「革製品にまつわる記念日ってどんなのがあるのかな...」と調べてみたのですが、「ハンドバッグの日」「靴の記念日」など幾つかあり、その中でも特に私が気になったのはその中でもピンポイント、「がま口の日」。がま口を閉める時に音がパチンッと鳴ることから、8を「ぱちん」と読む語呂合わせをし、8が重なる日、8月8日が「がま口の日」に。ふぅん...。
ガマ蛙の口のようにも見えるので「がま口」と呼び、日本のものかと思っていましたが、元々は明治時代にヨーロッパから持ち帰られた小さなパーティバッグや小物入れが最初なんですって。精巧に作られたものは髪の毛1本でもしっかり挟み、「ぱちんっ!」という音も特別だそう。女性がちょっとの力で無理なく開けられるけれど、隙間なくきちんと閉められる...ヨーロッパ、日本に関わらず、高い技術が必要なことは想像できますよね。
もうちょっとがま口の金具の部分のお話をしたいし、色々調べたり頼まれていない私物なんかも見せちゃいたいんですけど...、そのまま「日本革市」Webサイトでどんな「がま口」が載っているか、ここでご紹介させていただきます。
弧を描いたがま口とふんわりシルエットがかわいい
金具の部分がリズミカルな曲線を描き、蛇革の部分にギャザーを寄せて丸みのあるシルエットに仕上げたこちら。和装小物も得意な、革小物とバッグの老舗「株式会社 高屋様」の小物入れです。ストラップなどが付けられる、横の部分の小さな丸カンもなんかいい雰囲気ですよね。鈴とかついてたらかわいいな。
素材も面白いんです。よーく見ないとわからないかも知れませんが、蛇革の質感、手触りが感じられながらも、キラキラする華やかさを出せる「ドット箔」の加工がしてあります。革の表面を全て水玉のフィルムで革を覆ってしまうのではなく、ドットの●の部分以外は蛇革が出ているというワケ。伝わるかな。きれいですよ!蛇革の経年変化が進んで色に深みが出てくると、また表情が変わってくるのではないでしょうか。ゴールドに合わせた金具は「ピンクゴールド」というのも上品。シルバーにはシルバー色の金具です。
シンプルながま口を開けると中は...
がま口を開けると、中にもうひとつがま口が。「親子がま口」と呼ばれることもあるそうで、小銭やお札を分けて入れられるお財布としても使えます。カードも入る大きさですし、お札は3つ折りにすれば大丈夫。この丸さが手に馴染んで、意外な持ちやすさとお財布に見えないかわいさに愛着がわきます。
港町「神戸」のブランドなので、アンカーのワンポイントが捺されています。クロムなめしを施した柔らかい牛革。発色がよい12色展開で、ギフトにも喜ばれそうです。
丸さがあっても、上記の2つくらいの大きさだと、小物入れとしてはもちろん、ちょっと懐かしい雰囲気もあるかわいいお財布としても使えますよね。どちらにしても中の見やすさが「がま口」の魅力です。
2つ折りでも、小銭入れがこの開き
コンパクトな2つ折り財布でも、小銭入れの見やすさは「がま口」だから。ジャガード織の裏地の明るさもそれを手伝っています。隠しポケットも含めてカードは9枚入り、お札のスペースは仕切りがあるので、レシートなどもきれいに整理できます。ソフトな牛革を使ったシリーズの他に、さざ波を思わせる型押しタイプもあります。
大きく開いてスリム がま口だけど長財布
丸みがあるがま口は、どこか懐かしいようなクラシカルな雰囲気。先にご紹介した「親子がま口」と同じシリーズですが、こんな風に少しシャープな印象のものもあります。がま口式の長財布です
カードポケットが10ヵ所、フリーポケットが3つあり、小銭を入れるところには中央にあってファスナー式。スリムなのに、中をきれいに整理して使えるところが人気で、長年使い続けたあとも同じ型をリピートするかたもいらっしゃるのだとか。真鍮色のシックな金具も素敵ですよね。個人的には、ネイビーとの組み合わせが特に好きです。こちらも12色もあります。
開け閉めをする時に指をかける「ひねり」の部分が外側にはない、がま口とは少し違う、「天溝がま口」(てんみぞがまぐち)「押し口がま口」(おしぐちがまぐち)という金具使いのものも今日はご紹介させてください。
「押し口」という呼び名のほうが、「天溝がま口」よりは一般的かも知れないですね。その名の通り、開口部の段差に指をかけて押すようにすると、がま口と同じような「ぱちんっ!」という感覚で大きく開きます。「ひねり」の部分は内側にあり、突起が出ていないのでポケットに入れる時などでもひっかかりにくいことと、金具部分が見えにくいので、「がま口」タイプよりシックな印象にも見えます。
繊細な国産キップレザーと高い技術でシワひとつない滑らかさ
キップレザーの中でも、生後半年程の「カーフレザー」の質感に近い、吸いつくような感触の上質な革。それを全て曲線で仕立て上げた、高い技術を要するアイテムです。外側のポケットにICカードが入るぎりぎりの幅と高さで、ジャケットやパンツのポケットに入れやすいところが、ビジネスパーソンに愛されています。ポケットの縁に入れられた「捻」(ねん)と呼ばれるラインからも、職人の丁寧な仕事が感じられます。
この落ち着いた色とツヤ感なら、オリーブやワインもビジネスシーンで使えそうですね。
中を開けるのも楽しい、ビビッドカラーの組み合わせ
大自然で生きた証のキズなどを活かしたまま、鮮やかな色に染め、コントラストの強い色味を内装に使ってあります。使い続けると色が深くなりツヤが出てくる、フィンランドエルク(ヘラジカの一種)の押し口財布。お札は2つ折りで入る大きさで、真ん中の小銭スペースが仕切りになり、小さくても使いやすそうです。マチがなくても、柔らかい本革なら多少の膨らみも馴染み、デニムのような「当たり」が出てくるのもかっこいいはず!百貨店などで開催される「日本革市」や、パーリィーのイベントでは、数年使ったサンプルをいつも準備してありますので、エルク革の経年変化を実際にご覧いただけます。その美しいツヤに、皆さん驚かれていますよ。
8月8日の「がま口の日」の前に、4つのがま口アイテム、2つの押し口アイテムをご紹介させていただきました。どちらも歴史があり、いつまでも愛され続ける定番アイテム...と思いたいのですが、残念ながらこれらを作れる高い技術を持った職人さん達が減ってきているというのは昨今よく聞くお話。専用の工具を使い、柔軟性のある革をシワひとつ出さず、また、ふくらみを作るために均等にシワを寄せながら金具の中に収めていく作業は、精度の高い手作業でなければできないんですよね。
日本製のがま口アイテムを既にお持ちならば、是非大切になさってください。また、これから本革アイテムをお選びになることがあれば、丁寧、正確に作られた日本の「がま口」「押し口」の小物入れなども候補に入れてみてください。
「がま口の日」の翌日、8月9日は「バッグの日」...かと思ったらそうではなく「かばんの日」。鞄のご紹介はいつもしているので、次回の8/5(金)の革市通信は「株式会社 三竹産業」の物作りと、新しいショップ「atelier ANNAK」のご紹介です。
それでは、また。
文/鎌倉泰子