朝晩は過ごしやすい気温になり夏も終わりとは言っても、明るい空に雨が降ったり...と不安定なお天気だった東京の9月。9月末には大きなレザーイベントが催されたり、素材や製品の大型展示会があったり、各地でレザーに関する「資格試験」が開催されるなど、革業界も盛り上がる季節でもあります。やっと秋らしくなってきて、お出かけも気負わずにできるようになった10月です!
外出が気持ちのよいこの時期の「革市通信」。今回は、革好きさんにお勧めしたいギャラリースペースや、イベントなども開催されている「お出かけスポット」をご紹介いたします。
角を曲がると住宅地に現れる、
「革色」の空間 <minca>
1軒目は東京都足立区、最寄り駅は「北千住(きたせんじゅ)」の「minca(ミンカ)」です。少し前に私がお邪魔した時のエントランスの様子です。マネージャーが通勤で使っていらっしゃる自転車が絵になる!
警察の装備品などを手掛けてきた「株式会社 和宏」が手がけるオリジナルブランド「minca」。「栃木レザー株式会社」のエージェントのひとつとして、厳しい基準をクリアした上質な本革を扱い、食の副産物として生じた皮革素材に感謝しながら「レザーのある豊かな暮らし」を提案しています。
揃えているアイテムも幅広く、お財布やバッグなどの他に、アウトドアアイテム、インテリアグッズなども。個人的には栃木レザーの中でも「多脂革」と呼ばれているオリジナルの「ハーネスレザー」のシリーズにも注目しています。
北海道の壮大な自然の中で生まれる
「鞍ショルダー」 <鞄 いたがき>
同じく「栃木レザー」を使いながら、前出のmincaとは佇まいが違う「鞄 いたがき」のバッグ。「タンニン鞣しの革の魅力は時間とともに愛着が増していくもの」と、できるだけ「修理ができる」ことを前提にして丁寧に作られた美しいバッグです。
「鞄 いたがき」のブランドコンセプトや、創業の地「北海道」への想い、創業者のDNAが宿ったような代表作がこのバッグ。「鞍ショルダー」と呼ばれて大きさを揃え、その誕生以来、更なる改良を重ねながら大事に作り続けられています。
北海道のほぼ中心部に位置する「滝川」から、富良野方面に向かう国道沿いにある「いたがき ガーデン・エコファクトリー」のショウルームでは、四季折々の豊かな自然を眺めながらコーヒーをいただけるカフェもあるそうです。東京で実際に製品を手にとって見ることができるのは「京王プラザホテル」3階ロビーフロアなど。ご出張やご旅行のお土産を選ぶかたがたで賑わっているようです。
凛としてかわいいレザーのアクセサリー
<Selieu>
私も愛用していて、「それは何でできているの?」と聞かれることも多いのが、「Selieu(セリュ)」のアクセサリー。こちらはコレクションの中でも今のところ一番大きなアイテムなのですが、ピッグスキン(豚革)で作られているためとても軽いんです!なので、この大きさでも1日着けていられます。
主要皮革素材の中で、日本が唯一輸入に頼らずに賄うことができる資源が実は「豚革」ということはご存知ですか?日本の豚肉の消費量に因るところも大きく、食の副産物として日本で生産された豚革は国内に留まらず、国外にも輸出されています。Selieuは今年でブランド設立からちょうど10年。ピッグスキンをはじめ、皮革産業の発展の為に、子供から大人まで楽しめるワークショップや企画監修も行っています。
1枚の革から、花びら1枚ずつを型抜きするところから、最後の組み立てまで...。手作りでなくては生まれない、繊細なアイテムばかりです。
東京 二子玉川のアトリエでは不定期でイベントを開催しているほか、予約制で製品を見せていただくこともできます。
持ち歩けるアート <yuhaku>
最近ではアート作品の発表や革業界以外とのコラボレーションなど、活動が多岐にわたる「yuhaku(ユハク)」。絵画の技法「ベラトゥーラ」を応用した染色技術で仕上げた、グラデーションカラーのバッグと革小物のブランドです。「有限会社新喜皮革」のコードバンをベースに「有限会社レーデルオガワ」で加工、その後yuhakuの職人が手作業で職人が染めた、奥行きのある色ツヤが目をひくコレクションの他、東銀座の「yuhaku Ginza Gallery」では、カーフレザーやキップレザーなど、用途や色の発色の合わせた革選びと技術のバランスをとった美しいコレクションを見ることができます。
現在直営のスペースは、横浜のショールームとyuhaku Ginza Galleryの2ヵ所。横浜では限定アイテムとたくさんのシューズのコレクション、銀座では、アーティストとのコラボレーションアイテムやウィンドウを彩るアート作品に是非ご注目いただきたいです。
コーヒーと焼き菓子と...
<Coquette>
デザイナーさん&マネージャーさん、美味しいものに詳しいお2人が営む「Coquette(コケット)」。昨年夏にオープンしてから、レザーアイテムだけではなく、ストールや国内外の手作りの器、手土産など揃えるギフトショップ兼サロンのような空間として活動を広げてきました。コーヒースタンドも併設しており、お昼時はご近所にお勤めのかたやお住まいのかたで賑わっています。私にとっても都営新宿線 小川町駅 A1出口より徒歩2分、丸ノ内線 淡路町駅 A4出口より徒歩3分 というアクセスの良さも、仕事の合間などにちょっと寄りたくなる理由です。
定評があるのは、きれいな印象を保ちながら経年変化をしていく「箔加工」の品々。化粧品業界出身のご経験が活かされた、こだわりのパール感、輝きが特徴です。かっこよくてかわいい女性、かっこよくて愛嬌のある男性...。「楽しい大人」のためのレザーグッズを揃えています。ブランドとしての活動は既に20年に及び、デザイナー 林さんが歳を重ね、センスや興味の対象に奥行が出てくるのと平行するように、活動の場所を変えながら素敵な空間を作り続けていらっしゃいます。
「日本革市」のイベントへのご出展はありませんが、素晴らしい物を作り続け、地域に根付いたスペースや独自のイベントで革業界を盛り上げている5ブランド。気持ちの良い秋、スケジュールを調整して、ぜひ一度足を運んでみてください。各ブランドのインフォメーションは下記をご確認ください。
私は、夏にオーダーしていたストラップが取外しできるクラッチバッグがもうすぐ手元に届くのを楽しみにしています。ネイビーにシルバーの金具、が既存のデザインだったのですが、普段着けている時計やジュエリーに合わせて金具の色をゴールド系に変えてもらったので、ちょっとエレガントにも持てるはず。ちょっとわがまま言わせてもらったものだから余計に楽しみ!です。
次回、11/15(金)の革市通信は、「自分のために選ぶ、女性のレザーギフト」です。
それでは、また。
文/鎌倉泰子