五感に訴える革づくりを信条とするLWG認証タンナー
キモト・レザーワークス株式会社(兵庫県たつの市)
取締役専務の木本文明さん(左)と、その弟で取締役社長の木本浩二さん
目を閉じて触れたときの風合いを重視
1969年にドラム1台でスタートしたキモト・レザーワークス株式会社。1990年代半ばから、婦人靴用を主軸とする革づくりに取り組んでいる。
「五感に訴える革づくりを心掛けています」と話す木本さん。
「当社のコンセプトは、『目を閉じて触れたときに家畜動物由来の温もりと優しさを感じられる革づくり』です。革が食肉の副産物であり、人の生活に彩りを与えてくれる有機物であることを伝えるために、質感や風合いに重点を置いて革づくりをしています」
そう語るのは、取締役専務の木本文明さん。このコンセプトを実現するために取り入れているのが、「マーケットイン」の手法だ。マーケットインとは、消費者のニーズを把握して製品の開発し、市場に提供する販売戦略を指す。
女性スタッフの技術と声を革つくりに活かす。
「良いものをつくれば必ず売れるという考え方を『プロダクトアウト』といいますが、当社はこの考え方に与しません。つくり手の思いだけで一方的なものづくりをせず、マーケットの声をしっかりと聞き、ユーザーに評価していただける革づくりを心掛けています」
また、木本さんは、「モラルのレベルは品質のレベルに比例する」と考えており、従業員のモラルの維持・向上に尽力。職場におけるマナーや規律の遵守、整理整頓と清掃の徹底などを実践している。
わかりやすい表現でトレンドに合った革をつくる
革の芯を茶色に染めている「ティーコア」。
切りっぱなしや吟面と床面のセット使いのデザイン提案に向いている。
このような社風のもと、トレンドに合わせた革を次々と開発しているキモト・レザーワークス。来シーズンにプッシュしているのが、「ティーコア」という名前の革である。
「ティーコアは、革の芯をブラウンに染めている『茶芯』の革です。独特の風合いであるため、切りっぱなしで使うことができ、特殊な技術を必要とせずにユニークな製品をつくることが可能です。ちなみに、スムースとシュリンクの2種類があります」
ティーコアをはじめ、同社の革はどれも品質基準の安定に定評がある。先述した従業員のモラルに加え、高度な技術体系を確立していることが、優れた革づくりに直結している。
数種類のアイロンを使い分け、革に「らしい」表情を付与する。
なめし、染色、仕上げと、すべての工程において妥協のない仕事ぶりが光る。たとえば、スプレー染色の際には職人が3カ所(入れ場・ライン・取り場)でしっかりと確認することで、すべての革を安定した品質で色に染める。面出しをする際には工程に適した4種類のアイロンを使い分け、なめらかでツヤのある革に仕上げる。こうして、一つひとつの作業を丁寧に行うことで、上質な革が完成する。
「革づくりにおいて何より大切なのは、当たり前のことを当たり前に行うことです。その結果、マーケットで評価していただけるのなら、これほどうれしいことはありません」
LWG認証を取得し環境意識が向上
また、環境面への配慮にも意欲的だ。以前から、REACH規則(EU法)やプロポジション65(米カリフォルニア州法)のレギュレーションに適合する薬品の使用や、デマンド値を徹底管理した電力消費削減によるCO2排出量の抑制に取り組んできた。
ドラムの前に安全装置を設置する、導線のラインを引くなどして安全性を確保。
さらに2025年には、LWG(Leather Working Group=皮革の安全や環境対策を啓蒙・監査する国際団体)認証のシルバーグレードを取得。環境への配慮、安全性の確保、労働環境の改善といった基準を満たすことで、企業価値を大幅に向上させた。
「LWG認証を取得しようと思ったきっかけは、世界の市場で戦うために必要だと判断したからです。革単体というよりは、当社の革を日本の縫製技術によって製品化することで、海外のマーケットに進出する機会にめぐり会えるのではないかという狙いがありました」
緊急時、体に付着した薬品などを洗い流せるようシャワーも設置。
認証取得後の同社について木本さんは、「環境負荷の低減や労働環境の改善だけではなく、従業員の環境意識も向上し、会社にポジティブな影響をもたらしました」と、その効果を語ってくれた。
LWG認証取得後、木本さんは新たな目標を見据えている。
「今後は、食肉として高度にブランディングされていながら、革としての品質にネガティブな印象が多い和牛革の企画の多様化にチャレンジしたいと思っています。革づくりにうまく食育をテーマとして絡め、社会貢献を包括するビジネスみたいなコトを模索したいですね」
現状に満足せず、新たな高みを目指すキモト・レザーワークス。これからの展開に大きな期待が寄せられる。













































