「日本革市」は、一般社団法人 日本タンナーズ協会の事業として、全国主要百貨店と連携を図り、震災復興支援のひとつとして2011年より始まりました。会場では様々なコンテンツをご用意し、「国産天然皮革」の魅力をご紹介しながらPR活動をしています。
百貨店でのイベントと同時に、今年は東京・有楽町で初めての試みとなるイベントも開催中です。9月27日(水)まで、b8ta-Yurakucho(ベータ有楽町)では「心を満たし、日々を彩る JAPAN LEATHER PREMIUM ITEM」と題し、12のコレクションを展示しています。「日本革市」のWebでは取り扱いがなかったご出展社様も、伝統技術や独自のテクニックを用い、腕によりをかけて仕上げた逸品を届けてくださいました!「モノ」に込められた想いを手に取るような機会です。実際に足をお運びいただけないかたも是非こちらでご覧ください。
500年続く鞄産業 国産バッグ生産量日本一!
兵庫県の地域ブランド「豊岡鞄」認定
マスミ鞄嚢株式会社 「マスミ鞄嚢(マスミホウノウ)」 アタッシュケース
1800年代終盤に兵庫県豊岡市で誕生した柳行李(やなぎこおり)の行李鞄から進化して140年以上、鞄の街「豊岡」で技術を磨き続けてきたマスミ鞄嚢のアタッシュケースが登場です。
アタッシュケースの元の土台となる「木枠」を作るところから自社で行い、今では珍しい木枠と革を一緒に縫うことができるミシンを熟練の職人が扱い仕立てあげています。本革バッグの耐久性を左右する「コバ」の仕上げもこだわりが感じられるパーツのひとつです。内装、外装共に本格派も納得の機能を備えながら、旅の「トランク」をイメージできるような軽やかなカラーリング。ダークスーツのスタイリングにはアクセントに、リラックススタイルのスパイスに使いたくなるアタッシュケース。革本来のテクスチャーを滑らかに整える「ガラス加工」が施された牛革は、比較的水にも強くなり、補強用の「角革」と一緒にビジネスパーソンのハードなシチュエーションを支えてくれます。良いものを長く使う、素材を無駄にしないというSDGsの活動も意識した製品づくりをしています。
「革」の伝統工芸「印伝」を使用
(株)印傳屋上原勇七「INDEN EST.1582(インデン エスタブリッシュド イチゴーハチニー)」トートバッグ
鹿革に漆で模様を付ける「甲州印伝」は、400年以上にわたり受け継がれてきた、日本を代表する「革の伝統工芸品」。鹿革の繊維構造と漆の相性がよく、適度な柔らかさと軽さのある革と、抗菌効果、硬化性があり、日本の美を象徴する素材のひとつである「漆」の組み合わせでできる、特別な素材のひとつです。
そんな素材を贅沢に使い、縦横バランスにもこだわったこちら。シンプルながらB4サイズに対応、「ちょっと細長い」スタイリッシュなビジネストートバッグです。「Seven Treasures」と名付けた模様は、縁起が良い「吉祥文様」の「七宝」をアレンジしたものです。ふとした瞬間にきらっと光る艶やかな漆。鹿革と漆の「黒さ」の違いが素材の面白さを語ります。内側からボルドーレッドの牛革をのぞかせて、「正統派」なだけじゃないメンズライクなレザーバッグ。もちろん男性にもお使いいただける大きさとデザインです。
この革とこの技術でなければ生まれないマスターピース
(株)いたがき 「鞄 いたがき」鞍ショルダー
57個のレザーパーツからなる滑らかなフォルムが印象的な、「鞍」をかたどった本革バッグ。拠点である北海道への想いを馳せながら、創業者の心を受け継ぎ、ひと針ひと針に込めるように仕立てた本革ショルダーバッグです。
固く、ハリのある栃木レザーの特徴を知り尽くし、高い技術を持つ職人だからこそできる立体感と美しいシルエット。使い続けていくと、ただ柔らかくなるのではなく、体や手に沿い、使う人に寄りそうように変化していきます。特に、腰があり目が詰まったU字型パーツの根革(ねかわ)は、タンニン鞣し(なめし)の可塑性を最大限に生かすべく、手間と時間をかけて手縫いで作られています。手縫いとミシンを使い分けて作り上げられた機能美と造形美。力強く前に進む「馬」をイメージできる「鞍ショルダーバッグ」。ライフステージの変化や頑張った「ご褒美」として選んで毎日使いたくなる、美しいレザーバッグです。
「革ジャン」の意識が変わる 超軽量でコンパクト
TROJAN HORSE 「TROJAN HORSE(トロージャンホース)」
レザージャケット
既存の本革ジャケットとは違う機能性、ファッション性を持った、シンプルな本革ジャケット。素材には極薄に漉いたホースハイド(大人の馬の革)を使って、軽さと可搬性を実現。付属の革製ポーチに折り畳んでしまうことができます。
コンセプトは「使い尽くせる上質」。革の専門家というだけではなく、ファッションの知識も併せ持った職人が作るTROJAN HORSEのレザーアイテム。普段使いするのには欠かせない「着心地の良さ」「軽さ」を重要視しながら、ベーシックとモードの間を自由に行き来する、ファッションを愛する本物志向の大人たちの期待に応えたレザージャケットです。「JAPAN LEATHER AWARD 2021」で、ウェア&グッズ部門の「フューチャーデザイン賞」を受賞しています。
2種の伝統技術を掛け合わせた素材で、「今」を華やかに盛り上げる
有限会社 清川商店「KIYOKAWA」黒桟革フォーマルバッグ
戦国時代には上級武将の甲冑や兜、現代では剣道の高級武具にも使われている日本製革「黒桟革(くろざんがわ)」。国産黒毛和牛を、植物の渋、液状の鉄を使って加工し、「漆塗り」の技術で時間と手間をかけて作った素材で、その美しく輝く様子から「革の黒ダイヤ」とも呼ばれています。この過程を文字で追うだけでも感じられるような重厚感ある本革で、フォーマルバッグが得意な清川商店が美術品のように美しいバッグを作りました。
かすかな形のシルエット、マチ部分の立体感など、どこから見ても繊細な印象。垂直、直角で作られているのではなく、曲線で組み立てられ、多方面を向く「面」を覆い小さな凹凸を作っている漆が、いつも上品な輝きを放ちます。
今回「JAPAN LEATHER PREMIUM ITEM」で展示しているのは全部で12アイテム。今日はそのうち6つをご紹介させていただきますが、最後はもう1点、有限会社 清川商店のレディースバッグです。
コードバンを少し可愛く、軽やかに
有限会社 清川商店「KIYOKAWA 」コードバンショルダーバッグ
「コードバン」と聞くと、どうしても男性的なイメージがありませんか?百貨店などの女性用革小物のコーナーでコードバンのアイテムって見たことが無いですし。一方、男性のかたには、扱いが簡単では無いという漠然としたイメージを持ちながらも、その希少性と堅牢性、色気のある美しさの虜になり、憧れの素材、アイテムとなっているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなコードバンの中でも、素材作りに特に時間と手間がかかり希少性が高いことで知られている、有限会社 新喜皮革の「ピット槽でのタンニン鞣し(なめし)」のコードバンを、加脂と磨きの技術で再加工。それを、清川商店がバッグに仕立てたのがこちら。色の濃淡があり透き通るような奥行がるツヤは、前出の黒桟革のバッグとは違った平面的なデザインにぴったりです。小振りのバッグを、小さな金具、同素材ではなくチェーンをあしらうことで、更に華奢に、エレガントに見せています。
最後の2つ、有限会社 清川商店様のバッグは、2022年10月に東京ビッグサイトで開催された「第13回 FaW TOKYO(ファッションワールド東京)」の出品作品で、素材を作る「タンナー」と、それを製品に仕上げる「メーカー」のコラボレーション企画として発表されたアイテムです。「日本革市」は百貨店でのイベントだけではなく、今回の「b8ta-Yurakucho」での展示など、国内外で様々な活動をしていますので、「日本革市」Webだけではなく、Instagram、Facebookでも是非チェックして応援してくださいね。
ここでご紹介した6アイテムの他に、b8taでは「Petrarca(ペトラルカ)」、「Andersen Bag(アンデルセンバッグ)」、「A-LOOK」、「Flathority(フラソリティ)」、「ミヤ・レザークラフト」のアイテムを展示中。秋が始まる丸の内は気持ちがよいですよ!是非いらしてください。
それでは、また。
次回革市通信は10/6(金)です。お楽しみに!
文/鎌倉泰子