度な職人の技術と新しい感性を融合させた製品を展開している。
「ANNAKは鉋(KANNA)の綴りを逆さにしたもの。鉋は革の断面を指す「コバ」の仕上げの際に使われる道具です。それと同じように、コーディネートの仕上げにANNAKの製品をもつことで、全体がワンランクアップできるブランドにしていきたいと考えました。ベルト専業メーカーとしてスタートした三竹産業の武器は、やはりベルトづくりの技術です。ANNAKの定番シリーズのひとつであるボストンバッグは、メインの収納部はバッグ職人が制作し、ストラップ部分はベルト職人が制作。バッグを肩掛けした際などに、衣類に引っかかる心配がない滑らかで美しいコバの磨きや、長さ調整可能なストラップは、ANNAKならではのつくりだといえます」
使いたい革はオリジナルで日本のタンナーにオーダー
現在、ANNAKで使用している革の9割が日本製。栃木レザーや湯浅皮革工業所をはじめ、日本有数のタンナーで鞣された革ばかりだ。
黒澤さんはカジュアルブランドやハイブランドの販売員を経て、2005年に三竹産業へ入社。ロックが好きであったことからライダースジャケットを日常的に着用しており、もともとエイジングを楽しめる本革へ親しみがあったという。そして三竹産業への入社を機に、革への情熱はより一層深まっていく。
革の特性やつくり手の思いをユーザーに届ける
黒澤さんの名刺には「営業」の肩書が記されているが、実際の仕事内容は実に幅広い。OEMの企画営業やオンラインショップの制作、ANNAKの企画やデザインまで、代表の麻生和彦さんとともに手がけているという。さらに全国各地の百貨店と期間限定でコラボレーションする「日本革市」に出展した際は、会場で製品の紹介も行なっている。
日本革市では黒澤さんから革製品にまつわる話を聞きたいというANNAKファンも多いという。黒澤さんはどのように来場者と接しているのだろうか。
ユーザーとの会話は、新製品の開発や定番品の改良のヒントにもなる。もちろんすべてを反映するわけではないが、ユーザーの声が改良に結びついた例は数多い。時代の風を読み、新しい革を生み出し、定番品であっても改良を重ねていく。まさにANNAKは、常に進化を続けるブランドだといえよう。最後に、今後の展望について聞いてみた。
株式会社 三竹産業
●場所/〒111-0041 東京都台東区元浅草3-21-4
●電話/03-3845-5287
●URL/https://annak-shop.com/
取材・文/大森奈央
写真/山北茜