「ひょうごニューレザーコンテスト2024」で念願の入賞!
寺一皮革(兵庫県姫路市)

寺一皮革の井料加保里さん(左)と代表の寺内真寿美さん(右)。
兵庫県内のタンナーが部門ごとに新作の革を発表する「ひょうごニューレザーコンテスト2024」にて、経済産業省製造産業局長賞を受賞した寺一皮革。姉妹で寺一皮革を運営する妹の井料加保里さん(以下、井料さん)と、姉で代表の寺内真寿美さん(以下、寺内さん)に、受賞作「テラーナ2000」の話を中心に語っていただいた。
受賞作はシンプルながらも風合いのある革
「ひょうごニューレザーコンテスト」への応募は、どれくらい続けているのでしょうか。

「ひょうごニューレザーコンテスト」受賞作の「テラーナ2000」。
井料さん
おそらく十数年前からです。一年に三枚まで革を受け入れてくれるので、毎年二枚か三枚は新作を応募していました。これまで応募した革は、どちらかというと大量生産が難しい個性的な革が多かったですね。
「ひょうごニューレザー部門」で経済産業省製造産業局長賞を受賞した「テラーナ2000」はどのような革ですか。

今回の受賞作は、井料さんのアイデアによってつくられた。
井料さん
これまで応募した革から発想を変えて、オーソドックスでシンプルな革です。吟面は素上げの水性仕上げで、オイルとワックスを塗布しています。床面はペーパーをかけたあとに薬品を吹き、アイロンをかけて固めています。この工程によって、床面が粉っぽく毛羽立たないようにしています。
寺内さん
プレーンで素朴ですが、とても味のある革です。きれいな発色とやわらかな感触を兼ね備えた風合いが特徴ですね。
受賞を知ったときのお気持ちは?

栄えある経済産業省製造産業局長賞を受賞。
井料さん
受賞のお電話をいただいたときはまさかと思いました(笑)。授賞式では、別の賞を受賞されたあるタンナーの方から「完敗です」とお言葉をかけていただき、そのように評価してくださったのがうれしかったです。審査員の方々も、私が何年も応募を続けていることをご存じなので、みなさん喜んでくださいました。
寺内さん
これまでに何度も挑戦して、何か賞を取りたいという思いがあって。今年はとくに良い革ができたという手ごたえがあったので、ある程度の自信はあったのですが、実際に受賞の報せを受けたときは驚きました。ちなみに、受賞名義は代表である私の名前になっていますが、実際に革をつくったのは妹になります。
「テラーナ2000」という革の名前には何か由来があるのでしょうか。
井料さん
テラーナの「テラ」は寺一皮革の「寺」に、音引きの「ー」は漢数字の「一」になぞらえています。また、私の父が2000年の1月に他界したため、音引き「ー」には「1月」という意味も込めています。「2000」は、2000年という年を意味しています。2000年は、いまの場所に工場を移転した年であり、父を亡くし姉妹で工場を運営するようになった節目の年でもあります。このようにいくつもの意味が込められているので、弊社としては思い入れのあるネーミングになっています。
今後も「ひょうごニューレザーコンテスト」への応募は続けますか。
井料さん
はい、挑戦します。「ひょうごニューレザーコンテスト」は複数の部門があるので、別のテーマにチャレンジしたいと思っています。
寺一皮革さんは、自社で革製品を制作されています。前回取材したとき、ブランドの立ち上げを目標としていると伺いましたが、進展はありましたか。

井料さんがプロダクトを制作している工房。
井料さん
数年前にブランドを立ち上げました。ブランド名の「Kaho Leather(カホレザー)」は、私自身の名前から引用しています。鞄から小物まで幅広くつくっていますが、つくり手である職人が私だけなので、EC展開はせず、直接受注と近隣のショップにおける販売のみに絞っています。
メインの事業である革づくりと、その革を製品にするブランド展開を両立させ、非常に充実している印象を受けます。
寺内さん
タンナーとしては現状を維持しつつ、「ひょうごニューレザーコンテスト」などへの新作の応募を続けていきたいです。


カホレザーのアイテムのバッグ2種。
井料さん
ブランドとしては人員的にできることが限られていますので、今後も無理に手を広げず、できることをコツコツ地道にやっていきたいですね。

受賞作の「テラーナ2000」を用いたコインケース。