手間暇のかかるコードバンを贅沢に使った逸品
有限会社 新喜皮革 × 株式会社 コードバン

馬革専業のタンナーとして名高い有限会社 新喜皮革と、レザーアイテムブランド「The Warmthcrafts-Manufacture」(ジ・ウォームスクラフツマニュファクチャー、以下、TWCM)を展開する株式会社 コードバン。同じ敷地内で、密接な連携をとりながらものづくりに取り組んでいる。今回は、両者のパートナーシップが生み出した代表的な製品と、その素材である革について、有限会社 新喜皮革および株式会社 コードバンの代表である新田芳希さん(以下、新田社長)、株式会社 コードバンで工場長を務める水野卓さん(以下、水野工場長)に話を聞いた。
はじめに、有限会社 新喜皮革と株式会社 コードバンの関係性について教えてください。

タンナーの有限会社 新喜皮革とメーカーの株式会社 コードバン、2社の舵をとる新田社長。
新田社長
もともと、有限会社 新喜皮革内でTWCMというブランドを運営していたんです。ただ、革づくりと工房では仕事の内容がまったく違うので、互いの仕事をやりやすくするために、2010年に工房を株式会社 コードバンと名づけ、分社化しました。現在も同じ敷地内で仕事をしているので、密に連携をとれる状況にあります。
有限会社 新喜皮革といえば馬革専門のタンナーとして有名です。馬革にはどんな種類があるでしょうか。

タンニンなめしを行うピット槽。コードバンとホースハイドでは漬け込む時間が異なる。
新田社長
大きく分けて、お尻の部分のコードバンと、胴の部分のホースハイドがあります。どちらも同じピットでタンニンに漬けてなめします。部位によって仕上がりの見た目がまったく変わる革は、ほかの動物ではまずあり得ません。
コードバンは「革のダイヤモンド」と呼ばれるほどの美しい光沢で知られています。同じコードバンでも種類があるのでしょうか。

コードバンの表面をなめらかにして光沢を与えるグレージング作業。
新田社長
当社では、顔料仕上げをオリジナルコードバン、染料仕上げをオイルコードバンと呼んでいます。オイルコードバンに関しては、グレージングという仕上げ加工により、より一層のツヤと輝きを付与しています。
オイルコードバンの魅力を伝えるアイテムとして開発されたのが、「CORDOVAN DERBY」(以下、コードバンダービー)をはじめとする「DERBY」(ダービー)コレクション(以下、ダービーコレクション)なのでしょうか。

希少部位であるコードバンを贅沢に使った「コードバンダービー」。
水野工場長
そうですね。ダービーコレクションに限らず、革そのものの魅力を表現していることは、TWCMのアイテム全般に言えることです。素材の良さをどれだけ引き出せるかがポイントになっています。
ダービーコレクションのコンセプトは?

通常のダービーを小型化・軽量化した「ダービーミディアム」。
水野工場長
まずは革ありき、革を活かすことを心がけています。デザインはトラッドかつクラシックなイメージですね。ちなみにダービーコレクションは、特別モデルのコードバンタイプと、「LAGUNA」(以下、ラグナ)というホースハイドタイプに分かれています。また、通常の「DREBY」(ダービー)に加え、「DERBY-MINI」(ダービーミニ)や「DERBY-MIDIUM」(以下、ダービーミディアム)などのサイズ・型違いあります。当社は社員が販売員を務めているので、売り場で直接聞いたお客さんの声をフィードバックして、サイズ感などの改良を行っています。
ユーザーにもっとも伝えたいのは、やはり革そのものの魅力になりますか。

さまざまな工程を経て完成した美しい輝きを放つオイルコードバン。
水野工場長
そうですね。とくにサイズの大きいコードバンダービーは、実物を間近で見ると、貴重なコードバンを贅沢に使っていることが伝わるように思います。
新田社長
コードバンという革の特性上、それなりの上代になるため、購入されるのは年配の方が多いです。
ラグナはどのような特性の革ですか。
新田社長
ホースハイドをあまりこなさず、ハードな状態で下地を上げて、ロールコーターによる染料の塗布でムラをつけ、最後にワックス仕上げをしています。ラグナは使うごとに色の深みが増し、ツヤが出てきます。
ダービーコレクションのディティールでこだわっている部分は?
水野工場長
細かい部分ですが、ヘリ巻きといって、素材の接合部である鞄のふちにテープ状の革をあてて包み、断面のコバの下処理を丁寧に行ってから外縫いをしています。また、鞄がしっかりと立つことも大事で、置いた時に底鋲が「カチッ」と鳴るようにつくっています。ちなみに、内装もすべて馬革のフルレザー仕様。底鋲と金具はオリジナル、ファスナーはYKKでもっともランクの高いエクセラ、ハンドルは熟練のハンドル職人さんのお手製です。こういったディティールに凝ることで、より一層の高級感を表現しています。
同じ敷地内に2つの会社がある体制のメリットは?

工場長であり、小物担当としてサンプルデザインなどを手掛ける水野さん。
水野工場長
やっぱり、革についての話を直接聞けることですね。有限会社 新喜皮革の誰が、どのような作業を担当しているのかを把握しているので、なめしならこの人、仕上げならこの人といった感じですぐに話を聞くことができる。エラーがあった場合も素早く対処できます。
新田社長
工房の人間が革の知識を吸収しやすいのはメリットですね。それほど頻繁ではありませんが、定期的に勉強会も実施しています。とくに販売員は、お客様に聞かれて答えられないことがあると困ると思うので、わからないことは何でも聞いてもらうようにしています。
今後の展望として考えていることは?

工房の風景。小物技術認定試験1級やレザーソムリエ中級の資格所持者も在籍。
水野工場長
現在、鞄の製造は外部のパートナーに委託しているのですが、自社でチャレンジしたいという思いもあり、少しずつ技術を磨き、できることを増やしています。小物以外につくれる製品を段階的に増やしていきたいです。
新田社長
もちろん、現在のパートナーにも協力していただきつつ、ですけどね。今、工房でつくっているのは小物中心ですけど、最終的には鞄などもつくれる体制にしたいと思っています。