素材から作りまでメイドインジャパン。
★ 閲覧したアイテム

日本のタンナーTanner

卓越した技術を誇るピッグスエード専門タンナー
石居みさお皮革(東京都墨田区)

代表の石居信幸さん(左)と、ご子息の石居邦幸さん。

代表の石居信幸さん(左)と、ご子息の石居邦幸さん。

ピッグスエードに特化した革づくり

さまざまなピックスエード。そのやわらかさが写真からも伝わってくる

さまざまなピックスエード。そのやわらかさが写真からも伝わってくる

東京・墨田区には、ピッグスキンを製造するタンナーが集積している。豊かな水源である荒川沿いに工場を構え、各タンナーが腕を競う恰好でそれぞれ独自の革をつくっている。

その中の一社である石居みさお皮革は、創業からおよそ80年の歴史を誇るタンナー。社名に冠している「石居みさお」さんは、創業者であり、現在の代表である石居信幸さんの母親にあたる。

石居みさお皮革では、墨田のタンナーの特色であるピッグスキンを扱っているが、ほかのタンナーとは大きく異なる特徴がある。石居さんは自社の強みについて次のように語る。

「当社は、ピッグスキンのスエードを専門に扱っているタンナーです。スエード専門になったのは1970年代半ばからで、以後、今日に至るまで、ピッグスエードに特化した革づくりを続けてきました」

ピッグスエードのカラーバリエーションはじつに多彩。

ピッグスエードのカラーバリエーションはじつに多彩。

ちなみにスエードとは、ピッグ、シープ、ゴートなどを原料とし、なめした革の床面をサンドペーパーで起毛させた革を指す。その用途は、靴、衣類、バッグなどじつに幅広い。石居さんは、長くピッグスエードを製造し続ける中で、幾多の試行錯誤を行い、技術を磨いてきた。

特殊なドラムを使い革の品質を高める

仕上げ場。ネット張り乾燥などもここで行われる。

仕上げ場。ネット張り乾燥などもここで行われる。

石居さんは、スムースレザーと比較した場合、スエードにはいくつかのメリットがあると話す。

「豚革の銀面はキズが多いのですが、スエードであれば裏側にあたる床面を使うので、100パーセント無駄なく使うことができます。品質という面においては、やわらかな手ざわりが特徴で、さまざまな用途で使うことができます」

このような特色のあるスエードだが、製造するには相応の技術が必要だ。

バフィング(ペーパー掛け)で革の床面をなめらかに仕上げる。

バフィング(ペーパー掛け)で革の床面をなめらかに仕上げる。

「なめしであれば、ドラムの回転数の調整、pH(水素イオン指数)の計測、薬品の調合などがポイントになります。とくに薬品は、製造する国が変わると革の仕上がりがまったく変わってくるので、そういう点を考慮することが大切です。染色であれば、染料や薬品を溶かすタイミングがとても重要だし、染料と薬品の相性をしっかりと考える必要があります」

もちろん、なめしや染色以外に大切な工程はいくつもある。

石居みさお皮革の革づくりに欠かせない網太鼓。

石居みさお皮革の革づくりに欠かせない網太鼓。

「たとえばバフィングは、革の表面の毛羽を整え、絹のようになめらかな質感へと仕上げるのに欠かせません。また、乾燥工程においては、自然乾燥と併用して、網太鼓(あみだいこ)と呼んでいる密閉されてないドラムを使っています。このドラムを使うことで、革をしっかり乾かすのと同時に、余分な毛を剥ぎ取ることができます」

蓄積してきた技術を皮革業全体に継承したい

セーム革風のピッグスエードは特殊な方法でなめしている。

セーム革風のピッグスエードは特殊な方法でなめしている。

長年の経験で蓄積してきたノウハウを活かし、多種多様な革をつくっている石居みさお皮革。風合いはもちろん、どの革も非常に発色が良い。また、品質のブレがないことも高く評価されている。

「うちは海外との取引も多いのですが、向こうの方たちからは『10万枚注文しても、すべてが同じ品質で仕上げてくれる』ということはよく言われていました。特に、色については『いつ注文しても同じ色だ』と褒めてもらっています」

そんな石居みさお皮革だが、石居さんは今後についてふたつのことを考えているという。

革づくり一筋で生きてきた石居信幸さん。知識の宝庫である。

革づくり一筋で生きてきた石居信幸さん。知識の宝庫である。

「ひとつは、新しいなめしの技法の確率です。ここ数年で研究を進めていて、遠くない将来の実現化を目指しています。もうひとつは、技術の継承です。私は今80代ですが、つくりたい革ができたときの喜びが忘れられず、遊びのような感覚でこの仕事を続けてきました。その過程で技術を蓄積・確立し、大抵のオーダーであれば受けられる自信がつきました。もし同業者でピッグスエードに関する技術を教えてほしいという方がいれば、ぜひご相談ください」

自身を「生き字引」と称する石居さん。自社の従業員のみならず、同業者全般に技術を継承することで、皮革業界全体の底上げを考えている。

2026/2/17 公開
このページをSNSでシェア!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE