素材から作りまでメイドインジャパン。
★ 閲覧したアイテム

革市通信KAWAICHI COLUMN

暮らしに寄り添う日本の革2022年08月05日

国内生産にこだわった革製品づくり
本革の魅力を多くの方に届けていく

株式会社 三竹産業/黒澤進さん

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
国内生産にこだわった革製品づくり 本革の魅力を多くの方に届けていく

身に着ける衣類、家具、そして小物たち......。身近に存在する革に関するモノコトを、革を愛し、ふだんのライフワークとしている人に聞く。日本の革の魅力って、ずばり何ですか?

1925年、東京・元浅草で創業した三竹産業。ベルト専業メーカーとしてスタートし、現在はさまざまな革小物の製造を行なっている。2001年にはこれまで培ってきた技術と革への審美眼が光るオリジナルブランド「鉋(かんな)」を設立。2004年に「ANNAK」へ名称を変更し、「Fun to Leather」というコンセプトを体現した製品を展開している。ANNAKのものづくりへの思いを伺うべく、三竹産業のプロダクトマネージャーを担当する黒澤 進さんに話を聞いた。

多彩な革を使い、職人の技が光るものづくりを行う

ANNAKの直営店があるのは銀座線「田原町」駅から徒歩10分ほどの場所。都営大江戸線・つくばエクスプレスが通る「新御徒町駅」からも徒歩圏内で、古くからものづくりの町として栄えてきたエリアだ。2022年1月に「atelier ANNAK」としてリニューアルオープンし、店内には革の真髄を堪能できる製品や、ファッション性の高いカラーレザーシリーズ、革の風合いをいかして染めたシルバーカラーのシリーズなど、さまざまなテイストの革製品が並べられている。

annak / 黒澤 進さん
「三竹産業が掲げるテーマは『Fun to Leather(ファン・トゥ・レザー)』。ANNAKの製品群をご覧いただくと分かるように、本革を楽しんでいただくため、多様な種類の革を採用しています。それは来店される方にご提案できる選択肢がたくさんあるということ。革の質感や経年変化がお好きな方、初めて革製品に触れる方など来店される方は各人各様。それでもライフスタイルや好みに応じたご提案ができるほど、ANNAKはアイテムの種類が多いのが特徴です。だからこそ老若男女問わず、多くの方にご愛用いただけているのかもしれません」
annak / 黒澤 進さん

ANNAKの前身となるブランド「鉋」は、安価な海外生産が主流となる時代の潮流に抗い、「効率重視ではなく品質重視。日本の技術力を駆使した製品をつくろう」という思いのもとにスタートした。それは「国内生産・ハンドメイド」を掲げたコンセプトと合わせてANNAKに継承され、高度な職人の技術と新しい感性を融合させた製品を展開している。

annak / 黒澤 進さん

「ANNAKは鉋(KANNA)の綴りを逆さにしたもの。鉋は革の断面を指す「コバ」の仕上げの際に使われる道具です。それと同じように、コーディネートの仕上げにANNAKの製品をもつことで、全体がワンランクアップできるブランドにしていきたいと考えました。ベルト専業メーカーとしてスタートした三竹産業の武器は、やはりベルトづくりの技術です。ANNAKの定番シリーズのひとつであるボストンバッグは、メインの収納部はバッグ職人が制作し、ストラップ部分はベルト職人が制作。バッグを肩掛けした際などに、衣類に引っかかる心配がない滑らかで美しいコバの磨きや、長さ調整可能なストラップは、ANNAKならではのつくりだといえます」

annak / 黒澤 進さん

使いたい革はオリジナルで日本のタンナーにオーダー

現在、ANNAKで使用している革の9割が日本製。栃木レザーや湯浅皮革工業所をはじめ、日本有数のタンナーで鞣された革ばかりだ。

annak / 黒澤 進さん
「日本の革はやはり安心感がありますよね。生産者の顔が見えますので、品質も納期も安心してお取引できますし、対応もクイック。『こういった革がほしい』というこちらの要望に対しても、柔軟にご対応いただいています。とくにシルバーの革は革問屋さんに問い合わせても、箔加工のようなものしか取り扱いがありませんでした。しかし、僕らは革の表情や経年変化が感じられるシルバーの革がほしかったので、タンナーさんにオーダーをしてつくっていただいたんです。近年注力している、オリジナルレザーを含んだ10色展開のカラーレザーは、本来、革では実現が難しい色合いを表現しているので、その点もお楽しみいただけると思います。カラーレザーのシリーズはモダンなデザインとポップなカラーリングを備えながら、比較的手に取りやすくなっているため、ご自身でお使いいただくことはもちろん、贈り物としても人気なんですよ。裏面は表面と同じツルツルの仕上がりで、中に入れたハンカチ等に革の繊維が付着することもありません。次は表と裏でプリントが異なる、リバーシブルの革をつくってみたいですね」
annak / 黒澤 進さん

黒澤さんはカジュアルブランドやハイブランドの販売員を経て、2005年に三竹産業へ入社。ロックが好きであったことからライダースジャケットを日常的に着用しており、もともとエイジングを楽しめる本革へ親しみがあったという。そして三竹産業への入社を機に、革への情熱はより一層深まっていく。

annak / 黒澤 進さん
「それまで革といえば、ライダースのような硬くて重い牛革のイメージが強かったんです。しかし入社後、ボストンバッグやベルトなどで使用しているハンドウォッシュレザーを見て、衝撃を受けました。これ(写真下)は植物性タンニンで鞣した革を製品にした後に洗いをかけ、職人が手作業で凹凸感とメリハリを出し、ヴィンテージ感と柔軟性を出すという手間暇かかる加工なのですが、『なんてカッコいい表情なのだろう』と。さらにエナメルや染色といった加工の数々、ヤギや羊、爬虫類系など豊富な革の種類、厚みによる質感の違いなど、同じ革でもこんなにもいろいろな表情があるんだなと、革への印象がガラリと変わった記憶があります」
annak / 黒澤 進さん

革の特性やつくり手の思いをユーザーに届ける

黒澤さんの名刺には「営業」の肩書が記されているが、実際の仕事内容は実に幅広い。OEMの企画営業やオンラインショップの制作、ANNAKの企画やデザインまで、代表の麻生和彦さんとともに手がけているという。さらに全国各地の百貨店と期間限定でコラボレーションする「日本革市」に出展した際は、会場で製品の紹介も行なっている。

annak / 黒澤 進さん
「僕たちはつくり手の思いやこだわりを伝える役割も担っています。かといって一方通行でお話するのではなく、ご来場の方がどのようなものを求めていらっしゃるのかをお聞きし、それにマッチする製品をご提案させていただく。そのなかで『日本革市に出展されている他のブランドさんの製品の方が、こちらの来場者には合うかもしれない』と感じたら、そのようにお話することを心がけています。せっかく革に興味をもち、日本革市に足を運んでくださるのですから、いろいろな革製品を見ていただきたいんです。ANNAKでは他にないものをご提案している自負があるので、その自信があるからこそ言えるのかもしれませんが」
annak / 黒澤 進さん

日本革市では黒澤さんから革製品にまつわる話を聞きたいというANNAKファンも多いという。黒澤さんはどのように来場者と接しているのだろうか。

「ご来場者様は十人十色なので、マニュアルはありません。しかし、エイジングを含む革の特性やお手入れ方法などはきちんとお伝えするようにしています。たとえば、シルバーの革はナチュラルレザーに色付けを行なっているのですが、使い続けていくうちにシルバーの色味が薄れてきます。僕個人としては好きな変化であっても、ご来場者様によっては好まない方もいるでしょう。自分が数年間使っている同シリーズの製品をお見せし、経年変化をイメージしていただくことも多いですね。年月とともに増す色艶、風合い、柔らかさは、実物を見ていただくのが一番ですから。また、以前お選びされたご来場者様がANNAKのブースに来てくださり、そこでお話をさせていただくのも日本革市の楽しみのひとつなんですよ。『前回、お選びいただいたそのお財布、革がいい感じに育っていますね』といった具合に」
annak / 黒澤 進さん

ユーザーとの会話は、新製品の開発や定番品の改良のヒントにもなる。もちろんすべてを反映するわけではないが、ユーザーの声が改良に結びついた例は数多い。時代の風を読み、新しい革を生み出し、定番品であっても改良を重ねていく。まさにANNAKは、常に進化を続けるブランドだといえよう。最後に、今後の展望について聞いてみた。

annak / 黒澤 進さん

右はANNAKの代表の麻生和彦さん

「三竹産業の約100年という歴史のなかで培ってきた技術力は、どの製品にも落とし込まれています。今後もANNAKのフィルターを通した新しい革製品を発表していきますので、楽しみにしていてください。これからも革にこだわり、『Fun to Leather』を追求していきます」
国内生産にこだわった革製品づくり 本革の魅力を多くの方に届けていく

株式会社 三竹産業

●場所/〒111-0041 東京都台東区元浅草3-21-4
●電話/03-3845-5287
●URL/https://annak-shop.com/

取材・文/大森奈央 
写真/山北茜

このページをSNSでシェア!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE