7. 原皮の種類と用途
原料皮の種類は、成牛皮、子牛皮、水牛皮、馬皮、羊皮、山羊皮、豚皮、ワニ及びトカゲなど、その他と大別されています。また、種類の他に、原料皮の大きさ(重量)やその状態、あるいは性別や年齢による区別があります。ここでは、それぞれの革の性質や特長と用途についてまとめてみました。
なお、大きさ(重量)による区別には以下の2つがあります。
- ハイド(Hide)…成牛皮、馬皮などのように25ポンド(約11.5kg)以上ある厚くて大きな、重い皮
- スキン(Skin)…子牛皮、羊皮などのように薄くて小さい、軽い皮
面積単位で行われています。
1デシ(デシ) = 10cm × 10cm = 100c㎡
牛 - Cow -
革製品でもっともよく使われています。
全般的に大判で厚く、繊維組織が比較的均一で、強度や耐久性に優れています。
地生(じなま)と呼ばれる国産牛原皮のほかに、北米産ステアを中心とする輸入牛原皮が国内で処理されています。
ハイドとスキンの他に、年齢と性別によって、カウ、ステア、ブル、キップ、カーフなど、細かく分類されています。
カーフ・スキン
生後6か月ぐらいの子牛の皮で、薄手でキメと繊維構造がもっとも細かく、最上質。成牛革に比べて銀面が平滑で、キメが細かく、高級な革になります。その代表がボックスカーフです。
靴、ハンドバッグ、かばん、手袋、衣料 など
キップ・スキン
生後6か月から2年ぐらいの、カーフよりやや厚手の皮。カーフについで上質。
靴、ハンドバッグ、かばん、手袋、衣料 など
カーフとキップの見分け方
カーフとキップの革の現物を数多く見比べる経験を重ねるしかありませんが、 カーフはキップに比べ銀面のキメが細かいのが最大の特徴です。
カウ・ハイド
生後2年を経過した雌牛の皮です。皮の厚さは雄牛ほどなく、やや柔らかさをもっています。
カーフスキンやキップスキンより厚みがあり、丈夫なのが特徴です。
靴甲・底革、かばん類、家具、インテリア、工業ベルト など
ステア・ハイド
生後3〜6か月以内に去勢し、2年以上を経た雄の成牛の皮です。もっとも多く利用されています。
靴甲・底革、かばん類、家具、インテリア、工業ベルト など
ブル・ハイド
生後3年以上の、去勢していない雄牛の皮です。大型でキメが粗く、頭、首、肩部が極めて厚く、アメリカの雄成牛の皮には焼き印のあるものとないものがあります。工業用パッキンなど頑丈さを 求められる製品に使われるため、「命を守る革」とも言われています。
靴甲・底革、かばん類、家具、インテリア、工業ベルト など
※ 大きさには個体差があります。
バッファロー・ハイド
水牛の皮。皮は厚く、肩の部分に大きなしわがあり、線維組織が粗いが、独自の味わいがあり丈夫です。
ハンドバッグ、小物、ベルト など
羊 - Sheep -
羊は品種の数が多く、その品種によって羊皮の性状が異なります。 丈夫さではゴートスキン(山羊皮)には劣りますが、軽くて柔らかく防寒材料として優れています。
ヘアシープ・スキン
ヘア(真直な毛)を有する品種の羊皮で強度に優れています。
ゴルフ手袋、衣料 など
ウールシープ・スキン
ウール(巻縮している毛)を有する品種の羊皮で、繊維のからみ合いが少なく、体表面と平行に走っているため、乳頭層と網様層に二分しやすい。軽くて柔軟ですが、強度は低くなります。
靴、手袋、衣料 など
ラム・スキン
12か月齢までの子羊の皮で、高級品に用います。
手袋、高級衣料、毛皮 など
山羊 - Goat -
山羊は、アジアとアフリカの発展途上国では汎用家畜として飼育されており、種類も多く、皮が生活の中で多く利用されています。 山羊皮の特長は、薄く柔らかで丈夫。毛穴の形に特徴があります。
ゴート・スキン
羊皮より充実した繊維組織をもち、強く、やや硬い。
銀面には特有の凸凹があり、耐摩耗性に優れています。
靴、ハンドバッグ、手袋、衣料 など
キッド・スキン
子山羊の皮で染料の発色性に優れ、高級品に用います。
キッドは特に高級な靴や手袋になる
豚 - Pig -
豚皮は、国内消費量を上回る供給がある原皮です。
普通は3本の太くて長い剛毛が対をつくって皮の全層を貫通し、通気性に優れているため、裏革(靴のライニング)などに使用されます。
また、組織の部位差がおおきく、バット部が蜜で硬くなりがちで、均一な柔軟性が得にくくなります。
靴甲、裏革、ハンドバッグ、かばん、小物、ベルト、衣料など
馬 - Horse -
一般に薄く大判で、全体的に組織が粗く、柔らかい。
裏革、ハンドバッグ用革、衣料用革に使用されます。
コードバン
馬皮のバット部を裁断して植物タンニンなめしを行った後、銀面及び肉面部を分割して取り除き、内層にあるコードバン層を強い光沢をもつように仕上げた革で繊維密度が非常にち密です。
紳士靴、かばん、ランドセル、ベルトなど
鹿 - Deer -
傷が多いので銀面を取り除いて使用されることが多く、非常に柔軟です。肉用に飼育されている鹿の皮は傷も少なく、良質です。
武具、手袋、衣料など
カンガルー - Kangaroo -
子牛の皮(カーフ・スキン)より上等で、革は丈夫で軽くしなやか。伸びて変形しない。高級材料として重宝されています。オーストラリアから輸入されています。
高級靴甲革、スパイク甲革、手袋用 など
エキゾチックレザー
- Exotic Leather -
ワニ
クロコダイル、アリゲーターなどの皮。独特のウロコ模様が美しく、皮は丈夫です。
靴、ハンドバッグ、かばん、ベルト など
トカゲ
ワニ皮より多く用いられ、ミズオオトカゲ、ナイルオオトカゲ、テグー、イグアナ、カイマントカゲなどその種類も多い。
ハンドバッグ、小物、ベルト、時計バンド など
ヘビ
美しい斑紋のあるニシキヘビが主流で、その他、コブラ、水蛇などの皮。皮質も丈夫で、各種のヘビ皮があります。
靴、ハンドバッグ、小物、ベルト など
オーストリッチ
駝鳥の皮で羽を抜いたあとが丸く突起し、皮の表面におもしろい模様(クイルマーク)があるため、珍重されます。 丈夫で柔軟な皮です。
靴、ハンドバッグ、ベルトなど
エイ
サメの近縁種。革として利用されるのは主にスティングレー(アカエイ)。この表皮を削ると“石”と呼ばれるリン酸カルシウムの粒状のウロコが出てビーズのように輝き、美しい表情を見せます。
かばん、小物 など
サメ
現存するサメの種類は、12目12科74属で370種を超えます。370種を超えるサメの中で、革として利用できるものは約20種です。サメの皮は、鮫肌の所以(ゆえん)である、リン酸カルシウムからなる楯鱗(じゅんりん)という硬い表皮があります。
この表皮を塩酸で脱鱗処理後、なめします。日本近海で漁獲されるサメのうち、革として使用されるものは主にヨシキリザメです。
参考文献:一般社団法人 日本皮革産業連合会 『革のプロが教える、レザーの基本講座』