装いを引き締める気品あふれるバッグが魅力
Coquette株式会社(東京都千代田区)
墨田キールとの出会いがブランドの運命を変えた
林社長は、化粧品会社で商品開発を経験したのち、ブランドの立ち上げと同時期にクリエイターの創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」(以下、デザビレ)に入居。デザビレの支援を活かし、まずはバッグに使う素材を探し始めた。
過剰在庫を抱えることに躊躇した林社長は、次への一歩を踏み出せず立ち止まってしまう。そんな折、デザビレの鈴木淳村長に株式会社 墨田キール(以下、墨田キール)を紹介される。この出会いが、林社長の運命を大きく変えた。
革づくりのパートナーが見つかった林社長は、信頼の置けるつくり手の協力を得て、頭に思い描いていたバッグを次々とかたちにしていく。2024年に20周年を迎えるコケットだが、時代の移り変わりとともに、製品のラインナップも変化しているという。
「立ち上げ当初と比べ、コケットを好きでいてくださる方々が年齢を重ねても使えるものを望まれることが増えています。その軸となるのが、和紙を使ったスネイクウールと、メッシュ加工のジャンヌエスが完成したときに、コケットの新たな軸になると思いました」
一枚の革を折りたたんだメッシュ加工でクラス感を演出
「ジャンヌエスは、見た目は編んだように見えますが、じつは革を折り紙のように巧みに織り込んでいるバッグです。薄く漉いてクタクタにやわらかくしてもらったピッグスキンでなければ表現できないバッグといえます」
「もともと革を扱っている工場ではないので、『もっと薄く』『もっとやわらかく』といった制限がとても多いんです。墨田キールさんは、そういったリクエストをすべて叶えてくれます。本当に助かっていますね」
加工に際しては、床面に型紙を置いて蒸すのだが、機械の温度調整が大切になるそう。そのほかにも細部にまでこだわりが行き届いているが、林社長は「編んでいるのではなく折っているという事実が重要なのではなく、パッと見の印象がもっとも重要」と、話す。
「お客さんは、技術だけでは製品を買ってくれません。デザインがあり、機能があり、その奥に技術がある。すべてはバランスです」
「軽いけれど容量は十分です。重厚さがあり、持つとクラス感が出る、洋服がワンランク上がった気分になるといった感想をいただくことが多いです。ある方は、よく訪れるレストランにジャンヌエスを持っていったら、いつもより良い席に通されたと話していました」
また、現在は東京・神田にショップ兼アトリエを構えているが、「美」に関連するコンセプトショップのオープンも視野に入れている。20周年を迎えたコケットのさらなる展開に、期待せずにはいられない。